建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2005年8月号〉

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福岡都市圏の秩序ある発展に貢献する大規模交通システム・福岡外環状道路

国道、都市高速道路、地下鉄、共同溝が併走し、福岡都市圏をネットワーク

国土交通省 福岡国道事務所 福岡外環状道路

▲福大トンネル(空撮)
一般国道202号福岡外環状道路は、西九州自動車道や福岡都市高速道路など、広域的な高速道路ネットワークと一体となって福岡都市圏の外郭を形成する延長約16.2kmの幹線道路である。福岡市西南部地域の慢性的な交通混雑を緩和し、快適で潤いのある都市空間・生活空間を提供するもので、有料道路や市営地下鉄・共同溝などが併走する、全国的にも例を見ないビッグプロジェクトである。
西南部の都市機能を強化
福岡市西南部地域は、交通施設等の都市基盤が整備されないまま都市化が進行した地域であり、交通量の増加に伴い慢性的な交通混雑が発生するなど、多くの交通問題が生じている。特に朝夕のラッシュ時には車の走行速度が極端に低下し、一般的な自転車の走行速度と同程度の状態だ。
一方、福岡市では一極集中型の都市構造からバランスのとれた多核的な都市構造への転換を目指しており、南部・西部の副都心や生活中心拠点を結ぶ都市圏広域ネットワークの構築が求められている。
これらの交通問題を解消し、都市圏の活性化に貢献する幹線道路として整備されているのがこの「福岡外環状道路」である。昭和48年度に事業化され、昭和52年度から用地買収に着手、延長16.2kmのうち、現在までに約7.9kmを供用している。
平成17年度は春日市須玖北地区、福岡市南区の井尻・日佐・的場・野多目・堤地区の改良・改築工事及び福大トンネル(仮称)新設工事を鋭意推進する。
全線の開通は平成20年度を予定している。
整備効果
このネットワークの整備により、福岡市西南部地域の慢性的な交通渋滞が緩和され、快適な走行と安全な交通環境が実現する。さらに都市高速道路と併せて福岡都市圏の環状道路が形成されることで、地域間交流の活発化が期待される。
また、道路空間に広い歩道と緑豊かな植樹帯が設置されることで、潤いのある都市空間・生活空間を提供する。
地下には都市生活に必要な水道、電気、ガス、電話等の公益施設を収容する幹線共同溝や、地下鉄が整備される一方で、地上では車のスムーズな走行と人々の快適な歩行を実現する。
▲共同溝シールド(坑口部) ▲共同溝シールド(坑内部)
▲福大トンネル1工区 ▲福大トンネル3工区
福大トンネル(仮称)
福大トンネル(仮称)は、一般国道202号福岡外環状道路と、福岡高速5号線の両事業における唯一のトンネルであり、同地区で施工中の共同溝、福岡市高速鉄道3号線(地下鉄)の各トンネルと一体的・効率的に整備を進めている。
工事は市街地にて建設されたトンネル(共同溝・地下鉄)の真上約8.0mに接近して別のトンネルを構築するもので、事例の数少ない難工事である。
トンネルは福岡市城南区片江〜梅林間に位置し、共同溝および福岡市高速鉄道の各トンネルと立体的に配置される。トンネルの全長は一般国道202号が約870m、福岡高速5号線が約762m、工事規模は掘削土量約40万m3、最大掘削深さ約17m、使用するコンクリート量約9.2万m3である。
福岡大学のキャンパス内を通過する延長約800mは、開削トンネルによる大断面ボックスで計画している。施工にあたっては、大学構内の限定された工事区間での仮設計画、地下水問題、近接構造物問題などのほか、コスト縮減を念頭においた様々な構造検討および対策工法を行った。
▲井尻地区擁護壁掘割構造
▲春日地区改良舗装工事
特に市街地にて建設された既設トンネル(共同溝・地下鉄)の真上に福大トンネルが近接していることから、既設トンネルに対する対策検討、安全管理については最善の技術を駆使して工事管理を行っている。
トンネル本体の施工方法は、工場で製作されたプレキャスト部材(側壁・頂版)を現場で門型に組み立て、底版、側壁および頂版に現場打ちコンクリートを打設して一体化する、現場合成式ボックスカルバート工法を採用した。この工法の特徴としては、工期の短縮、現場作業の効率化、廃棄物の抑制による環境負荷の低減のほか、工場製作のため、品質に優れていることが挙げられる。
工事は4工区に分かれて施工を進めており、平成17年3月末現在のトンネルの設置率は77.6%。国道部分の開通は18年春を予定している。
福岡外環状共同溝
福岡202号外環状共同溝は、一般国道3号板付共同溝から分岐し、福岡市西部に延びる全長16.2kmの幹線共同溝。道路の保全、ライフラインの信頼性確保を目的に整備を進めているもので、水道・電力・電話の3企業の公益施設を一体的に収納する。
工事は一般国道202号外環状道路及び福岡高速5号線と一体的・効率的に整備を進め、現在は1工区、2工区に分かれてシールド工法で施工している。
第1工区シールド工事は、板付共同溝からの分岐地点である福岡市博多区西月隈〜春日市須玖北間、第2工区シールド工事は福岡市南区野多目〜城南区堤間を施工する。
第1工区シールド工事のトンネル本体は直径5.7m、全長2,770m、工事に際して建設する立坑は8基(発進立坑1基、中間立坑6基、到達立坑1基)である。一方、第2工区シールド工事のトンネル本体は直径4.05〜5.10mm全長3,777m、両工区ともトンネル部はシールド工法で施工する。
工法の選定にあたっては、シールドトンネルの機能、施工および覆工技術の向上、二次覆工の必要性等について検討し、二次覆工を省略、約15億円のコスト縮減を図った。加えて掘削断面の縮小による掘削土量の縮減、立坑の小規模化などによりコスト縮減を図っている。
この整備により、交通渋滞や騒音振動の原因となる道路の掘り返しを抑制し、地震等の災害に強いライフラインを実現する。さらにライフラインが収納されることで貴重な道路地下空間の有効利用が図られることになる。共同溝の完成は平成19年度を予定している。
▲地元小学生の見学
(共同溝シールド坑内)
▲福大トンネルprルーム
福岡外環状道路の整備に貢献
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