建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2006年10月号〉

寄稿

大和川下流流域下水道の現況と課題

大阪府 南部流域下水道事務所 所長 田中 博氏

田中 博氏 たなか・ひろし
昭和23年12月22日生 兵庫県出身
昭和46年鳥取大学卒 同年 大阪府に奉職
平成3年4月 (財)大阪府下水道技術センター調査研究課長
平成5年4月 北部流域下水道事務所 主幹
平成7年4月 日本下水道事業団大阪支社事業部管理課長
平成10年4月 東部流域下水道事務所建設課長
平成12年4月 南部流域下水道事務所 次長
平成14年4月 下水道課参事
平成16年4月 南部流域下水道事務所長

管内の下水道普及状況

 大阪府南部流域下水道事務所は、一級河川大和川以南の南河内地域を中心とする10市2町1村、計画区域面積約19,000haの大和川下流流域下水道事業を所管しています。
 大和川下流流域下水道は、今池、大井及び狭山の三処理区からなります。排除方式は分流式を採用しており、全体の計画人口が99万7,000人、計画流入汚水量は68万8,800立方メートル/日となっています。また、今池処理区の一部では雨水排水を実施しています。
 平成17年度末における大阪府の下水道普及率は、90.8%となっていますが、大和川下流流域下水道の下水道普及率は76.3%であり、府内平均よりも約14%低い状況です。行政人口ベースで見ると、約21.5万人の方が未だ下水道を利用できない状況となっています。
 また、管内市町村の普及率格差も大きく、概ね下水道整備が完了している市もあれば、普及率が50%に満たない市もあるといった状況です。
 大和川下流流域下水道は、ここ10年間で普及率が37.9%増加し、平成7年当時と比較すると、ほぼ2倍の普及率となっています。南河内地域の下水道は、一級河川大和川の水質保全に寄与する根幹的な施設であることから、下水道普及率の向上は急務の課題となっています。

事業実施状況
▲今池水みらいセンター
▲大井水みらいセンター
▲狭山水みらいセンター「せせらぎの丘」
今池処理区

 今池水みらいセンターでは、「嫌気・無酸素・好気法」による3-1系水処理施設、砂ろ過施設、送風機棟及び機械濃縮棟を平成20年度に供用すべく、建設を進めています。また、平成17年度から水処理施設の上屋建築工事、水処理設備工事及び汚泥焼却施設の土木工事、設備工事に着手しました。
 浸水対策事業については、西除系雨水ポンプ場の土木工事が完了し、現在は建築工事と設備工事を施工中であり、鋭意、工事進捗に努めています。
 幹線管渠は西除川左岸幹線など10幹線で、計画延長51.3kmのうち17年度末までに48.0kmが整備済で、93.5%の進捗率となっています。現在、西除川右岸雨水B幹線を施工中です。

大井処理区

 大井水みらいセンターは、当流域で初めて「嫌気・無酸素・好気法+砂ろ過」の高度処理を導入したことが大きな特徴で、良好な処理水質が得られています。処理能力は平成17年度末現在で7万5,000立方メートル/日を有しています。
 現在、高度処理水は約8.6km下流の西除川へ放流しておりますが、東除川水系の水質浄化に寄与するべく、大水川への放流施設などを施工中です。
 幹線管渠は石川左岸幹線など8幹線で、計画延長54.7kmのうち平成17年度末までに49.2kmが整備済で、90.0%の進捗率となっています。現在、石川右岸U幹線を施工中です。

狭山処理区

 狭山水みらいセンターでは、「嫌気・無酸素・好気法」による2-2系水処理施設の建設を進めています。平成17年度には水処理関係の機械・電気設備工事を発注し、平成20年度の供用開始に向けて鋭意施工中です。
 幹線管渠は河内長野幹線など4幹線で、計画延長26.5kmのうち平成17年度末までに23.7kmが整備済で、89.3%の進捗率となっています。現在、天野川幹線を施工中で、平成17年度に同幹線の最上流部までの区間を発注したところです。同工事が竣工すれば、狭山処理区の幹線は全線完成のはこびとなります。

重点事業

 当事務所においては、大和川下流流域下水道の早期供用を目指して、今池水みらいセンターを中心とする三処理区一括暫定処理を実施し、当初の目的を達成してきました。
 今日では、普及率の向上を重点目標に置き、公共下水道の受け皿としての流域下水道幹線の早期延伸と処理区毎の整備拡充に努めています。
 これまで、平成8年の大井処理区暫定処理解消と平成9年の大和川下流流域関連全都市供用開始の実現を果たし、長年の懸案事項であった狭山処理区における暫定処置の解消も、第二期施設の完成をもって実現しました。今後は、大和川の水質保全をさらに推進すべく、高度処理施設の整備促進を図るとともに、老朽施設の改築更新事業にも取り組んでまいります。
 その他にも、「親しまれる下水道」の施策として、大井水みらいセンター水処理施設の上部空間(約9,000平方メートル)を「ふれあいランド」として整備し、平成9年より府民に開放しています。平成17年4月には第二期水処理施設の増設工事が完了したことから、このふれあいランドを拡張すべく、昨年度から屋上整備工事を実施しています。今池水みらいセンターでも、周辺緑地を整備し、順次開放しています。今後も貴重な都市空間として活用できるように整備を進めてまいります。
 また、狭山水みらいセンターでも、「せせらぎの丘」を整備し、平成16年度から開放しております。この丘にはオゾン処理を行った処理水を放流しております。
 下水道資源のリサイクルについては、平成7年より狭山水みらいセンターの汚泥焼却灰を材料とした焼成レンガ「アシュレン」を製造・販売しています。処理水については、供給施設「Q水くん」を平成9年度までに3水みらいセンター全てに設置し活用を図っています。

おわりに

 当事務所としては、「21世紀の大阪府下水道整備基本計画(ROSE PLAN)」を踏まえ、大和川流域の水環境の保全と生活環境の改善を目指し、その根幹となる大和川下流流域下水道事業を関連都市と連携して、より一層推進していきたいと考えています。
 今後とも関係の皆様方のご支援とご協力をお願い申し上げます。


大阪府の下水道整備事業に貢献
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