建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2006年11月号〉

寄稿

地域との連携を深めながら社会資本整備を推進

―北海道函館土木現業所 平成 18年度事業概要

北海道函館土木現業所長 武田 準一郎

武田 準一郎 たけだ・じゅんいちろう
昭28年9月生
門別町出身
室蘭工大土木卒
平成4年室蘭土木現業所道路建設課舗装係長
平成5年住宅都市部都市整備課街路技術係長
平成7年同街路計画係長
平成9年函館土現事業第1課長
平成10年建設部総務課主幹(建設省建設経済局建設機械課長補佐)
平成12年同道路計画課長補佐
平成15年室蘭土木現業所事業部長
平成17年   同   道路計画課長
平成18年現職

▲北檜山大成線兜野橋架換工事(下部工)

 函館土木現業所は、日本海に面する檜山支庁管内と噴火湾を望む渡島支庁管内を所管しています。
 北海道の中では、比較的寒暖の差が少なく、温暖な気候となっています。地形的には、南北に細長く、中央部を山脈が縦断して、渡島平野などの一部を除き山地が海岸まで迫っているのが特徴で、自然災害に弱い脆弱な地勢でもあります。
 函館を中心とする道南圏は、地勢的にも歴史的にも本州との結節点として経済・文化面で重要な役割を果たしてきました。北海道新幹線が着工した今、さらに重要な役割が期待されています。
 市町村合併については、道南圏でも一昨年から本格化し、平成16年12月1日の新「函館市」の誕生を皮切りに昨年4月の新「森町」、9月には新「せたな町」、10月には新「八雲町」、今年の2月1日に北斗市が誕生し、渡島・檜山管内の自治体数は27市町村から18市町となりました。
 また、北海道の中でも極めて古い歴史を有しており、他地域とは異なる気候風土や歴史・文化の蓄積を持った観光圏を形成しています。全国的も有名な函館や大沼、松前城を抱く松前、往年の家並みを再現した「いにしえ街道」が完成した江差などの観光地があり、昨年オープンした「大門横町」の屋台村や今年4月にオープンした新「五稜郭タワー」も新たな観光スポットとして、賑わいをみせています。
 当土木現業所の平成18年度補助事業の当初予算は、平成17年度から始まった財政立て直しプランにおいて集中対策の1年前倒しが行われるなど、道財政が年々厳しさを増している中、北海道社会資本整備重点化プランを基本とし道南圏の地域特性を勘案して、「交通ネットワークの整備」「洪水や土砂災害対策」「水産物供給基地整備」などの施策への重点化を図っており道路、漁港、河川、砂防・地すべり・急傾斜などの事業について、地域と連携を図りながら整備を進めていく考えです。事業費については、奥尻空港整備事業や戸井代行下水道事業が完成し公園事業で主な工種が一段落した結果、当初ベースで対前年比83%の296億6千2百万円となっております。
 個別の事業種別では、当所の中核的な事業となっている道路、漁港、河川、砂防・地すべり・急傾斜についてみると、道路事業費は109億8,100万円で(公共)対前年比96.9%となっており、主な事業としては、「交流ふれあいトンネル事業」である新川汲トンネルの建設や歴史的な街並み整備を伴う松前港線などを促進するとともに、安全で確実な交通確保を図るため、北檜山大成線では兜野橋及び旭橋の建設を促進します。
 漁港事業については、鹿部漁港などの衛生管理型漁港の整備や大舟漁港・落部漁港の拡張計画など、35港の整備を促進するとともに、今年度中に長磯漁港・清部漁港の完成を予定しており、漁港事業費は78億4,100万円(公共)で対前年比72.9%となっています。
 河川事業については、厚沢部川広域基幹改修などの継続事業や大松前川総合流域防災事業に新規着手し、事業費は43億2,800万円で対前年比92.3%となっています。ダム事業については、矢別ダムと新中野ダムで情報収集設備の改良が行われる予定で、事業費は2億6,500万円で対前年比230.4%となっています。
 砂防・地すべり・急傾斜事業では、砂防・地すべり事業費は30億8,700万円で、対前年比102.8%となり駒ヶ岳の火山砂防対策の充実を図るとともに、急傾斜地崩壊対策では松前神明1地区などが新規事業となっています。
 また、街路事業では、前年対比88.2%となっており、3・4・2出雲通(八雲町)に着手するとともに、3・4・306大野橋通(北斗市)などで事業を促進し、都市内交通の渋滞緩和を目指す3・4・103本通富岡線の整備を一層促進します。
 下水道事業は、対前年比28.2%となっており、知内町での完成を目指すとともに、八雲町(熊石支所)での代行下水道事業に着手し、事業費は1億4,300万円となっています。
 公園事業では、道庁初のPFI事業である道立噴火湾パノラマパークが、6月に暫定供用開始となり主要工事が一段落したことから、事業費は1億6,000万円(公共)で対前年比13.1%となっています。
 建設海岸については、事業費は10億9,800万円(公共)で対前年比133.9%となっており、一昨年の台風18号や冬季風浪での越波による被害が多発しているため、大沢海岸(松前町)の離岸堤(完成)や函館海岸の人工リーフなどの整備を進めます。
 当所といたしましては、「選択と集中」の観点を踏まえつつ、洞爺丸台風を上回る勢いだった一昨年の台風18号による災害等を教訓として、安全・安心な道路整備や生命・財産を守るための河川・砂防事業や基幹産業である漁業生産の高度化・安定化を図るための漁港整備を図るとともに、2015年度中の開業を目指す北海道新幹線や高規格道路の整備と連動し高速交通ネットワーク網の整備効果を最大限に発揮するため必要な社会資本整備を促進していくことにより、道南圏の経済・文化などの発展に寄与していく考えです。


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