建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2006年12月号〉

寄稿

阪和自動車道(海南〜吉備)の四車線化事業

NEXCO西日本高速道路滑ヨ西支社 和歌山工事事務所 所長 菊澤 朋巳

菊澤 朋巳 きくざわ・ともみ
昭和56年4月日本道路公団入社
平成4年8月福岡管理局技術部交通技術課長代理
平成7年11月四国支社高知工事事務所土佐西工事長
平成11年7月(財)交通事故総合分析センター研究部研究第二課長
平成14年4月北陸支社保全部交通技術課長
平成17年7月関西支社和歌山工事事務所長


クリックでPDFへ

はじめに

NEXCO関西支社和歌山工事事務所では、近畿自動車道紀勢線の和歌山県海南市〜有田郡有田川町間の阪和自動車道(海南〜吉備)の四車線化事業を担当しています。
近畿自動車道紀勢線は大阪府松原市を起点に、和歌山県和歌山市、田辺市等を経由して三重県多気郡多気町に至る延長336kmの高速自動車国道です。
この路線は、京阪神都市圏と紀伊半島を結ぶ幹線道路として輸送時間の短縮や一般道渋滞緩和を図り、また、災害時の国道42号の代替路として、近い将来発生が予測されている東南海・南海沖地震時の災害復旧や救急医療を担う和歌山県の「命の道」であり、同時に、世界遺産(紀伊山地の霊場と参詣道)登録による産業や観光等、地域経済のさらなる活性化につながる「自立の道」として位置づけられています。
阪和自動車道(海南〜吉備)【旧海南湯浅道路】(延長9.8km)の概要は、一般国道42号のバイパス(一般有料道路)として、昭和59年に二車線として開通しました。開通当初から順調に利用交通量が伸びており、平成17年度には23,000台/日と開通当初の3倍近くに達し、休日を中心に年間で100回を越える渋滞が発生しており、早期に四車線化されることが望まれている道路です。

工事概要

海南〜吉備間の四車線化工事は、既設供用中の対面二車線道路を活用し、東側に並行した二車線(延長9.8km)の道路(U期線)を新設して、四車線化するものです。
全延長の内、約9割がトンネル(藤白トンネル(2.1km)、下津トンネル(1.3km)、長峰トンネル(4.0km))・橋梁と構造物比率の高い路線です。
また、U期線と既設インターチェンジを接続するために、海南、下津、吉備の3カ所のインターチェンジランプ部の改築を行います。
事業の経緯は、平成10年度に施工命令を受け、平成13年度から地元設計協議に着手し、現在、用地買収は95%が完了し、全線において工事(トンネル工事5件、土工・下部工工事5件、上部工工事1件)を実施しております。平成18年9月末の進捗率は、約25%となっています。

工事の特色
《トンネル工事》

路線沿線の地質は、三波川変成帯の黒色片岩、緑色片岩、蛇紋岩及び輝緑岩が分布しており、T期線のトンネル施工時には、蛇紋岩等の脆弱な個所での崩落や大きな変位が発生したため、全国に先がけ掘削工法を在来工法からNATM工法に変更し、本格的にNATM工法を導入しております。今回のU期線トンネルは、20年以上経過したそれらの既設トンネルへの影響を考慮しながらの施工となり、過去の施工データや各種計測データを反映して、安全で効率的な工事を行っています。
U期線トンネルの掘削方法は、地質の状況により機械掘削と爆破掘削を併用し施工を行っています。一例として、藤白トンネルは、北側1,151m(掘削500m済)、南側985m(9月末 掘削到達済)に分割し南北から施工し、北側は坑口から518m、南側は坑口から985mまでを機械掘削方式による上半先進ベンチカット工法で施工し、北側の残り633mは爆破掘削方式による補助ベンチ付全断面掘削工法で施工しています。
なお、脆弱な地質とあわせ藤白トンネル北坑口付近のトンネル直上には、送電鉄塔が位置し、土被りも非常に薄いため、トンネル掘削に伴う送電鉄塔の沈下を抑止するため、事前解析により補助工(注入式長尺鋼管先受工等)を採用し施工を行っております。
また、現在施工しているU期線トンネルと供用中のT期線トンネルとを結ぶ避難連絡坑の施工では、近接施工による振動等の影響を極力少なくするため、制御発破や割岩工法により、計測管理を実施しながら施工を行っております。

クリックでPDFへ
▲海南IC部
《インターチェンジ工事》

各インターチェンジ工事は、営業中高速道路に近接する切土等の施工が主体で、T期線ランプ等の切替えを行いながらの工事となるため、通行されるお客様の安全を第一に考え施工を行っています。
一例として、海南インターチェンジ工事においては、切土工約30万m3の土運搬車両等の工事用車両は高速道路からの進入・退出を余儀なくされる他、高速道路本線やインターチェンジランプを一時通行止めして施工を行う必要がある工事もあります。海南インターチェンジ部の本線を横過する新設ランプの橋梁架設は、供用中路線の維持管理のため実施している春・秋(年2回)の夜間(10時間)通行止め時に施工を行うこととなり、綿密な工事工程管理と架設時の作業工程管理が必要となります。インターチェンジランプの切り替えもこの夜間通行止め時に行います。
下津インターチェンジでは、T期線橋梁の拡幅を行い、吉備インターチェンジでは、インターチェンジランプ橋と跨道橋の2橋を撤去しますが、これらの工事も夜間通行止め時に行い、海南インターチェンジ同様に綿密な工事工程管理が必要となってきます。

おわりに

四車線化工事は新設工事とは異なり、様々な制約の中で工事を行うこととなりますが、我々の使命は、阪和自動車道をご利用頂く「お客様」に「安全」・「安心」で「快適」かつ「信頼性」の高い高速道路を提供することと考えており、地域の重要な幹線道路として、安全で快適な四車線の高速道路を、一日も早く完成すべく工事を進めて参ります。






西日本高速道路(株)和歌山工事事務所の整備に貢献
HOME