建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2006年10月号〉

INTERVIEW

淀川左岸の通行を補強する第二京阪道路

20メートルにおよぶ環境緑地帯がシンボルの緑立つ道

浪速国道事務所 所長 橋本 雅道氏

橋本 雅道 はしもと・まさみち
平成4年3月京都大学大学院 工学系研究科 修了
平成4年4月建設省入省(道路局 国道第一課)
平成5年4月中部地方建設局 新丸山ダム工事事務所 工務課
平成6年6月外務省 国際社会協力部 国連行政課
平成8年7月道路局 高速国道課 係長
平成11年3月在ミャンマー日本大使館 二等書記官
平成14年4月道路局 高速国道課 課長補佐
平成17年10月道路局 有料道路課 課長補佐
平成18年4月現職
京都と大阪を結ぶ第二京阪道路は、現在枚方東ICから終点の門真ICにかけての区間で、施工が大詰めに入っている。淀川左岸地帯は、幹線道路が国道1号線しかなかったために渋滞が慢性化し、果ては生活道路や通学路にまで車両が進入して、地域住民や児童らの生活が脅かされてきた。そのため、この路線の早期開通が地域の悲願となっている。しかし、一方では環境悪化を懸念する声もあることから、路線の両側には、約20mに渡って緑地帯が設けられることになっており、都市部としてはめずらしく緑豊かな高速道路となる。浪速国道事務所は、これを「緑立つ道」と愛称し、地域住民の期待を背負って整備を進めている。

