〈建設グラフ2001年5月号〉

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文教施設(大学)紹介

基本コンセプトはユニバーサルデザイン

多様なニーズに応えるフレキシブルな空間を構成

東北大学 (川内)総合研究棟

東北大学は川内キャンパスに総合研究棟の建設を進めているが、本研究棟は文系4学部の不足面積の解消、既存研究棟改修時の暫定的な移転先を確保するのが目的。
建物は、今後の多様な社会の変革にも柔軟に対応できる普遍性を有するよう、平面形態は出来る限り単純簡潔とし、設備システムなどの更新にも柔軟に対応でき、また構造的にも明解なものとなっている。
外部空間の構成−キャンパス景観・風景に配慮したデザイン
新研究棟は、市内からの景観に調和し、背景となる植物園の一帯の緑と協調し合うように落ち着いたデザイン。低層部はヒューマンスケールなデザインとし、彫りの深いファサードとして高層建物から受ける圧迫感を和らげ、かつ歴史・伝統を受け継ぐデザインを追求。高層部は水平ラインを基調とし、軽快で安定した外観を施し景観形成に配慮している。
また、屋上設備などが直接眼に触れることのないよう、ルーバーで高さを緩和しながら目隠し帯を設置。内部機能を外部デザインにも反映させるよう、中央部に配置したリフレッシュルーム部分は局面形状のサッシ・アルミパネルを使用し、開放的で柔軟な形態を表現している。
同時に穏やかな起伏を持たせた中庭空間を形成し、ベンチ・木陰など小空間を点在させ、親しみやすく潤いのある個性的で豊かな屋外環境の形成を目指している。
内部空間の構成−永続性のある建築デザイン
フレキシブルな空間構成(長大スパン・多様な設備対応など)・維持管理を容易にする建築形態・使用材料に考慮するなど、将来にわたり機能変化に十分に対応出来る工夫を行い、従来の空間利用の寿命を越える性能を持たせる。そして平面構成を中央コア形式とし、共通部分を簡潔にまとめることにより、より広い空間を確保。また各室は間仕切りのないまとまったオープン空間は開放感があり、開かれた大学をアピールしている。
この他、各階にリフレッシュルームを配置し、ゆとりとコミュニケーションの場を提供。低層部から中層部にかけ学生が利用しやすいように研究室・講義室を、高層部は教官室、最上部には100人近く収容できる大会議室を配置している。
構造・設備−経済性・工期の短縮化を実現
構造計画では、居住スペース内に柱を設けない大スパン架構を採用。柱はsrc造梁をs造の合成梁とする複合構造。これは各構造の特徴を生かした合理的な構造形式で、経済性・工期の短縮化をはかった。
また水廻り・エレベーターシャフト・設備スペースなどのコア部分を簡潔にまとめ、その他の居住空間を出来るだけまとまりよく整理し、機能変化によりよく対応できる形態とした。設備スペースは各階の居住形態にアクティブに対応するため、室内中央部・両窓側サイドに設備ルートを床面天井面に設置している。
平成14年3月に竣工予定。

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