北海道発未来着 第2回

21世紀を展望する

(前号から続く)

4.21世紀の展望

 東西冷戦終了後、次なる世界的な枠組みが定まらないまま漂流しているとも言える時代が続いている。国内的には、政治・経済・社会おまけに日本列島そのものまでが混沌としたカオス的現象の連続である。昨年の阪神大震災、地下鉄サリン事件、金融機関の諸問題、いじめによる自殺、銃犯罪の増加などはどうも一過性とは思われないある種の不気味さを感じさせる。しかし、カオスの時代とは言っても、ある程度の確率で予測出来る世界そして日本の将来展望もある。次回以降予定している各論の前提条件としてここで整理しておく。

  1. 世界的には人口の急増、一方我が国では人口減少と超高齢化社会の到来
    世界の人口は21世紀半ばには100億人を突破すると言われている。これに対し、我が国は 図−3総人口の推移:「21世紀の国土のグランドデザイン」より)図−4主要先進国における高齢者人口の比率の推移:「21世紀の国土のグランドデザイン」より) に示すように、10年ほどで人口のピークを迎え、その後は減少の一途をたどり、2050年には1億人を切る可能性すらある。それと同時進行する形で、世界でも例を見ない超高齢化社会に突入することになる。そのような時代には日本人の国民性・価値観すら大きく変化しているかも知れない。団塊の世代としてはひとごとではない問題である。
  2. 食料とエネルギーの需給ギャップの拡大
    世界的な人口増加と地球的環境問題の影響により、食料確保の問題は今とは比べものにならない程悪化する可能性が残念ながら高い。現在でも食料自給率は46%(カロリーベース)と先進国の中でもとりわけ低く、なお且つ他国が自給率を上げている中で、さらに低下傾向が続いている (図−5主要先進国の食糧自給率の推移(カロリーベース 農林水産省 食糧需給表から):「北海道開発グラフ1995年秋季号」より)参照)。 また、農林水産省の予測でも2010年には穀物の国際価格が1992年の2倍に上昇する可能性があるとされている。
     エネルギー確保の問題も同様に不安材料であることは言うまでもない。我が国においては現在、化石燃料を主要なエネルギー源としているが、長期的に見れば資源の枯渇の心配があるほか、我が国への資源供給先が中近東に大きく偏っていることにも安定供給の点で不安がある。この対策として、資源供給先の多様化、新しいエネルギーの研究開発、原子エネルギーの多面的活用などが考えられなければならない。
  3. 人・物・情報の国際的交流の飛躍的増大
    将来の国際交流は現在とは比べようもないほど増加することが予想されている (図−6我が国の人流面における国際交流等の水位と見通し(試算):「21世紀の国土のグランドデザイン」より)参照)。 また、超音速機の近未来における就航も見込まれており、アジア各国は将来を見越してハブ空港整備を精力的に進めている。これに対し我が国の立ち遅れは明白であり、早期整備の必要性について各方面から指摘されているところである。北海道は国際地理的環境においても、新千歳空港の整備状況においても、我が国の中ではハブ空港として極めて優位な条件を備えたところである。集荷・集客の少なさを克服することが課題である。
  4. 東アジアをはじめとする中進国、発展途上国の雁行的経済発展
    一人当り国民所得で比べると、 図−7一人当たりgnp実力上位10カ国・地域:「北海道新聞 95/12/31」より) に示すように、すでに我が国は購買力平価では香港、シンガポールに追い越され、将来的には 図−8アジア諸国・地域と米国の一人当たり国民所得:(シンガポール通産省による予測。カッコ内は現在の米国の水準、2万ドルに達する年)「北海道新聞 95/12/22」より) のように、21世紀中ごろまでに多くのアジア諸国が現在のアメリカ並みの水準に達するという予測さえ出されている。それゆえ、アジアが世界の経済成長センターと期待されるのである。
     北海道は地理的に従来の経済パワーである欧米とこれからの経済パワーとなるアジアを結ぶ中間地点にある。国際航空路を見ても、太平洋の大圏航路を見ても、欧米から我が国さらにはアジアに向かう場合すべて北海道の周辺を通っている。さらに北極海航路という話題まで出るようになると、もはや北海道は我が国の最北の地ではなく、世界に開かれた我が国そしてアジアの玄関口となる地である。
     以上のほか、高度情報化社会の到来、地球的環境問題の深刻化、地方の自立化傾向の拡大、規制緩和・行政改革・地方分権の動きを反映した現行諸制度の変革、首都圏から東海地方にかけて大地震発生の危険性が年々高まることなどが予測される。


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