建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2006年10月号〉

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大阪市を含む主要12市を水害から救う寝屋川流域総合治水対策

大阪府都市整備部 寝屋川水系改修工営所 寝屋川流域総合治水対策事業


▲寝屋川治水緑地
▲昭和50年7月集中豪雨
大東市住道
▲平成元年9月秋雨前線
寝屋川治水緑地流入状況
▲平成7年7月梅雨前線 東大阪 ▲平成9年8月前線など 寝屋川
▲平成11年8月豪雨
恩智川治水緑地
▲平成15年5月 守口市進水状況

 大阪府都市整備部寝屋川水系改修工営所では、現在寝屋川流域総合対策に取り組んでいる。
 寝屋川流域は、東西に約14km、南北に約19km、流域面積は約268km2。流域内には、大阪市、守口市、枚方市、八尾市、寝屋川市、大東市、柏原市、門真市、東大阪市、四條畷市、交野市及び藤井寺市一部などの主要12市が存在する。
 寝屋川流域の特徴は、河口から生駒山麓付近までの約20kmが感潮河川であり、中〜下流部は傾斜が1/12500の非常に緩やかな河床勾配となっていることがあげられる。寝屋川水系には、寝屋川のほか、第二寝屋川、恩智川、平野川、古川、平野川分水路の6河川があるものの、これらの河川は全て京橋口に流れ込んでいる。
 寝屋川流域は、その昔河内平野と呼ばれた低湿地帯であり、流域の4分の3を占める内水域では降った雨が直接河川に流れ込むことが出来ないため、ポンプにより排水している状況である。
 しかも、市街化が進むにつれ、地表がコンクリートやアスファルト、建物で覆われてしまい、降った雨が一気に下水道を通じて河川に排水されることとなり、水位が急激に上昇するようになってきた。
 特に、高度経済成長期には工業用水や上水道用水として地下水を利用していたが、過剰な汲み上げにより地盤沈下が発生した。それにともない、河床勾配の減少による河川流下能力の低下や、内水域の排水不良を増大させる結果となった。
 このため、寝屋川流域ではこれまで幾度となく水害の被害を受けてきた。

▲コンクリート打設状況

 寝屋川流域における本格的な治水対策は、戦後になってから手がけられ戦災復興に始まり、急激な社会的・経済的変遷による土地利用の変化を経て、これに対応すべく治水計画も変遷してきた。
 平成2年度から、国、大阪府、流域11市による「寝屋川流域総合治水対策協議会」を設立し、現在は、「寝屋川流域協議会」に改編され、河川や下水道の整備を進めるとともに、流域における保水・遊水機能を人工的に取り戻すという考え方に基づく総合治水対策に着手した。 寝屋川流域の治水計画は、基準点(京橋口地点)における流域基本高水流量を2,700m3/sとし、河川と下水道によって基本高水流量2,400m3/sまでを処理し、残りの300m3/sを流域対応施設によって処理することとしている。
 これに基づき、河道改修や治水緑地、流域調節池等の貯留施設、地下河川による放流施設等の整備、流域から一挙に下水道や河川に流出することを防ぐ流出対策を行っている。
 その結果、流域調節池は平成17年度末に14ヶ所が完成し、流域の治水安全度の向上に貢献している。
 この他にも、現在、東大阪市では松原南調節池(貯留量34,000m3)と宝町調節池(貯留量22,000m3)、 守口市では大日南調節池(貯留量20,000m3)大東市では大東中央調節池(貯留量56,900m3)と朋来調節池(貯留量47,000m3)の建設が進んでいる。
 その中で守口市で施工されている大日南調節池は、守口市域では大久保調節池に次いで2番目の調節池となり、浸水常襲地域である同市北東部の浸水被害軽減を図ることを目的としている。

1 1〜2R構築工、
口開掘削初期艤装工
2 3〜5R構築工
1〜4R沈下掘削工
3 6〜9R構築工
5〜9R沈下掘削工
4 中埋コンクリート打設
艤装撤去
5 内部構築工 6 電気棟建築工事

▲調節池完成イメージ

 大日南調節池の施工方法は、ニューマチックケーソン工法を採用している。これは、コップを逆さにして内部の空気が逃げないようにしながら、水中に押し込んだ状態と同じように水の浸入を空気の圧力によって防ぐ原理を応用したものである。オープンケーソンが両端に蓋のない筒であるのに対し、ニューマチックケーソンはケーソンの下部に気密作業室を設け、そこに圧縮空気を送り込んで地下水の浸入を防ぎ、地上と同じ状態で掘削ができるようにしている。
 また、作業室内では高気圧の環境下での作業となるため、0.18Mpa以上における作業は無人化システムで施工することにしており、地上遠隔操作室から、テレビカメラとコンピュータ・グラフィック表示により、掘削状況を目視し、傾斜計・沈下計等の計測機器によりケーソンの状況を自動計測しながら、掘削・積込機械を遠隔操作している。
 作業室内の酸素濃度、有害ガス等についても自動計測を行い、労働条件の改善と掘削排土作業の効率化を図ることとしている。掘削・排土機械の点検・修理、あるいは掘削完了後の機械解体や撤去等で、作業員が高気圧環境下に入る場合もあるため、無人化システムと酸素減圧システムを組み合わせ、高気圧減圧システムを取り入れながら高気圧障害の発生を防止している。
 大日南調節池の供用開始は平成21年の出水期を目標としている。

▲沈下掘削状況 ▲天井走行掘削機






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