建設グラフインターネットダイジェスト
〈建設グラフ2006年4月号〉
interview
東アジアのゲートウェイとして発展を続ける重要拠点地域・福北大都市圏の人と物の流れを支える大動脈としての役割を担う
九州で初めての環状道路ネットワーク誕生(福岡高速)と
新北九州空港への新しいアクセスルート誕生(北九州高速)
福岡北九州高速道路公社 建設部長 松木 茂樹氏
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福岡北九州高速道路公社 建設部長
松木 茂樹 まつき・しげき |
昭和26年9月2日生 |
昭和 | 49年 | 3月 | 九州工業大学 開発土木工学科卒業 |
昭和 | 49年 | 4月 | 福岡県職員採用 |
平成 | 1年 | 4月 | 福岡県福岡土木事務所 技術主査 |
平成 | 8年 | 4月 | 福岡県飯塚土木事務所 係長 |
平成 | 11年 | 4月 | 福岡県土木部道路建設課 参事補佐 |
平成 | 12年 | 4月 | 福岡県飯塚土木事務所 課長 |
平成 | 14年 | 4月 | 福岡県北九州土木事務所 副所長 |
平成 | 15年 | 4月 | 福岡県土木部港湾課 課長 |
平成 | 17年 | 4月 | 福岡北九州高速道路公社 建設部長(福岡県土木部副理事) |
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福岡を中心とする北部九州は、その地理的な優位性から古くから大陸との交流の窓口として、またアジア地域の物流拠点として輸送交通網が発達してきた。3月16日には24時間利用可能な海上空港・新北九州空港が開港するなど、今後、九州・アジア生活圏の中核としてその役割はますます大きい。福岡北九州高速道路公社では、九州縦貫自動車道等と連携した広域交通ネットワークとして福岡高速道路、北九州高速道路の建設・管理を行っているが、この3月26日には福岡高速5号線2工区・野多目〜堤間が供用開始する。北部九州の都市交通ネットワークを支える同公社の事業について、松木茂樹建設部長に伺った。
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▲福岡高速5号線堤出入口付近 |
- ――公社の概要からお聞かせ下さい
松木
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当公社は福岡市と北九州市及び周辺地域で指定された都市高速道路を建設・管理する目的で昭和46年に設立されました。昭和55年に福岡高速道路と北九州高速道路の一次供用(延長9.6km)以来、漸次路線を拡張しており、これまでに93.8kmを供用しています。現在は12.5kmの整備を進めているところです。
福岡県の人口は約500万人で、そのうち福岡市は約140万人、北九州市は約100万人ですから、2政令指定都市で約半分の人口を占めている状況です。公社の所管する都市高速道路はこのふたつのエリアで人と物の流れを支援する施設として、非常に重大な責務を担っています。現在の利用状況は、福岡高速では一日あたり約16万台、北九州高速では約10万台、併せて約26万台に利用されています。このため、災害や雪、事故などで通行止めとなると、都市機能が大きく損なわれることになるので、日々の業務に緊張感を持ちながらの対応となっています。
- ――昨年の福岡県西方沖地震での影響は
松木
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一部懸案されるような被害はありましたが、大事には至らず、早急に対応できました。道路ネットワーク全体に対しても、ほとんど被害はありませんでした。
- ――福岡高速道路の全体計画についてお聞かせ下さい
松木
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福岡市は、九州全体の行政・経済・交通の中枢として天神・博多地区を中心に都市構造が形成されていますが、近年では各種機能がさらに集中しています。交通体系も、都市機能の集中を反映し都心集中型になっているため、通勤・通学時間帯を中心に交通渋滞が発生しています。福岡高速道路は、交通渋滞を緩和し都市の均衡ある発展に寄与することを目的に計画された自動車専用道路で、高速1号線から5号線までの56.8kmの整備計画延長となっています。
昭和55年10月に1号線香椎〜東浜間(延長5.9km)を供用して以来、順次整備を進め、現在供用延長44.3 kmで、福岡の大動脈として郊外と都心との連携強化を担ってきました。
- ――整備中の5号線の事業概要についてお聞きしたい
松木
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福岡高速5号線は、月隈jctから福重jctに至る延長18.1kmの路線です。この整備により、九州縦貫自動車道、西九州自動車道と連結した広域的な道路ネットワークが拡充されます。
