建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2005年12月号〉

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東京湾岸道路と第一京浜を結ぶ八潮共同溝

VE提案でワンパスセグメントを採用

国土交通省東京国道事務所 八潮共同溝

▲共同溝完成断面図
■八潮共同溝II期工事事業計画の概要
東京国道事務所は、国道15号第一京浜道路と国道357号東京湾岸道路に整備された共同溝を環状方向にネットワークさせる八潮共同溝の整備を進めている。都心から放射状に整備されている共同溝は10路線あるが、国道357号の共同溝だけが他の路線に連結されない状況となっていた。
八潮共同溝は、このような状況を解消し、環状方向の共同溝のネットワーク形成を実現することでライフラインの安全性・信頼性の確保と利便性の向上を図るものだ。計画路線は、北品川2丁目交差点から八潮1丁目までの約2,900m。
現在はU期工事が施工されており、I期工事で施工済みの新東海橋交差点を起点に、海岸通りを南下し、八潮橋交差点で東に急カーブして京浜運河下を横断。八潮1丁目の発進立坑を終点とする延長2,238mの区間。
共同溝の収容物件は、東京電力梶ANTT東日本梶A東京都下水道局の施設が入溝する予定だ。
▲シールドマン
■急曲線に対応できるシールドマシンで掘削
トンネルの掘削は泥水加圧式シールド工法が用いられている。これは、マシン先端のカッター面板が回転して地山を削り、掘った土は切羽から地上の処理プラント間を循環する泥水と一緒に地上までポンプで圧送し、地上の泥水処理プラントで土と水に分離する工法だ。
掘り終わったトンネルの内部には、コンクリートブロックのセグメントを組み立て、トンネルを築造する。
だが、八潮共同溝U期工事で掘削されている地山は、石を多く含んだ砂磯(最大磯径250mm程度)から、粘土が固く締まった土丹と呼ばれる地層まで、比較的固い地盤が主体となっている。そのため、工事で使用されるシールドマシンは、この固い地盤の掘削に対応した特殊強化先行ビットの採用と、曲線半径35mの急曲線施行にも対応できる中折れ式機構を導入している。
▲圧搾併用中圧型フィルタープレス
■入札時・契約後VE提案でコスト縮減
この二期工事における特色の一つは、入札時と契約後にve提案をしたことである。入札時に建設汚泥量(産業廃棄物)の低減と施工日数の短縮について、提案を受け付ける入札時ve方式(総合評価方式)で、その試行工事として行われている。
そこで、施工に当たっている大林組と鴻池組の共同企業体は、建設汚泥量の低減について、一般的な低圧型フィルタープレスに代えて圧搾併用中圧型フィルタープレスを採用することにより、二次処理土の含水率を下げる方式を提案し、施工している。
契約後のVE提案では、通常は6分割であるセグメントを、5分割のワンパスセグメントを採用することで分割数を低減。これによって継手延長が低減されることから、止水性が向上する一方で、施工日数も短縮化が可能となり、コストの縮減が実現される。同時に、ワンパスセグメントにより、危険の伴う高所作業が回避されるとともに、施工日数の短縮で沿道環境への影響も軽減されることになった。
▲セグメント組立状況
▲急曲線部
▲発進坑口部
■ワンパスセグメントの技術的特色
セグメント組立の際、従来型のセグメントは位置決め〜ボルト締結の2工程だったが、このセグメントは、水平コッター式セグメントのピース間継手を「先付水平コッター式継手」にすることで、位置決めと同時に締結も完了する「ワンパス施工」にした。水平コッター式セグメントの力学的特性はそのままに組立速度の向上と、セグメント組立装置の簡略化が実現する。
ワンパスセグメントの継手構造は、先付け水平コッター式継手とプッシュグリップ式継手で構成される。
セグメントピース間継手に用いる先付け水平コッター式継手は、締結補助部材(バックアップ材)を取付けた連結金物(以降h型金物と呼ぶ)を、埋込み金物(以降c型金物と呼ぶ)の片側に予めセットしておき、トンネル軸方向にスライドさせることで締結を完了させるものである。
このC型金物は、セグメント継手断面の中立軸に対称の位置に配置されるため、正曲げはもとより負曲げの作用応力に対しても耐性が強く、内水圧対応としても十分な強度を持っている。
セグメントリング間継手として用いるプッシュグリップ式継手は、楔を応用したピン方式の継手で、挿入側のピンボルトを受入側の金物に挿入するだけで締結を完了する。
以上のように、ピース間およびリング間とも従来型のセグメント組立作業のようなボルトを使用した組立作業が不要で、シールドマシンに通常装備しているセグメント組立用エレクターとシールドジャッキの操作だけで締結が完了するため、セグメント組立時間が短縮できるとともにトンネル軸方向の操作のみで締結できることから、セグメントの自動組立に適している。
しかも、ボルトボックスがなく、継手金物の露出がない内面平滑構造であるため、防食や平滑性確保となる二次覆工を省略することが可能となるために、コストの低減につながる。
更に、従来のボルト式継手では、外側のシール材が破損した場合、ボルト孔より内部に漏水が生ずる可能性があったが、この水平コッター式セグメントの場合は、ボルト孔などの継手が露出していないため、内外面に2段の水膨張性ゴムシールを配置することで高い止水性能を確保できる。
■軌道と通路を完全分離
この他、軌道装置の安全対策においては、縦断勾配が5.0%と、通常軌道装置の限界勾配となっていることから、安全性向上に向けて軌道と坑内通路とを完全分離式にしていることも、一般的なトンネル掘削の現場とは異なる特色だ。
その軌道で使用されるバッテリー機関車は、安全対策のため運転速度を自動的に制御できるサーボモータ付き機関車であり、車輪には高摩擦抵抗車輪を採用。その他、サーボブレーキ、油圧ディスクブレーキ、負作動電磁ブレーキ、トラックブレーキなどの多重制動方式や、ss無線による自動運転、前方監視力メラ、障害物バンパー、非常停止釦、過速度停止装置といった各種安全装置も完備したものとなっている。
環境保全対策としては、発進立坑に近隣する八潮団地などの周辺環境に配慮し、騒音・振動などの影響を低減させるため低周波音公害対策型防音ハウスを設ける。また、トンネル掘削に伴う建設発生土は、東京都港湾局が実施する東京港の埋め立て工事で有効利用されている。
▲発信基地遠景 ▲市民見学会 ▲発信基地近景
▲発進立杭シールドマシン投入 ▲棒音節部夜間ライト

八潮共同溝2期工事


●八潮共同溝2期工事/大林・鴻池特定建設工事共同体

東京都渋谷区神宮前3丁目38番11号
TEL.03-5414-3471




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