北海道発未来着

オリンピックにに思う

オリンピック効果の偉大さ

おかげで寝不足が続いたアトランタオリンピックが終了し、冷夏の中でのひとときの夏休みも終わり、秋の気配が濃厚となってきた頃ではないでしょうか。そこで少し時をさかのぼって、この世界最大とも言えるイベント“オリンピック”の効果を考えてみたい。

6月下旬長野で全国会議があり、初めて信州の地を訪れた。言うまでもなく、長野は1998年第18回冬季オリンピック開催の地である。町中が建設ラッシュで、競技施設はもちろん、北陸新幹線や高速道路などの交通施設、そしてお決まりのホテルといった具合に、行くところすべてで工事中である。よそ者の筆者から見ても、オリンピックがなければまだまだ着工していないと思われるような工事もオリンピックの御威光のせいで着々進行している。
 思い起こせば、1972年札幌でアジア初の冬季オリンピックが開催された。個人的にも末端の競技役員をしていたので、強い印象として残っている。オリンピック開催前の札幌は人口が100万足らずで、まさにマイカー時代が始まろうとしていた頃であった。市内交通の主役は路面電車とバスであり、通学に毎日利用していたものであった。その札幌に東京、大阪、名古屋に次ぐ全国4番目の地下鉄が造られ、さらに千歳までの高速道路も造られた。札幌はその2、3年の間に大きく変貌した。偉大なオリンピックのおかげで。もし、オリンピックがなければ、現在の札幌はなかったのではないかとさえ思う。そして今、長野が同じように変貌しようとしている。
 長野県が作っている資料により、オリンピック効果を見てみよう。まず、北陸新幹線であるが、高崎で上越新幹線から分岐し、長野までの延長126qについて、現在平成9年秋開業を目指し工事が進んでいる。図−12は新幹線開通後の所要時間の変化であるが、東京〜長野間が1時間余り短縮され1.5時間となる。一方、高速道路であるが、表−6に示すように、長野県内の高速道路供用延長が現在の252.2q(供用率57.7%)から、オリンピック開催までに64.5q増え、316.7q(同72.5%)となり、全国平均を大幅に上回るとともに、東京とは2路線の高速道路で結ばれることとなる。その結果、図−13に示すように、長野市と主要都市との所要時間が大幅に短縮される。まさにオリンピック様々である。供用率わずか19.8%の北海道との格差は一段と大きくなる。

表−6 高規格幹線道路整備状況の比較(1995年度末、単位:km、%)
全国 長野県 北海道
計画延長 14,000  436.9  1,816 
供用延長(供用率) 6,565(46.9) 252.2(57.7)
h9 316.7(72.5)
359(19.8)

▲図−12 北陸新幹線の効果

▲図−13 長野市と主要都市間の所用時間

そこで、停滞する北海道の起爆剤として、再度オリンピックを誘致することに思いが行くのである。過去の17回の冬季オリンピックについて調べてみると、2回開催しているのが3都市もある。サンモリッツ(1928、1948)、レークプラシッド(1932、1980)、インスブルック(1964、1976)がそれである。冬季オリンピックという性質上、自然環境との共存の問題が常に伴うため、既開催地の方が問題が少ないとして有利になるのである。次回北海道で開催するとしたら、長野との間隔を考慮すると、2014年(第22回)以降の大会が適当ではないだろうか。その時は、前回のような札幌中心ではなく、北海道各地での広域開催が望ましい。アジアのウィンターリゾートとして、もっとも可能性があるのは北海道であり、そのために、2回の冬季オリンピック開催という実績は格好のセールスポイントとなる。その際はオリンピック・ムーブメントに一石を投じるような歴史にに残るものであって欲しい。年老いたオリンピック経験者として、再度間近に見ることを念じている。


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