工事は既に1工区の月隈jct〜野多目間(延長5.6km)が供用中で、2工区の野多目〜堤間(延長4.4km)は、3月26日の供用開始に向けて進捗中です。国で進められている国道202号福岡外環状道路も同時供用となっており、九州で初めての環状道路ネットワークが誕生することとなります。
これまで、千鳥橋jct経由で迂回しなければならなかった方々も、この供用によって大変便利になります。福岡高速の場合、特に通勤時間帯はジャンクション部分が渋滞箇所で、事故も多かったのですが、ジャンクション部における負荷の軽減や交通分散による幹線交通混雑の緩和が図られます。
- ――現在、施工している工事内容は
松木
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現在、供用に向けて舗装、遮音壁、区画線、標識、施設工事を殆ど終えております。2工区に続く3工区の堤〜野芥間(延長3.1km)については、すでに現地着手しており、平成19年度の完成を目指しています。また、計画では4工区の野芥〜福重jct間(延長5.0km)を24年度までに整備する方針です。
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▲prc中空床版橋 |
- ――コスト縮減や新技術等の取り組みについてお聞かせ下さい
松木
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2工区では、建設費のコスト縮減を図りつつ景観性に優れた鋼開断面箱桁橋と、鋼コンクリート合成床版、亜鉛・アルミ金属溶射、およびprc中空床版橋などを採用しています。
通常の鋼製箱桁橋は上下左右に4面の鋼板で出来ているのに対し、鋼開断面箱桁は上フランジ(上面鋼板)を床版に置き換えた逆台形の箱型断面となります。これにより、従来の箱桁に比べて主桁重量や材片数が軽減でき、全体の工事費を大幅に縮減できます。また、鋼コンクリート合成床版は、長期耐久性がpc床版と同等以上の性能を有する工法です。底鋼板は、そのせん断剛性によって擬似閉断面を形成し、開断面箱桁特有の架設時の不安定性を解消します。開断面箱桁に作用する合成前死荷重に抵抗する引張り材として機能するとともに、床版コンクリートの型枠としても機能し、経済性や工期短縮に寄与します。
橋梁の防錆には、亜鉛・アルミ金属溶射を採用しました。これは「百年橋梁」の考え方に立ち、施工性や景観上の要素も加味してライフサイクルコストの低減、特に維持管理コストの縮減を可能にします。
また、従来の円筒形鋼製内型枠を使用したpc中空床版橋に代わり、多角形発泡スチロールボイドを内型枠として使用した新しいprc中空床版橋を採用しました。この工法は断面効率の向上により、適用支間を延長することができるため、橋脚数減によるコスト削減が可能となること、内型枠形状を多角形とすることで断面効率の向上と自重が軽減されること、さらにprc構造採用による必要pc鋼材量が少なくなり、コスト削減が図られるなどの特徴が上げられます。
- ――2工区において苦労された点は
松木
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下部工工事では、丘陵地やため池が多く、大型工事車両の進入困難箇所が数多くあり工程管理に厳しいものがありました。上部工工事では、鋼開断面箱桁の組立ヤードに制約を受け、地組組立後のクレーン架設工法とオールステージング上での組立工法を併用しました。地組時、溶接時、架設時等においてキャンバー管理に苦労するとともに、現場溶接のための環境整備、現場溶射ブラスト作業時の防塵や騒音対策にも苦労しました。また、鋼コンクリート合成床版では、各社のタイプが異なっており、架設時、コンクリート打設時の結果が橋面の出来栄えに影響しました。prc中空床版では、工期短縮に向け、支保工、型枠、鉄筋工事を先行させた結果、最盛期には、一現場の作業員が70〜100人となり現場管理に苦労しました。
全体を通じて、2工区は住宅地が多く、生活用道路が工事用道路と交差する箇所もあり、通学や地元車両通行の安全等に特に気を配りましたが、大きなトラブルもなく今日に至っております。
- ――19年度完成目途の3工区・堤〜野芥間は
松木
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2工区までは起伏ある住宅地などを先行買収しながら施工ヤードが確保できたのですが、3工区、4工区の場合は現道に面した箇所が大部分であり、施工ヤードが非常に手狭です。国道202号福岡外環状道路が供用中で、施工ヤードの確保が難しく、鋼開断面箱桁橋の施工が困難であることから、狭小箱桁橋とpc少主桁を採用しました。
