建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2006年9月号〉

寄稿

北海道下水道事業について

北海道建設部まちづくり局 都市環境課 参事 武智 弘明

武智 弘明 たけち・ひろあき
昭和27年10月18日生
札幌市出身
昭和 52年 8月 北海道大学大学院工学研究科衛生工学専攻
博士後期課程 中退
昭和 52年 9月 道職員に採用 都市施設課勤務
以後、下水道、街路、道路、空港、まちづくり、高速道路、都市公園などの業務を担当
途中、江別市に出向し、区画整理や鉄道高架を担当
平成 15年 6月 建設部公園下水道課長
平成 18年 4月 建設部まちづくり局都市環境課参事

▲昨年通水した岩内・共和下水道管理センター
平成18年度予算と事業展開の基本方針について

 北海道の下水道の平成18年度当初予算は、国費が前年比13%減の約258億円、補助対象事業費が前年比13%減の約492億円となっています。平成10年頃をピークとする国の景気対策により相当の事業の前倒しが行われてきたことや、道内の高い普及の状況、近年の極めて厳しい市町村の財政状況を踏まえた結果と受け止めています。
 事業の展開としては、引き続き市部に比べ遅れている町村部の普及を促進するとともに、浸水防止のための雨水管整備、下水道の機能を健全に保持していくための老朽化施設の改築更新、合流式下水道の改善、下水汚泥の減量化・有効利用のための施設整備などを積極的に進めていく方針です。
 個別に見ると、汚水処理の普及を促進する公共下水道が前年比0.77と減額となっている一方で、施設の改築更新を中心とする機能高度化下水道が伸び率1.02、合流式下水道の改善を中心とする水質改善下水道が伸び率1.21と高い伸び率となっています。これらは、汚水処理普及が一段落したことを象徴しています。
 予算細目毎には、公共下水道が事業費約197億円、国費約100億円で、札幌市をはじめ116市町村が事業を実施しています。
 流域下水道は、管渠延伸と施設増設を事業費約8億円、国費約4億円で、石狩川、十勝川、函館湾の3箇所で事業継続中です。
 水質改善下水道は、事業費約48億円、国費約25億円で、札幌市など17市町で実施しています。
 機能高度化下水道は、事業費約192億円、国費約106億円で46市町村、3流域で下水道管の更正などを実施しています。
 近年、局部集中的な豪雨が報じられますが、浸水対策下水道としては、事業費約46億円、国費約23億円で29市町が雨水管整備を実施しています。

▲下水道管更正施工
下水道事業の進捗状況

 180市町村のうち下水道事業を実施している市町村は152を数えており、かつ、事業に着手した全ての市町村が通水開始しています。下水道普及率は、平成17年度末で87.3%であり、昨年では全国でも5番目に高い普及となっており、このほかの農業集落排水や合併処理浄化槽を併せた汚水処理総合普及率は90.7%に達しています。計画的・効率的整備を図るため、道で策定した「全道みな下水道構想」では、下水道は、560万人道民のうち、地形などから約510万人を対象としており、平成17年度末ではその95%の人口についてカバーしていることとなります。
 必ずしも都市が連たんしているわけではない本道で、何故このような高い普及がなしえたか、と言えば「市街地へ人口集中している」「本道こそ冬季のトイレの快適性が不可欠」「新しいものを取り入れやすい道民気質」「市町村の熱意と国の理解」「緊急性の高い雨水整備が少ない」「代行制度と下水道事業団の存在」などが挙げられると思います。

▲コンポスト施設切り返し状況
▲ディスポーザー外観
特徴的な取り組み

 毎年16万トン程度発生する汚泥の7割は緑農地とセメント原料に有効利用しています。近年、農業者の高齢化が進むなどにより、農家での汚泥堆肥化作業が捗らなくなり、他方で、畜産廃棄物の利用が進むなど、有効利用をめぐる外的環境も変化しつつありますが、循環型社会形成の観点から、引き続きコンポスト施設などの整備は重要です。
 平成15年度の平成十勝沖地震において、下水道管渠の一部に液状化被害が生じました。その復旧時から埋め戻しに際してセメント改良土を用いるなど災害に強い下水道整備が進められており、また、管渠新設に際しても、同様に対応することとしています。道では度重なる地震被害を受け、「下水道地震災害対応の手引き」を改訂するなど、市町村での迅速な対応が可能となるよう、努めております。
 本道においても、早くから下水道整備を進めた17市町に合流式下水道が存在していますが、合流式下水道では雨天時に汚水の一部が未処理放流されることから、一定の改善が必要となっています。合流管延長を合計すると、5,200kmを超えており、各市町が雨水吐きの改善や滞水池の新設など改善計画をまとめ、事業に着手しているところですが、進捗は十分とは言えません。
 家庭の台所で生ごみを破砕し、下水道で輸送する直投型ディスポーザーについては、歌登町での社会実験が終了し、国で「導入する場合の考え方」が示されたところです。道内では、農業集落排水を実施した町でも導入をはじめており、道としては昨年度実施した基礎調査を踏まえ、規模や下水汚泥の処分方法等によって、導入の評価が変わりうることなどの情報をきちんとお知らせし、自治体が機会を逸することなく適切な判断ができるよう努めてまいります。
 また、直投型ディスポーザーの使用料条例制定や事業所での使用の制限など法制面についても、共通の認識が図られるよう努めてまいります。

最後に

 地方分権が推進される中で、さらに効率的・安定的に下水道を運営していかなければなりません。厳しい財政状況の中で、コスト縮減を図りながら良質で経済的なサービスを提供する必要がありますが、本道の将来人口は減少するものと予想されているなど、厳しい状態が続くものと考えておりますから、各自治体はこうした経営の状況をしっかり見定めて、適正な負担のあり方が検討される必要があります。
 市町村の執行体制については、人口5万人以下の都市では担当職員数が平均5人、人口1万人以下では僅か1.8人という状況にあります。品確法の時代にあって、中小自治体ではpm・cm的な役割の導入も重要であり、道も今年度、機構改革の中で公園下水道課と都市環境課を統合したところでありますが、こうした面についても協力してまいります。
 道を始め、市町村の財政状況は厳しく、平成19年度要望は今年度よりさらに減少することと考えておりますが、遅れている町村部での普及促進はもとより、浸水対策や合流改善、老朽施設の改築更新に重点化を図り、平成15年度に策定された北海道下水道ビジョンや様々な上位計画を踏まえ、一層効率的となるよう明年度の事業要望を行ってまいります。


HOME