建設グラフインターネットダイジェスト
〈建設グラフ2005年8月号〉
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保健・医療・福祉の有機的連携のもとに一貫した小児高度医療と障害児療育を提供

超早期からのリハビリテーションやハイリスク胎児・新生児に対する特殊な周産期医療の提供など機能を充実

北海道小児総合医療・療育センター(仮称)

北海道は、小児高度医療と障害児療育の機能を一体化した、「北海道立小児総合医療・療育センター(仮称)」の整備を進めている。
【背景】
本道では、小樽市銭函にある「小児総合保健センター」が、道内唯一の小児専門病院として北海道全域を対象に高度な総合医療を担い、また、札幌市手稲区金山にある「札幌肢体不自由児総合療育センター」が、道央・道南地域における総合的な障害児療育を担っているが、経年による施設の老朽化が進んでいるのに加え、小児疾患の多様化・高度化や障害の重度・重複化などが進み、利用者のニーズに十分応えられなくなってきている。
こうしたことに対応するには、保健・医療・福祉・教育などが密接に連携した体制整備が必要であるということから、それぞれのセンターが担っている小児高度医療と障害児療育の機能を統合し、「北海道立小児総合医療・療育センター(仮称)」を設置することとしたものである。
同じ建物内に小児病院と福祉施設が同居している例はあるものの、小児高度専門医療と障害児療育の機能を統合し、同じ組織において周産期から一貫して小児高度医療と障害児療育を提供する取り組みは、全国でも初めての試みとなる。
【機能の充実】
機能統合により、医療と療育が連携した訓練やハイリスク新生児などに対する超早期からの医学的リハビリテーション機能を充実し、子どもの障害の除去・軽減を図る。
診療科目は、従前の11科目に加え、産科、形成外科、泌尿器科を新設し、高度な外科系治療が可能な小児病院の特性を活かしたハイリスクの胎児や新生児に対する特殊な周産期医療を提供するとともに、先天奇形・変形や腎臓疾患などに対応できる機能を充実する。
▲北側
▲南側
【建設地】
建設地は、札幌市手稲区金山1条1丁目の札幌肢体不自由児総合療育センター隣接地。国道5号線に面し、手稲インターチェンジや銭函インターチェンジを経由して札樽高速自動車道のアクセスが良好であることに加え、jr星置駅も近くにあることから、遠方から利用する家族の利便性も高い。
【施設の規模・構造】
施設の建築延面積は、24,616m2(内訳は、施設18,116m2、屋内駐車場6,500m2)で、地上4階地下1階建の鉄筋コンクリート造(一部鉄骨鉄筋コンクリート造)となっている。
【子どもの目線に立った環境づくり】
施設は、療養中の子どもたちが、遊び、勉強し、食事をする、大切な生活・成長の場であることから、子どもの目線に立って、子どもたちの発達や情操を育む環境づくりを進める。
【子どもや家族に対する施設面での配慮】
子どもと家族のために、デイルーム、プレイルームなどコミュニケーションスペースを多く確保し、スペースや採光を活かした明るく開放的な空間を整備する。
また、遠方から通院する家族のために、重い疾病や障害がある子どもを抱えての移動の負担が軽減されるよう、施設全体のバリアフリー化をもとより、エレベータや、受付・診察室・検査室などの配置を工夫している。
さらに、火災などの非常時において、車いすやベッドで移動をしなければならない子どもたちが安全で確実に避難できるよう、耐火構造のエレベータや、炎や煙をシャットアウトする防火区画を設けて、避難経路の確保を行うなど、安全面にも十分配慮している。
【景観や環境に対する配慮】
建物は低層化し、3つのブロックに分割することにより、スケール感を抑制している。外装材にはレンガを使用し、自然豊かな周辺地域に調和した外観とした。さらに傾斜地を利用した駐車場を地下に設置し、景観に配慮した。
また、環境面では、建物駆体の劣化と熱損失が少ない外断熱工法や、環境負荷の少ないコ・ジェネレーションシステム(熱供給発電方式)を採用し、環境やライフサイクルコストに配慮している。
【各フロアの配置】
地下1階には、全面屋根付きの駐車場、電気・ボイラー設備等の機械諸室のほか、供給・サービスゾーンとして、食堂、売店、理容室、薬局を配置する。
エントランスのある1階には受付、外来(診察・訓練)、臨床検査室、放射線撮影室、相談室のほか、事務室などの管理部門を配置する。
2階は療育部門として110床を配置する。室は小児病室、母子入院病室、訓練室、プレイルーム、デイルーム、読書スペース、食堂等がある。なお、2階部分は、手稲養護学校に通学する子どもたちのために、渡り廊下で繋ぐ計画である。
3階は小児医療部門として、105床を配置する。室は新生児病室、小児病室、集中治療室、母性病室、手術室、プレイルーム、デイルーム、学習・図書室、食堂等がある。屋上となる4階にはへリポートのほか機械室を配置している。
建物の竣工は平成19年2月、オープンは同年秋を予定している。
▲エントランス ▲食堂 ▲読書コーナー
北海道立小児総合医療・療育センター(仮称)改築工事
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