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――管内の交通状況について伺いたい
橋本
第二京阪道路は、国道1号のバイパスとなる路線ですが、国道1号は交通量がかなり多く、渋滞もあります。大阪と京都を結ぶメインの路線は、国道1号と171号、名神高速の3路線があり、車線数の合計は14車線で、走行台数は24万台に上ります。一方、大阪と神戸の間は、同等の交通量ですが、幹線道路は国道2本と高速2本で20車線がすでに整備されています。大阪・京都間の車線数としてはまだまだ足りない状況です。
更に淀川の右岸側には171号と名神高速がありますが、左岸側については国道1号だけなので交通が殺到し、渋滞が多く発生しています。
――道路供給状況が極端に不均衡なのですね
橋本
そうですね。現在は、第二京阪道路が枚方東まで供用してますが、そこから近畿自動車道天理吹田線とのジャンクションのある門真までの区間が未整備です。第一京阪道路に並行する国道1号で、渋滞が発生するのも当然です。
例えば、中振や池之宮北などの交差点では、毎日のように渋滞しており、国道1号沿線の地域住民や、周辺の職場の人々から渋滞解消を願う声がかなり寄せられています。また、渋滞になると、どうしても生活道路まで車が溢れる状態になるので、単に国道1号沿線の問題だけでは済まなくなります。
▲第二京阪渋滞状況
――住宅街や学校通学路の危険度が高まってしまいますね
橋本
学童が多く通う通学路も、通行車両が流入しています。しかし、第二京阪が既に供用した区間周辺の地域の交通状況を調査した結果、交通量が1日あたり7,000〜8,000台も減少した事例がありました。この路線ができたことによって、国道1号などの交通量が減少して渋滞も減り、それに伴って生活道路に入り込んでいた車両も減るという相乗効果が見られました。
したがって、第二京阪は単に国道1号のバイパスという機能だけではなく、生活の抜本的な安全性の改善を実現したわけですから、全線が開通すれば、より大きな整備効果が得られるものと期待できます。
▲寝屋川市楠根付近より
京都方面を望む(整備中)
――重層的な道路網となると、沿道環境への対策も必要では
橋本
第二京阪道路は、枚方、交野、寝屋川、四條畷、門真の5市にまたがります。これによって沿線市の交通状況は激変するものと思いますが、同時に整備に当たっては、単なるバイパスとしてではなく、上部は自動車専用道路、下部は一般国道、そしてさらに副道のある区間も含めて、自動車専用道路の両側に約20mの環境緑地帯を設けています。
沿道環境に配慮した形態にすることで、道路整備に伴う影響を少しでも緩衝すべく工夫しています。
――これだけ幅員の広い道路を建設するとなると、地元対応にも苦労があったのでは
橋本
やはり、一部には反対される方々もいます。事業認定をするにあたって、公聴会の開催を求められたため、6月2日、3日に公聴会が開催されました。公聴会では、事業に絶対反対との意見もありましたが、道路の必要性は理解するが、環境対策が十分なのかという厳しい問いかけもありました。また、地域の活性化や渋滞解消のため、早期整備を望む声もありました。
国交省としては、大阪・京都間の交通強化、特に近畿全体の連携強化の視点からもできるだけ早急に整備したいと考えています。
――満場一致のコンセンサスというものは、容易なことではありませんが、一方では渋滞に困惑する住民が現実にあることを考えれば、二の足を踏んでばかりもいられないものでしょう
橋本
構想は昭和40年に企画され、昭和58年から事業化されてスタートしています。途中、平成4年に都市計画を変更しましたが、事業化してからは20年以上が経過しています。確かに、事業に反対の方もおられますが、我々としてはねばり強くお話ししながら進めてきているつもりです。
現時点では、ようやく概ね全区間で工事が展開できる状態になりましたので、一部まだ用地買収がありますが、供用に向けた環境は整いつつあると思っています。
――緑地帯を設けるのですから、通行者も地域住民も緑が豊富で好印象を与えるのでは
橋本
高速道路は、橋脚と舗装路面だの無機的なイメージが一般的ですが、少しでも緩衝緑地部分を設けたいという発想がありました。特に、20km以上に渡ってそれがある道路は、非常に珍しいと思います。今後の道路整備の参考にもなるのではないかと思います。
ただ、事業期間の長い道路ですので、地方公共団体関係者や、沿線住民の方々、あるいは少し離れた沿線の地域の方々にも色々な思いがあると思います。それぞれのご理解を頂くため、様々に説明会や地元市との連絡会議を行い、各者と意思疎通してきた結果が現時点の状況だと思います。
――着工している工区での見所は
橋本
例えば、コスト縮減の面では、鋼管ソイルセメント杭という工法を採用しており、現場で発生した土を杭としてできるだけ再利用するなど、少しでも発生土を外部に出さない手法を取り入れています。外見で分かる環境対策だけでなく、外部から見えない工事の中でも、様々な工夫を行っているところです。
――住宅街を通行するダンプ車輌が少しでも減る工法は、住民生活にもメリットがありますね
橋本
そうですね。このほか、住民の方々への情報提供が重要と考えています。工事現場でダイオキシンを含む土が発見された際には、速やかに処理することを記者発表するとともに、住民の方々が懸念される課題と、それへの対策などを速やかに情報提供することによって安心していただき、何が行われているかを知っていただくことで、危険性のないことの理解に努めました。
また、昨年、交野市において、張りぼての橋脚をつくり、地元の方々に来ていただいくイベントを行い、理解を深めていただきました。今後は、工事が進み、スペースができてくれば、現場見学会をしやすい場所を設けるなど、何がどう動いているのかを説明していきたいと考えています。このように、できるだけ住民の方々との対話を重視することを心がけています。
――ネクスコ(西日本高速道路株式会社)と一緒に施工されているとのことですが、施工分担は、区割りで進めているのでしょうか
橋本
そうです。現場ができるだけ錯綜しないように、区間を割ってネクスコと国で分担し、連絡をとりながら工事を進めています。
――平成21年度の開通には、間に合いそうですか
橋本
21年度開通の目標を守るべく工事工程を組んでおり、国とネクスコと協力しながら進めていますが、中にはできるだけ早くという声もあります。
既に、用地買収率は95%を超えており、工事も順次進んでいます。残る用地の買収が大きな鍵となりますが、一日でも早く開通できるよう努力します。

第二京阪道路の早期供用を目指します
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