建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2006年7月号〉

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環状第8号線がいよいよ開通

都心へのアクセスを促し周辺地域の環境配慮も兼ね備えた整備がついにお目見え

▲橋相生陸橋完成イメージ
▲国道254号(川越街道)上のけた架設・3日目架設完了 ▲川越街道全面通行止状況

今年の5月28日(日)、環状第8号線の本線部がいよいよ開通となった。環状第8号線は、半地下式トンネル構造など随所に沿道の環境保全に配慮した道路構造で整備されている。それに加えて、歩道部や環境施設帯に設置される植樹帯には、四季折々の樹木を取り入れる。車道舗装は、騒音を低減する低騒音型舗装、歩道舗装は雨水を浸透させる透水性舗装が採用されている。
 環状第8号線の歴史は古く、第2次世界大戦後の昭和21年3月26日、東京都再建の第1歩として「戦災地復興計画方針」の中で計画された。この計画で、皇居を中心に、郊外へ向かって伸びる34の放射路線と、それを囲むような環状線である9路線及びその他の路線が決定された。その後は、首都圏の発展や自動車交通などの増加により、23区内の都市計画道路が見直され、平成10年度には放射線が36、環状線は11路線に増えた。さらに16年3月末には、総延長1,765qのうち、58%にあたる1,015qが完成した。
 今回の道路整備は、大田区の羽田空港を起点に世田谷区、杉並区などの各区を経由し、北区岩淵町までの延長44.2qの都市計画道路である。都心から半径約13qの西半分を受け持つ環状道路であることから、神奈川県、多摩地域、埼玉県など、都心に向けて集中する交通を分散させる役割を担っている。その環状第8号線の未開通区間であった井荻トンネルから目白通り、そして、川越街道トンネルから首都高速5号池袋線下までの本線部が完成したため、全線開通の運びとなった。
 こうした都内の環状道路の全線開通は、昭和60年の環状第7号線以来21年ぶりとなる。これにより、交通が分散し、周辺道路の交通渋滞の緩和が見込まれる。今後も平成20年度の完成を目指し、引き続き側道と歩道の整備も進めていく。
 この事業では、練馬北町陸橋、北町若木トンネル、板橋相生陸橋、練馬トンネルなどが重点整備された。
 練馬北町陸橋は、環状第8号線が川越街道と立体交差する陸橋で、橋長245.5m、幅員16mとなっており、桁形式は5径間の連続非合成鋼箱桁橋である。この橋桁の架設作業は、深夜10分間ずつ3日間に分ける形で、長さ31m、重量55トンの橋桁を500トン吊りの大型クレーンで架設された。
 北町若木トンネルは、環状第8号線が旧川越街道、東武東上線、ときわ通りと立体交差するトンネルである。延長475.1m、内空幅員17.7mの鉄筋コンクリート造となっている。
 このトンネル工事は、土留め工を施工後、地上から掘削し、トンネル本体を順次施工した。また、東武東上線の運行に影響を与えないように、線路脇の立杭で作ったトンネル本体を、線路下に引き込む形で施工された。これに加えてトンネル施設内には、周辺地域への環境対策のため、換気方式は、トンネル規模から集中排気型縦流換気方式が採用されている。これにより、排出した空気は上空で拡散され、安全かつ円滑な交通を確保していく。

▲デッキリフトを低くした大型搬送車

また、板橋区若木地区は地形が複雑であるため、環状第8号線の外回り及び内回りでは、高低差が最大約20mの箇所がある。そこで、本線部を擁壁構造として高く設定し、補助第249号線との接続を図った。この区間は旧蓮根川があり、沖積地層のピート層が軟弱なため、交通荷重などの地盤変状を起こさないよう、事前に地盤改良も行った。
 板橋相生陸橋は、環状第8号線が補助第201号線と立体交差する陸橋で、16年2月から工事に着手してきた。橋長191.0m、幅員16.5〜18.7mで、首都高速の高架下にある限られた空間に設置するため、橋桁高さを抑えた4径間の連続鋼床版箱桁となっている。首都高が上空にあるため、交差点内の橋桁は、デッキリフトを2段階で装備した大型搬送車と、送り出しの併用による一括架設工法が採用された。作業は、17年4月23日の深夜から翌日にかけて短時間で架設され、迅速な作業が行われた。

▲北町若木トンネル施設イメージ

また同陸橋は、交差点部への排気ガスの集中と騒音を低減する目的でシェルターを設置している。シェルター内での自動車排気ガスは、吸引ダクトを通じて橋桁下の大気浄化施設に運ばれる。吸引された排気ガスは、窒素酸化物を約8割、浮遊粒子状物質を約9割が除去され、空気を浄化して排出される。このようなシェルター設置で、周辺地域の環境保全にも力を注いでいる。
 練馬トンネルは、環状第8号線の練馬区南田中地区から貫井地区の工事で、すでに開通している井荻トンネル(約1.3q)に新たなトンネルが接続され、北東に向かって延伸する工事であった。事業区間(本線部)の構造は、ほとんどが半地下式トンネル構造となっており、自動車から排出される排気ガスを拡散させるため、天井を半分開けた形になっていることが特徴だ。反面、天井の一部が覆われているため、自動車の騒音が低減される。この区間の完成により、笹目通り、目白通りなどと接続するため、交通の分散化をさらに促し、交通渋滞の緩和が大きく期待される。
 同事務所では、引き続き、他の道路、橋梁、街路樹・緑地などの維持補修にも力を注ぎ、今後も安全で快適な交通の確保を目指していく。

▲機械設備イメージ ▲北町若木トンネル施設イメージ
▲板橋相生陸橋完了状況 ▲半地下式トンネル断面図

環状第8号線整備事業に貢献
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