建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2005年5月号〉

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沈埋工法による海底トンネル工事が進捗中〜

那覇港と那覇空港を結び背後圏との円滑な輸送体系を実現

世界初の新工法「沈埋函くさび接合方式」で工期短縮とコスト縮減を実現

内閣府 沖縄総合事務局 那覇港湾・空港整備事務所 那覇港沈埋トンネル

▲沈埋トンネルイメージ図

▲那覇港
沖縄総合事務局は、港湾・空港関連交通の輸送体系の充実を図るため、那覇港沈埋トンネルの整備を進めている。
那覇港は、4つのふ頭から成り、現在都市型海洋リゾート施設などの整備が計画されている。一方で那覇空港では99年の新ターミナル供用開始によって、取扱貨物量及び人々の流入出が増大しており、沖縄県では港湾・空港関連交通の輸送体系の整備が不可欠となっていた。
そこで、同事務局では4つのふ頭の一体化、輸送体系の強化のほか、国道58号をはじめとする動脈の慢性的な交通渋滞解消を図るため、沖縄県内初の海底トンネル(沈埋トンネル)を計画した。
沈埋トンネルは那覇ふ頭港口部を海底トンネルで横断し、波の上地区と那覇空港を8函の沈埋函で直結させる延長約1.1kmの自動車専用道路トンネル。国内初の新工法も積極的に導入し、今後の沈埋トンネル技術の発展に大きく寄与するものと期待される。
沈埋函の構造と特徴
沈埋函の構造は、函体を鋼殻(上床版・下床版・側壁・隔壁)で製作後、鋼板間に高流動コンクリートを打設する鋼・コンクリート一体構造とした構造形式。鋼殻本体を防水鋼版及び鉄筋代わりの構造部材として活用するため、鉄筋が不要となる。せん断力に対しては、ウェブとコンクリート、ずれ力に対してはシアコネクタとダイヤフラムで抵抗させる。
沈埋函の製作にあたっては、海上での浮遊状態でコンクリート打設を行い、塩害を防ぐため腐食対策を行うほか、函体内部の鋼版が車道部に露出するため、耐火対策も行う。
作業工程
まず始めに、沈埋函を浮遊打設するための係留施設の整備、および沈埋函沈設時に那覇水路の代替航路を確保するための浚渫作業など、一連の工程を円滑に処理するための準備工を実施する。
沈埋函製作は、沖縄県内には沈埋函を製作する大規模な造船ドックまたは陸上ヤードが確保できないことから、本土工場内で製作。鋼殻製作工からバルクヘッド工、ゴムガスケット工など沈埋函鋼殻本体の製作を行う。
沈埋函鋼殻製作後は、台船に積み込み、数隻の主曳船(7,000ps級)で那覇港まで回航し、そこで高流動コンクリートの打設及び艤装品取り付け作業を行う。
▲回航
新港埠頭地区内の係留桟橋から二次曳航後は、沈埋函の沈設から埋戻しまで一連の作業を行い、沈埋函内部を貫通させ、ブルクヘッド撤去工や剛結合工などの函内工事を実施する。また道路としての機能を確保させる設備工事を実施する。
その後、地上部と連結させる地下3階、地上4階建ての立坑(換気塔)を三重城・空港側それぞれに設置。次に沈埋函(1,8号函)と立坑を接合するために、土留を施し所定の深さまで掘削を行い、最後に護岸復旧工を実施し、工事は終了となる。
景観・環境への配慮
陸上部の換気塔は、沖縄の海の玄関口にふさわしい、シンプルかつシンボリックなデザインを採用。
立坑の換気方式は立坑集中排気縦流式で、トンネル内に発生する自動車排気ガスを、換気塔に設置している換気機から除塵機に通し、有害物質の二酸化窒素及び一酸化炭素の濃度を環境影響評価指数以下に希釈し、それを地上32mの高さで排出する。
また、換気塔施設には、環境に還元しやすいエコマテリアルやリサイクル材などを積極的に導入するほか、敷地内の緑化に努め、環境に配慮した施工を実施する。
新工法の紹介
那覇港の沈埋函では、沈埋函途中に設けられるベローズ継手が可撓性部となり、地震時にベローズ継手自らが変形して沈埋函の変位を吸収することにより、函本体の軸力及びモーメントを低減させる。また、施工誤差(浮遊打設による変形等)の影響を受けにくく、変位吸収能力、大変位発生時の止水性に優れている。
また、沈埋函を接合する手法は、沈埋函くさび接合方式とし、従来の最終継手となるvブロック工法を開発・発展させた工法により、キーエレメントと呼ばれるくさび形の沈埋函の自重と水圧により既設沈埋函に密着させ、止水する。沈埋函自身が最終継手を兼ねるため、工期短縮及びコスト縮減が可能となり、他の沈埋トンネルでは見られない世界初の工法となる。
▲沈埋函くさび接合方式 ▲沈埋函係留施設工

▲埋戻し工 ▲三重城側換気塔 ▲鋼殻製作工
那覇港沈埋トンネルの整備に貢献
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