建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2006年4月号〉

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日本有数の活火山・有珠山で砂防事業を推進

温泉街の砂防空間で地域住民が主体となったワークショップを開催

北海道室蘭土木現業所 有珠山火山砂防事業

▲洞爺湖温泉街を覆う金比羅山山麓の噴煙
(平成12年4月4日撮影)

洞爺湖の南に位置する有珠山は、昭和に入ってから3度の噴火活動が記録されている日本でも有数の活火山である。
 昭和52年〜53年の噴火では、降灰・地殻変動・泥流により、建物や道路などへの被害のほか、3名の死者・行方不明者が発生。平成12年の噴火では、事前避難により死傷者は出なかったが、地盤の隆起と断層によって建物や道路が破壊され、大きな被害となった。
 道では昭和52年の噴火を契機に山麓12渓流での砂防施設の整備を開始。平成4年からは警戒避難情報収集のための観測機器整備も併せて行われている。砂防事業にあたっては、周辺に地耐力の不足する土層がみられること、噴火前後の地殻変動にある程度追従可能であること、また早急な事業効果を発揮するため、鋼製自在枠や二重鋼矢板壁堰堤、鋼製スリット堰堤を各渓流に整備するなど、鋼製の砂防構造物を積極的に採用している。

▲砂防施設の建設が進む洞爺湖温泉街
(平成16年11月8日撮影)

この事業により、平成12年の噴火では金比羅山火口群付近の堰堤が地殻変動に追従、熱泥水を捕捉し、温泉街の被害が軽減されていることが確認された。また降灰や地盤変動等により、洞爺湖温泉街に流れ込む3渓流(西山川・小有珠川・小有珠右の川)及び虻田町の市街地を流下し、噴火湾に注ぐ2渓流(板谷川・トコタン川)流域で不安定土砂が増加したが、温泉街では谷の出口付近に新たに大規模な遊砂地を整備し、貯砂空間を確保した。
 砂防施設の配置計画にあたっては斜面に配置した棚田のような砂防施設群に土砂が効率的に堆積するよう、泥流氾濫シュミレーションを用いて詳細な配置を決定。上流の既設堰堤には新たに切欠きを設けることにより泥流を遊砂地内に効率的に導く計画としている。
 この整備で温泉街の約5分の1が砂防施設用地となったが、地域住民が主体となり「560万人の観光地づくりを考えるワークショップ」を開催。砂防空間を有効利用し、温泉街の活性化を図っている。
 平成16年度は12年の噴火の火口及び火口に隣接する区域で噴石及び泥流による直接的な被害が著しい区域であるaゾーンで砂防施設の整備が概成。17年度からは山麓崩壊等による泥流被害の危険性が高いxゾーンで砂防施設整備に着手している。

区分 今回の噴火等に対して防災対策を講じる区域
Aゾーン Xゾーン
区域の設定 今回の噴火の火口及び火口に近接する区域で、噴石及び泥流による直接的な被害が著しい地域 今回の噴火で直接被害は受けなかったが、山麓崩壊等による泥流被害の危険性の高い区域
区域設定の
必要性と
対策の概要
現在の噴火活動で噴石が跳ぶ危険性がある区域又は、泥流等による危険性が大きい区域であることから、全てに建築物を禁止する区域都市、緊急に建築物を安全な地域に移転させ、砂防施設等を整備する。 泥流など甚大な被害をもたらすおそれのある区域であることから、全てに建築物を禁止する区域都市、短期的に建築物を安全な地域に移転させ、砂防施設等を整備する。
区域の土地利用 防災施設用地・緑地(空間的利用)・災害遺構保存地・自然公園 防災施設等用地
有珠山火山砂防事業〜今年度の主要工事をみる
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