建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2007年1月号〉

INTERVIEW

戸建て注文住宅でナンバーワン企業へと成長

28歳素人からスタートし黄綬褒章

三王建設興産 代表取締役 安田 譲氏

安田 譲 やすだ・ゆずる
昭和51年4月札幌商工会議所 小規模企業振興 委員
昭和57年8月札幌商工会議所 建設業部会 常任委員
昭和58年1月札幌西建設建販業協会 会長
平成4年5月社団法人北海道住宅都市開発協会 副理事長
平成8年5月社団法人住宅都市開発事業協同組合 理事
平成18年6月社団法人北海道不動産校正取引協議会 副会長
平成17年5月社団法人札幌西法人会 常任理事
平成17年5月社団法人札幌西法人会西野支部 理事長

札幌市西区を中心に注文住宅の建築を手掛ける三王建築興産株式会社(西区西野2条2丁目)の安田譲代表取締役社長が今年の黄綬褒章に輝き、昨年11月に冬柴国交相から褒章を伝達された。「ユーザーの視点に立ち信頼される仕事を通して顧客満足を追求する」ことをモットーに、「感謝」と「和」、「努力」を経営理念とする安田社長は、昭和39年に弱冠28歳で従兄弟同士とともに三王建築興産を設立。現在では西区における戸建注文住宅NO1の企業に育て上げた。安田社長に黄綬褒章の喜びと会社設立時のエピソード、経営理念などを伺った。
――この度は黄綬褒章の栄誉につきおめでとうございます。ご感想からお聞かせ下さい
安田
北海道庁から内示の知らせがあった時は、かなり驚くと同時に「本当に自分が頂いて良いのだろうか」と思ったものでした。すべては支えてくれた家族や社員、これまでご指導を賜った先輩、業界団体の皆さんのお陰と、感謝の気持ちでいっぱいです。
――社長のプロフィールをお聞きしたい
安田
私は生まれも育ちも旧手稲町です。家業は農業でしたが、農業収入だけでは生活の苦しい時代でした。冬の収入確保のために、ミツバの栽培も手掛けていましたが、昭和37、38年頃には、札幌近郊に将来の宅地開発を見通しての農地買収の動きが見られ始めました。しかし、中には農地を手放したのに、買収した不動産会社が倒産して、売却益が手に入らないというケースもあり、私の父親がそうした人々の相談に乗っていたものでした。
そうした現実を見聞きしつつも、親類に二級建築士の資格を持つ者がいたことから、39年に不動産業と住宅建築業に転業したのが始まりです。当初は従兄弟同士の3人で発足したので「三王」と称し、住まい作りと不動産を事業とするので「三王建設興産」という社名にしました。そして、最初に宅建取引主任の資格を取得し、やがて二級建築士に挑戦しましたが、当時は6時半には飯場に行っていたので、仕事に出掛ける前の4時ごろから勉強する毎日でした。
42年に札幌市と手稲町が合併し、パートナーで社長だった和田勝之(和田敬友道議の父親)が46年の市議選に出馬し、当選したことで、私が社長を引き受けることになりました。そのときは35歳です。
――いわば素人の状態からの起業では、苦労も多かったのでは
安田
日々が新しいことへの挑戦でした。素人でスタートしたわけですが、それでも良い時代に恵まれたと思います。48年のオイルショックは、確かに大変でしたが、それも何とか乗り切ってきました。これも本業一筋を貫き、多少の余裕があっても異業種に投資しなかったことが正しかったのだと思います。バブル期当時には、宅地開発向けの土地を入手したものの、後に地価が急落するという苦い経験もしましたが、これも高い授業料だったと考えています。
昭和50年代に入ると、社員数が増えてきたためか、次第に社員らの動きが把握できなくなってきました。そこで、それを解決すべく専門家に組織と人づくりのコーディネイトを依頼し、業務のチェック機能の強化に努めました。しかし、それも10年経つとマンネリ化してきたので、人材育成や顧客満足を重視した経営システムを導入しました。私は、人づくりが私の仕事と思っているので、毎月第一金曜日には協力工務店を含めて技術安全大会を開いています。このお陰で、今では建築現場での事故はほとんどが防止できています。
――三王建設興産は三階建てエレベーター付二世帯住宅が主力商品ですね
安田
私たちのコンセプトの一つは、「親子で住める二世帯住宅の提供」です。少子高齢化の時代ですから、親の介護は避けて通れません。そこで、親の持つ宅地を有効活用し、2世帯3階建てエレベーター付の戸建て住宅を、昭和61年から提案しています。3階建てに車庫、物置も集約されるので、路上駐車の心配もありません。ただし、3階建てのために基礎工事は割高になるので、行政が路上駐車解消のために、基礎工事の一部を助成してくれれば、もっと普及するものと思います。
近年、特に若い母親が子どもの躾(しつけ)を出来ないなど、核家族化の弊害が社会問題になっていることを考えると、親子で住む暮らしをもっと真剣に考えてほしいと思うのです。
――最近、首都圏ではミニバブルの様相を呈しているといわれていますが、札幌市内の住宅建築の動向は
安田
札幌市内は、マンション用地になっている中央区の一部で地価が上昇していますが、郊外の土地はあまり動きが見られず、地価は逆に下落傾向にあり、今後とも急激に上昇するとは考えにくいと思います。
一方、東京都は札幌とは様相が異なり、まさにミニバブルの状況ですね。高層マンションなどは、ファンドの対象となっており、デベロッパーは竣工してもすぐには販売せず、土地の値上がりを待ってから売り出すという傾向が見られます。
――最後に、褒賞に輝いた名士としての生活のモットーをお聞かせください。
安田
健康管理が、まず一番でしょう。そして、自分で決めたことは絶対に守り、毎日をつとめて真っ直ぐ明るく前向きに生きようと、常々社員にも言っています。

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