建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2006年11月号〉

INTERVIEW

10年で耐震化率90%を目指し耐震改修を実施

サハリンプロジェクトに合弁企業で参入

 ――プラント建設に止まらない波及効果をどう生かすかが課題
株式会社富田組 代表取締役社長 富田 伸司氏

富田 伸司 とみた・しんじ
昭和58年室蘭工業大学 開発工学科 卒
昭和58年株式会社地崎工業 入社
昭和61年株式会社富田組 入社
平成12年6月代表取締役社長 現
ロシアの地下埋蔵資源を開発するプロジェクト・サハリン2に、稚内建設協会がロシア国内の企業と提携した合弁企業を通じて参入した。参入当初から今日に至る経緯などを伺った。

――サハリンプロジェクトに参入した企業の1人として、これまでの取り組みについて伺いたい
 富田
私が初めてサハリンに渡ったのは1990年で、当時はペレストロイカの情勢下で規制緩和されており、チャーターのフェリーで行けました。
それでもコルサコフは軍港で、港の写真撮影も禁止されるほど厳しい規制状況だったので、ホルムスクが使われていました。当時は物資も乏しく、激しいインフレに見舞われ、94、5年頃にデノミネーションにより貨幣価値が以前の1/1000という状況で、ロシア経済は不安定でした。石油開発がスタートするというのは、その頃から話題になっていました。
サハリンプロジェクトは、1990年頃に具体化した大規模のプロジェクトで、私たちも何とか参入できないかと考えました。そこで、ロシアでの提携先を探し、2001年に「SU408」というコルサコフ市の建設会社と稚内建設協会とで「ワッコル」という合弁会社を設立しました。コルサコフ市も非常に応援していただき、市からの資本提供の提案もありました。
――稚内市とコルサコフ市との姉妹都市提携による恩恵もあるのでしょうか
 富田
それだけではなく、94年から稚内商工会議所で行っている交流事業の一環として、研修生受け入れ制度を実施し、その中にコルサコフ市職員も含まれ、コルサコフ市長とも面会するなどの接点があった上に、SU408からも研修生として従業員が来るなど接点が多かったのです。
――「サハリン2」のプラント建設に参入しましたね
 富田
その建設にあたって、ユジノサハリンスクの建設会社との提携話もありましたが、当会の藤田会長が諸条件を考慮し、現在の合弁会社を組むことになりました。その社長には、SU408から来ていた研修生が就任し、プロジェクトも進んでいきました。
そして、99年にはすでに採掘している地域から、タンカーで直接輸送していましたが、ガスは買い手が決まらなければ設備投資をしないので、プラント建設も売り先が決まらなければ実施されません。しかし、2003年頃に東京ガス、東京電力等が買い取る契約を結んだので、その途端に工事発注になりました。
このプロジェクトの資本は、ロイヤルダッチシェルを筆頭とした三井・三菱が中心で、売却先も日本の大手企業です。その結果、6月にプラント建設が発注がされました。原野の状態であったプリゴノドノエの現場は、8月くらいから造成され、本格的に進展していったのが04頃からです。
――建設地では、何千人もの関係者が集まり、町が出来ているとのことですが
 富田
一昨年から昨年にかけて、稚内から3人〜5人、当社からもアドバイザーとして一人ずつ派遣し、キャンプ入りしました。今では生鮮食品や野菜など何でもあり、中国やニュージーランドから輸入しているようです。
――そうしたところで、北海道の良質の食材や農産物をアピールする可能性もあるのでは
 富田
価格だけではなく、安全で安心できるものであれば、大いに導入することも可能ではないかと思っています。
――最初に渡航してから、この16年間に急激な変化があったのでは
 富田
当時は湯は出ないし、水も無く、停電は頻繁で、暗く汚い状況でした。道路も町中は舗装されていましたが、ほとんどはガタガタでしたが、今ではプロジェクトに関連している道路も港も良くなりました。
しかし、それでもまだ30年前の日本という印象です。町中はきれいになってきているとはいえ、舗装されていないところもあります。
――日本のかつての状況と現在のサハリンが似た状況であれば、宗谷管内の基盤整備に貢献してきた経験を、そのままサハリンのインフラ整備に活かせるのでは
 富田
気候も稚内と似ているので、住宅にしても上下水道にしても今までの経験は活かせると思います。しかし、ロシア内でのインフラ整備となると、私たちは経験がありません。現在かかわっているのは、純粋な都市基盤整備ではなく、石油ガスプロジェクトの関連なので、今後ロシア国内のインフラ整備にどう参入できるのかが課題です。今までは大手建設会社が元請けだったので、そこと契約さえすれば済んでいました。
――国外の特殊プロジェクトに基づく建設事業の受注に当たっては、思わぬ制約もあるのでは
 富田
国外の企業に対しては、ロシアの資源を採掘させるのだから、ロシア国内の企業や資材を使うという規制があり、中にはノルマが6〜7割というケースもあるようです。本来は日本国内の資材や、他国の安い資材を使いたくても認められません。しかし、合弁会社は出資比率からロシア国内の企業なので、ローカルコンテンツをパスできるので、長期的に見れば有利になってくるものと思います。

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