建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2005年6月号〉

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人々に感動の空間を与える日比谷共同溝

東京ジオサイトプロジェクトで演出される地底空間

国土交通省 東京国道事務所 日比谷共同溝

東京国道事務所は、東京23区内での共同溝整備を進めており、着実にネットワークを構築している。すでに国道1号、4号、6号、14号、15号、17号、20号、246号、254号、の放射道路と、東京湾岸道路357号の一部を完成させており、現在は1号、14号、15号、17号の未整備区間と、15号と357号の接続区間に着手している。その中でも、放射道路が集結する中心部に位置する国道1号日比谷共同溝は、人と車の往来が多い都心部ということもあり、施工には様々な技術的工夫が施されるとともに、共同溝事業のprについて新しい取り組みが行われている。
共同溝の整備目的と基本理念
道路の地下空間は、電話、電気、ガス、上下水道など、日常生活に欠かせないライフラインが収容されているが、都市化に伴ってライフラインへの需要も増大し、その施設拡充、修繕などのための路上工事の約8割が公益事業者が実施する占用工事である。例えば、平成14年度の都内23区における道路工事の内訳を見ると、道路工事22.7%、電力13.9%、水道12.9%、ガス11.6%、下水道9.6%、電話7.0%となっている。
このため、交通が阻害され渋滞が発生する原因となり、道路利用者や沿道住民の生活にも悪影響を及ぼしている。
その点では、共同溝は地中に散在するそれらの施設を一つに集約することにより、道路の掘り返しが減少し、工事に伴う振動、騒音からも解放され、道路損害の抑制と交通渋滞の緩和に大きく寄与することが期待される。
また災害に強く、例えば阪神淡路大震災の際にも、水道、電気その他のライフラインが損害を受ける一方で、共同溝内の施設は被害を免れた実績から、その安全性が改めて再認識された。
『東京ジオサイトプロジェクト』
日比谷共同溝の現場では、2003年に共同溝法制定40周年を記念し、事業者である国土交通省と、前田建設を筆頭とする施工会社らが「東京ジオサイトプロジェクト」制作委員会を組織。様々な共同溝事業のprを展開してきた。同年10月には、巨大な立坑を能楽堂に見立てた「地底能楽堂計画」を実施。狂言師・野村萬斎氏による狂言「磁石」の実演と、荒俣宏氏の司会で能楽師・宝生英照氏を交えてのトークショーが行われた。当日は、100名の招待枠に対し、応募者が1,158人にも上った他、野村萬斎氏の珍しいヘルメット姿を収録しようと、30以上のマスコミが詰めかけ、その模様はイギリスbbcを通じて世界にも報道された。
これを契機として見学希望者がが増加し、高齢者の方々や女性なども含め、5,000人以上の見学者を受け容れてきた。
また、交差点地下を博物館として活用した「地底博物館計画」や、地底トンネルを癒し空間として活用した「やすらぎトンネル計画」、壁面をメディアとして活用する「フェンスラップ計画」などに着手。そして、2004年4月には、掘削の主役となるシールドマシンを主軸に「都市の創られ方を知る」をコンセプトとした「沈黙のシールドマシン展」と、「日比谷共同溝シールドマシン発進式」が行われ、いよいよ本工事に着工となった。発進式ではわずか2日間で1,800人もの方々が参加した。
こうした様々な取り組みは各方面の注目を浴び、これまでにテレビ、ラジオ、雑誌、新聞などのマスコミに幾度となく報じられると同時に、「東京ジオサイトプロジェクトホームぺージ」のアクセス数も900万件を越えている。
▲地上から螺旋階段を降りると、
 地下10mおよそ1200m2の巨大空間が広がる
 「地底博物館」
工事概要
施工現場は港区虎ノ門1丁目から千代田区日比谷公園にいたる一般国道1号下で、虎ノ門立坑を発進立坑とし、桜田門立坑を経て、日比谷立坑に至る延長1,424mのトンネル(セグメント内径6,700mm)を、泥水式シールド工法で施工する。したがって、用いられるシールドマシンは、口径7,470mmで、共同溝としては大規模なものとなる。
周辺環境は、虎ノ門立坑から桜田門立坑にかけては、両側に官庁庁舎が林立し、桜田門立坑から日比谷立坑にかけては、片側が日比谷濠に面し、一方は官庁庁舎や日比谷公園に面している。3箇所の立坑とも、きわめて交通量の多い交差点に位置していることから、歩行者への安全対策も含め、工事期間中の交通安全に配慮している。
また、工事区間全体にわたり、地下鉄千代田線・日比谷線・丸の内線・有楽町線、NTT洞道(φ3,950)、東京都水道局管渠(φ2,545)の直下を通過する路線となっているため、これらの重要構造物に対しても慎重かつ細心の施工管理を行い工事を進めている。
発進立坑断面
シールドトンネルの施工に必要な掘進設備は、シールドマシンの発進立坑となる虎ノ門立坑の地上(面積810m2)及び路下(面積1,230m2)を利用して設置する。掘進設備は、トンネルの掘削に必要な泥水の処理や、セグメントなど資材の供給、トンネルの換気、電力の供給を行う。
セグメントは地下の高い水圧や土圧などの荷重に耐えることのできる強固なものでなければならないため、この工事で使用するセグメントは荷重条件により、ダクタイルセグメント、スチールセグメント、rcセグメントの3種類を使用している。
ダクタイルセグメントとスチールセグメントは、幅600mmと1,200mmの2種類があり、ボルト接合によって組み立てる。rcセグメントは、幅1,200mm、厚さ300mmで1リングが7分割されている。rcセグメントの継ぎ手には、平滑性、耐久性、剛性、安全性に優れた「スライドコッター・サンクイックジョイント」を採用している。
地上にはセグメントを供給する設備や残土搬出のための掘削機械を設置し、路下には泥水処理設備や裏込めプラントなどを設置する。また、泥水処理設備の一部である一次分離機周辺には、工事で発生する騒音対策として路下に防音ハウスを設置する。     
▲シールド工法
掘削対象土質
シールドトンネルの土被りは、虎ノ門発進部が35m、日比谷到達郭で23mとなっている。シールド掘進部の土質は、全般的に洪積世砂質土(江戸川層)で、日比谷立坑の手前約100mから断面上部に洪積世粘性土が現れる。
砂質土も粘性土も、ともに非常に密度が高く、砂質土の推定n値は90〜450、粘性土の推定n値は60〜80となっている。
砂質土の粒径は0.4mm以下が主体で、均等係数は2程度。また、シルト粘土の含有率が10%以下と非常に少ないため、かなり締まった砂層となっているが、逸泥が発生しやすく、地山を乱した場合には崩壊しやすい地層である。
このような、現場条件を踏まえ、当該日比谷共同溝は一日も早い完成に向け、工事施工者一丸となって安全施工につとめ、工事を進めている。

日比谷共同溝工事

●前田・熊谷特定建設工事共同企業体

関東支店/東京都千代田区九段北4-3-1
TEL.03-3222-0822


首都圏支店/東京都新宿区津久戸町2-1
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