狭小箱桁橋とは、箱断面の幅を従来箱桁より狭くし、一方フランジ板厚を厚くして箱内構造を簡略化(縦リブ及び横リブを省略)し、また合成床版を用いて床版支間を大きくすることによって床組構造を省略して合理化することでコスト縮減を図った箱桁橋です。pc少主桁の採用と併せ製作・架設費の低減と工期短縮が可能となりました。
- ――福岡高速道路におけるetcの導入計画は
松木
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平成14年3月に九州縦貫自動車道、福岡icおよび太宰府icの合併料金所において運用開始しています。また、昨年7月から福岡高速全料金所のetc設置工事を着手しており、本年4月から試行運用開始予定です。etcの導入により、ノンストップ通行による料金所通過時間の短縮やキャッシュレス化が実現し、お客様の利便性や快適性の向上が図られるとともに、料金所混雑の緩和、料金所周辺の騒音、排気ガスの減少などの効果が生じることになります。当公社では、利用頻度や曜日・時間帯、利用区間など、利用の仕方に応じた多様で弾力的な料金施策を実施することとしていますが、料金施策による混雑緩和や施設の有効利用等が図られ、更なる利用促進につながるものと考えております。
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▲北九州高速1号線長野出入口(小倉東ic)付近 |
- ―― 次に、北九州高速道路と九州縦貫自動車道、小倉東ic直結事業についてお聞きしたい
松木
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この事業は3月16日開港の新北九州空港へのアクセス強化を図る目的で、16年3月より整備を進めてきました。具体的には、北九州高速1号線長野ランプ部と西日本高速道路鰍フ九州縦貫自動車道、小倉東icを直結するonランプ(延長240m)とoffランプ(延長400m)の新設工事で、本年1月に工事が完了しています。西日本高速道路鰍ェ整備を進めていた東九州自動車道(北九州jct〜苅田北九州空港ic)とあわせて、2月26日に開通しました。
- ――期待される整備効果は
松木
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新北九州空港へのアクセスとして、jr小倉駅周辺から新空港に向かう場合、都市高速道路から小倉東icに直結することで定時性が確保され、一般道を利用した場合に比べて、約17分の時間短縮が図られます。また、高速道路ネットワークが整備されることで時間交流圏の拡大、地域間交流の促進が図られます。
特に新北九州空港については、連絡道路である海上橋が無料、駐車料金も24時間390円と、非常に使い勝手の良い空港になっていますが、軌道系の公共交通機関の乗り入れがない現状では自動車交通が大変重要です。
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▲夜間一括架設状況 |
- ――今回の工事で苦労された点は
松木
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本工事のoffランプは、既設の長野ランプと幹線道路である国道10号バイパスに挟まれた、非常に狭いエリアに新設ランプを建設するため、施工ヤードを如何に確保するかが工事を円滑に進める鍵となりました。現況の交通の流れを確保するため、当初は工事の大半を夜間施工として計画したので、工期は非常に厳しいものがありました。そこで、道路管理者の国交省と西日本高速道路鰍フ協力により、既存の小倉東ランプのノーズを約20mセットバックし、小倉東ランプのアイランド内に国道10号を切り廻すことで施工ヤードが確保できました。このお陰で日中も施工できるようになり、工期短縮、コスト縮減が可能となりました。
また、offランプは国道10号バイパスを横断する構造で、この区間約50mの桁架設には、重量台車と油圧ジャッキを用いた一括架設工法を採用しました。ランプ橋であるため全幅員が6m程度しかなく、非常に細長い構造であること、また国道10号の横断をできるだけ短くするためr=200mの曲線桁になっていることなどから、安全かつ迅速な施工が確保できるよう架設時の安定照査を入念に行い、施工計画を決定しました。架設時は国道10号を夜間全面通行止めにしましたが、「小倉東ランプ入口は閉鎖しない」、「近隣の住民・商業施設の生活道路である側道へのアクセスを確保する」などの厳しい施工条件のもとで、現場に携わるすべての関係者のチームワークにより、現況交通への影響を最小限に抑え、無事施工を行うことができました。
福岡北九州高速道路公社
福岡高速5号線建設工事安全連絡協議会
北九州高速道路工事建設工事安全連絡協議会
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