建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2006年4月号〉

特集・京急線連続立体交差事業

【京急線連続立体交差事業】

京急本線・平和島駅〜六郷土手駅、空港線・京急蒲田駅〜大鳥居駅間を連続立体交差化

17年10月1日に空港線仮線切換工事を実施

▲京急蒲田駅部施工状況(仮空港線切替後)

東京都、大田区および京浜急行電鉄鰍ヘ、京浜急行本線平和島駅〜六郷土手駅間及び空港線の京急蒲田駅〜大鳥居駅間において連続立体交差事業を進めている。
 事業区間は環状8号線及び放射19号(国道15号線)を含む28箇所の踏切が存在し、交通混雑の原因となっていたほか、鉄道で地域が分断されていることで沿線のまちづくりに大きな障害となっていた。またこの地域は市街地が密集し狭隘な区間が多いため、緊急車両の通行や災害時避難路の確保など防災体制に不安を抱えている。さらには駅前広場や駐輪施設の不足によって鉄道からバス・タクシー、自転車への乗り継ぎが不便であることなど、問題が山積していた。
 そこで、東京都、大田区、京浜急行電鉄鰍ヘ、京浜急行本線の平和島駅から六郷土手駅までの延長約5.4km(事業区間約4.7km)の区間、同空港線の京急蒲田駅から大鳥居駅までの延長約2.1km(事業区間約1.3km)の連続立体交差事業に着手。同区間の28箇所の踏切を高架化することにより、交通渋滞及び踏切事故の解消、地域分断の解消を図る。また、羽田空港へのアクセス向上を目指し、京急蒲田駅を2層高架構造とする駅総合改善事業を併せて行っている。
 事業は平成11年3月8日に本線・平和島駅〜六郷土手駅間、空港線・京急蒲田駅〜大鳥居駅間が都市計画決定。翌12年12月28日に梅屋敷間〜六郷土手間、空港線・京急蒲田駅〜大鳥居駅間が事業認可取得され、14年3月27日には本線・平和島駅〜京急蒲田駅間が事業認可している。
 工事にあたっては、事業促進の手法を重ねて再検討した結果、空いた鉄道用地に高架橋を構築する仮線工法と営業線の真上にまたぐ形で高架橋を構築する「直接高架工法」を併用し、事業期間の短縮と早期の事業効果の発現を図っている。
 直接高架施工機の特徴としては、事前に地盤強化を行い、鋼製覆工板で施工機全体を支える構造の走行設備としているほか、安全運転を確保するための防護装置(シェルター構造)を備えるなど安全性を高める工夫が施されている。環境面においては、クレーンの油圧ユニットは低騒音の電動モーター方式を採用し、建設機械騒音の低減化および無排気ガス化を実現するほか、高架橋の柱・梁・スラブに工場製作部材(pca)を用いることにより工期短縮・作業の振動および騒音の低減化を図っている。
 移動式の直接高架施工機は営業している鉄道線路をまたぐ形の作業床を持ち、その上に大型クレーンを装備する。幅が異なった高架橋および駅などでは施工機の柱間隔や高さを油圧装置により自由に調整できるなど機能面においても非常に優れた工法となっている。
 工事は、平成16年度は仮空港線ホームの構築、国道架道橋橋脚工事等を実施。17年度は直接高架工法による基礎杭工のほか、京急蒲田駅部では10月1日に仮空港線の切り替え工事を実施した。これは現在の京急蒲田駅および線路の上に高架構造物を造るために仮線路に切り替える工事で、切替にあたっては踏切道の拡幅を行うなど、予め踏切横断対策を実施している。
 大田区ではこの事業に併せ、沿線各駅の駅前広場やアクセス道路のほか駐輪施設の整備等を計画している。駅構内もエレベーターやエスカレーターを設置し、バリアフリー化を進めるなど、着々と魅力あるまちづくりが進んでいるところだ。

▲京急線鎌田駅付近の完成イメージ間 ▲直接高架工法(イメージ)

京浜急行本線・同空港線 連続立体交差事業早期整備に貢献
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