建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2006年9月号〉

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名古屋圏の新たな食肉拠点として名古屋港船見ふ頭に新市場を整備

BSE発生後、本格的に整備される中央卸売市場として、万全の衛生対策を講じた施設に

名古屋市 中央卸売市場 南部市場


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 名古屋市は中央卸売市場高畑市場に代わる施設として、南部市場の建設を進めている。
 中央卸売市場高畑市場は、昭和33年の開場以来、市内はもとより名古屋圏域における食肉拠点市場として大きな役割を果たしてきた。この間、食肉需要の増大などによる市場施設の増改築を繰り返してきたが、施設の老朽化が進展し、また、敷地も1.5haと狭いため、操業を行いながらの建て替えは困難な状況にあった。そこで抜本的な施設の移転整備として、船見ふ頭の一部である港区船見町地内に敷地面積60,721uの新たな食肉市場を整備するものだ。

整備の基本方針

 新市場は、食肉の安定供給、安全性に配慮した衛生的かつ効率的なと畜場を併設した施設とする。配置計画では、牛、豚の交差汚染防止のため処理ラインの分離を行い、生体から部分肉まで市場内で一貫して処理。最新の流通形態に対応するための部分肉加工施設のほか、適切な温度管理を行える冷凍冷蔵設備を整備するなど、売買参加者の需要に応じた関係施設及び機能を充実させた。
 また、施設内には食肉の処理工程やせりなどを見ることができる見学者通路を設置し、市民に開かれた市場を目指している。
 敷地周辺は住居系地域並みの規制基準を維持達成するとともに、市場敷地内の25%以上は緑地とし、敷地北側には公園風のスペースを設けるなど、周辺環境にも十分に配慮した緑豊かな施設とした。そのほか、市場周辺に道路・水路を整備し、利用環境の向上を図っている。

衛生対策

 BSE(牛海綿状脳症)発生以降、初めて整備される中央卸売市場であるため、ハード面、ソフト面においても万全な対策を講じている。施設整備は、農林水産省、厚生労働省の最新ガイドラインに沿った形で行われるが、原料から製造工程にわたって発生の可能性のある危害や、その原因・防止対策を分析し危害の発生を未然に防止する食品の衛生管理手法・haccpシステムを取り入れていく考えである。
 BSE対策としては、特定部位を完全に除去し、食肉衛生検査所の職員による全頭検査を引き続き行うとともに、特定部位は専用容器に一次保管し場内で焼却処理を実施。牛肉トレーサビリティ法の確実な運用を支援するための情報システムを導入する。
 そのほか、衛生対策として生体搬入から搬出に至るまでの牛・豚の処理ラインを分離し、交差汚染防止を図るとともに、ワンフロア・ワンウェイシステムを導入し、処理過程の機械化・自動化を進め、効率的かつ衛生的な処理を図る。
 食肉処理スペースや冷却室、仕分室などには適正温度管理を徹底するほか、部分肉出荷プラットホーム、内臓出荷プラットホーム、枝肉出荷バースの屋内化及びドッグシェルターを設置し、枝肉の品質保持に努める。と畜解体室などの入退室はエアシャワー等を装備したサニタリールームを介して行い、各作業台には手洗い器を設置。解体作業中は高温水の使用によりナイフ・器具等の消毒を確実に行い、終了後は泡洗浄により徹底した作業場の洗浄を行うこととしている。
環境対策

 事業地は都市計画法上の「工業専用地域」に指定されているが、周辺地域における生活環境に配慮するため、住居系地域並みの規制基準の環境レベルを維持・達成を実現できる環境対策を実施している。
 主な対策としては、建物内の騒音や悪臭が外に漏れないよう建物を密閉構造とするほか、処理室内の空気は脱臭装置を経由してから排出する。焼却炉は800℃以上で安定的な燃焼管理を図り、ダイオキシンの発生を抑制。焼却炉、ボイラーなどの燃料については全て環境への負荷が少ない都市ガスを使用するとともにコジェネレーション設備を設置するなど大気汚染対策に努めている。市場で使用した水については、市場内に設置する排水処理施設で高度浄化処理を行う。さらに排水処理漕を地下に設置し、悪臭の漏出防止を図っている。
 新市場の建設は平成17年1月から進められており、18年度内の完成・開場を目指している。

施設概要
 所 在 地:名古屋市港区船見町1番地の39 船見ふ頭の一部
 
 建物構造:本館棟 鉄骨造2階建(一部3階建)
      処理棟 地下 鉄筋コンクリート造
      地上 鉄骨増2階建
 
 主な施設:本館棟 卸売場、部分肉加工室、と室、解体室、冷蔵庫
      処理棟 排水処理施設、焼却施設
 
 敷地面積:60,721u
 延床面積:27,059u(本館棟:約22,800u)(処理棟:4,200u)
      ※ 庇部分・工作物等除く

主な施設の能力
 けい留能力:牛 100頭   豚 840頭
 と畜解体能力:牛 100頭/日 豚 1,000頭/日
 枝肉冷却室収容能力:牛 180頭   豚1,000頭
 部分肉加工室処理能力:牛 150頭/日 豚400頭/日



名古屋中央卸売市場 南部市場(仮称)建設工事
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