建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2006年9月号〉

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新潟県中越地震芋川流域の直轄砂防事業が着々と進行中

流域内の河道閉塞を砂防えん堤の建設と護岸整備で住民の不安を解消

国土交通省 湯沢砂防事務所 芋川流域災害関連事業

▲寺野地区全景(h17.10.12)
▲砂防えん堤3基の施工箇所(寺野地区) ▲砂防えん堤建設箇所までの工事用道路
の建設状況(南平地区)
▲河道閉鎖箇所を掘削し、新たな河道
の整備状況(南平地区)

湯沢砂防事務所は、平成16年10月23日に発生した新潟県中越地震による芋川流域の災害復旧事業を進めている。流域内の被害状況は、崩壊1,419箇所、地すべり75箇所、土砂による河道閉塞55箇所に上る甚大な被害となった。この緊急対策として、優先度の高い寺野、南平、楢木、下之沢、西願寺、東川、冷子沢川、東竹沢、神沢川、十二平、塩谷川、竜光の各地区において復旧整備が進められている。

寺野地区では、芋川上流の河道が閉塞した。この地区は地質が泥岩や砂岩の互層であるため、右岸側で崩壊3箇所、左岸側では幅230m、長さ360mの地滑りが発生した。復旧作業は、「その1工区」では3基の堰堤を12月末までに構築していく。進捗状況は7月時点で約69%。現場では、安全対策として、不安定となった法面全体に対して地山監視員や観測システムを導入し、法面防護などを施しながら整備を進めている。-

「その2工区」は、昨年から着手している斜面対策工にあわせて、切土掘削による法面の斜面対策も行っている。進捗率は70%。現場では、二次災害防止のための作業手順の再教育などを行っている。

南平地区では、芋川右岸の崩壊で河道が閉塞した。復旧は7月末時点で約20%の進捗状況で、この12月中旬を目途に完成させる予定だ。現在は鋼製セル方式で堰堤の基礎矢の打ち込みに着手している。現場では夏期の高温による熱中症対策として、クールヘッドカバーを支給するほか、塩の錠剤を携帯するなどの安全対策を行っている。

楢木地区では、地震直後の応急対策として、河道閉塞箇所の一部を掘削した。7月末時点で約50%の進捗状況で、床固めの右岸側はすでに完了しており、前後の護岸ブロックを取り付けた後に、河川を左岸に切り回すことになる。また、上流では、帯工、流路工、仮橋工の整備を実施している。現場では警報装置と連動した雨量計、水位計の設置などの安全対策を行っている。

▲基礎鋼矢板打込み作業状況(西願川地区)
▲えん堤本体工事(東川地区)
▲砂防えん堤1基と下流側の護岸工
完成イメージ(冷子沢川地区)

西願寺地区では、17年6月に1回、8月に2回と計3回の出水による被害を受けた。このため県道の仮復旧と集落沿川の河道掘削を進めながら工事用道路を確保した。復旧作業は7月末までに約48%の進捗状況で、12月中旬の完了を目指している。堰堤箇所の掘削はすでに終了し、現在は鋼製堰堤の基礎鋼矢板打ち込み及び垂直壁の整備を行っている。同地区の最上流部にある湛水部からの土石流対策では、ワイヤーセンサーによる無線システムを導入して安全対策を行っている。

東川地区では、東川上流で河道が閉塞した。7月末時点で約98%の進捗で、堰堤はすでに完了し、現在は防護柵取り付けなどの整備のみとなっている。堰堤の現場は高所での作業が主体となり、簡易な安全設備しか設けることができないため、作業手順と保護具厳守の監視強化を徹底して作業に当たっている。その他、作業員の一体感向上による連携強化と、安全意識の向上を図るため、現場だけのオリジナルジャンパーを用意した。

冷子沢川地区では、冷子沢川の上流で河道が閉塞し、不安定な土砂が堆積した。 

現場は羽黒トンネルを通じて一番奥に位置しているため、資材の搬入が困難だったが、復旧は7月までに約40%の進捗状況で、12月中旬の完成を目指している。

この冷子沢川は、普段は流量が少ないが、大雨の場合には上流の土砂が流れてくる恐れがある。このため、突然の豪雨などによる土石流などに警戒し、避難訓練と連絡体制を強化しながら進めている。

東竹沢地区では、芋川本川の左岸側で幅290m長さ350mに及ぶ地すべりが発生し、河道が閉塞した。復旧は「その1工区」では7月までに約62%まで進捗しており、この12月中旬を目標に堰堤2基の完成を目指している。

「その2工区」は、約70%まで進捗しており、現在は下部崩積土の掘削、表面排水工の整備、それにともなう法面植生工の整備を行っている。作業現場では、重機作業計画を基本とした安全対策を実施しながら、10月中旬の完成を目指している。

神沢川地区では、河道沿いの斜面崩壊により、河道閉塞が数箇所で発生した。復旧作業は7月末時点で約40%の進捗率となっている。現在は鋼製砂防堰堤の整備を行っており、12月末の完成を目指している。この工区では工事用車輛が、国道291号の開通までは仮設の迂回路を通るため、重機作業において接触事故がないよう誘導員を配置。

十二平地区では、芋川流域の左岸で大規模な崩壊が起こり、河道閉塞が発生した。7月末までの復旧進捗率は約35%で、11月末の完成を目指している。堰堤は左岸側が完了しており、右岸側の整備に移る。斜面は法面半分が完了。アンカーは約65%まで完了している。また、多聞田川の堰堤は、約10%の進捗状況だ。現場では、土石流などに対する避難訓練を毎月実施しているが、様々なケースを想定した避難経路を設定して取り組んでいる。

塩谷川地区では、今年6月末現在で、既設の堰堤上流側で水叩き、側壁ブロックを据付。7月には本堤掘削を開始。順次ブロック据付を施し、作業は最盛期を迎えている。土石流などへの安全対策としては、本堤の整備前に上流側に仮設土のう堰堤を築堤した。

竜光地区は、芋川の最下流部に位置しているため、出水時に大量の不安定な土砂が流出する可能性がある。そこで、現在着手されている「その5工区」では、仮川を本流に切り替え、堰堤等の構造物の整備を行い、水位の定期的な観測で早期対応を心掛けている。進捗率は7月末時点で約30%。

「その6工区」は、遊砂地を掘削しており、3,2000m3うち15,000m3の残土を運搬。また、床固工コンクリート打設は1,300m3のうち300m3が完了しており、7月末時点の進捗率は20%となっている。12月中旬の完成を目標としているため、事務所側と作業現場とで緊密な打合せを行っていく。

「その7工区」は、床固工と護岸工を実施しており、7月末時点での進捗率は約26%。現場では、独自に気象観測を行いながら安全意識の向上を図っている。

「その8工区」は、右岸側整備がほぼ完成し、現在は左岸側の掘削に着手している。現場では、些細な欠損箇所も早期に補修できるよう、点検を徹底している。7月末時点で約35%の進捗状況となっている。

▲東竹沢地区 ▲砂防えん堤1基と下流側の護岸完成イメージ
(神沢側地区)
▲砂防えん堤2基の施工箇所(東竹沢地区)
▲砂防えん堤完成イメージ(十二平地区) ▲砂防えん堤基礎部のコンクリート打設状況
(十二平地区)
▲平成17年10月に慨世した砂防捕捉工事
(竜光地区)


芋川流域の復旧整備に貢献
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