建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2006年6月号〉

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新潟県中越地震の復旧工事を鋭意実施中

甚大な災害からの早期復旧に向けて総合的な砂防事業を展開

新潟県土木部砂防課 新潟中越地震復旧事業

新潟県砂防課では現在、平成16年10月23日に発生した中越地震の復旧工事を行っており、災害発生後の異常気象による被害の拡大を未然に防止するため、震災の発生直後から対策工事に着手している。当時の災害状況は267件の家屋被害となり、斜面崩壊による道路の埋塞や土石流による道路の寸断により、集落が孤立化する要因となった。このことからも、被害がいかに凄惨であったかが想像できる。

この中越地震により発生した土砂災害に対し、同県としての迅速な復旧対応が必要となった。そこで、砂防6ヶ所、地すべり52ヶ所、急傾斜地20ヶ所の災害関連緊急事業を実施している。今回その中から、平成16年から継続している三石川の砂防事業、地すべり対策事業の濁沢地区と油夫川地区、急傾斜地崩壊対策事業の藤田沢地区を紹介する。
三石川は、長岡市虫亀地内を流れる河川である。その上流部の沿川斜面において地すべりが発生したことで、河道は異常堆砂となった。そのため、下流を走る県道柏崎高浜堀之内線の橋梁を含め、道路の寸断等の被害をもたらした。現在、県道を原型復旧することを考慮し、砂防えん堤の設置位置を県道よりも上流側に設定している。しかし、渓流沿いに点在する小規模な地すべりブロックがあり、異常堆積土砂である地盤反力の小さい所に、河道内の異常堆積土砂に見合う砂防えん堤を設置する必要があった。このため、地すべりに対しては大規模な掘削をしないこと。地盤反力に対しては、地盤改良を伴わない極力軽量な施設にすること。工期短縮と残土の有効利用という考えから、対策工をセルダム工法で行っている。
同市の濁沢地区では、幅約70m、長さ約130mの地すべりが発生し、死者2名、人家6戸、県道100m、太田川70mが埋塞などの被害をもたらした。長さ約130mの崩落ブロックの背後に、約450mに渡って地すべり地形が確認された。このため、末端部にある崩落ブロックに対して排土工による対策が不可能となり、水抜き抑制工では確保できない計画安全率を、アンカー付き鋼管杭を実施し確保した。

また同市の油夫川地区では、幅約750m、長さ約300m、土塊量が約360万m3の地すべりが発生した。被災状況は、人家5戸全壊、村道750mの被災、油夫川500mが埋塞など甚大であった。対策工法として、地すべり移動体の安定については、地下水排除工、頭部排土工、末端部押さえ盛土工を組み合わせた。滑落崖対策については、法枠工にグランドアンカー、ロックボルトの併用で進めている。
同県小千谷市にある藤田沢では、幅約189m、高さ約25mの斜面崩壊が発生した。崩壊した土砂は人家の裏近くまで迫り、今後の降雨などで崩壊が拡大した場合には、さらなる被害に繋がりかねない危険な状態であった。そのため復旧工法として、第1工区では崩壊の危険性の高い斜面を安定勾配で切土し、植生工を施すことで浸食防止を図った。第2工区では、不安定な土塊を安定勾配で切土することが不可能であったため、吹き付け法枠工で施工し、緩みの範囲が深いものは、鉄筋挿入工を併用している。

一方、同県砂防ボランティア協会員による各種活動、昭和50年から県内各地に配置している地すべり巡視員など、地域による防止活動にも取り組んでいる。
今後も同県砂防課では、土砂災害が原因となり、避難所生活余儀なくされている一日も早い住民の帰宅を目指し、早期既成に向けて事業の進捗を図っていく。

▲濁沢地区被災状況 ▲濁沢地区復旧作業状況
▲三石川被災状況 ▲三石川上流部復旧作業状況
新潟県中越地震復旧事業に貢献
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