建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2004年12月号〉

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「富国有徳」の魅力ある地域を創造する静岡空港

平成20年度の開港を目指し、建設が進む

静岡県 静岡空港

▲静岡空港完成予想図
静岡県島田市と榛原町の境、広大な茶園の広がる牧之原台地の一角の丘陵地で静岡空港の建設が進められている。
同県は本州の中央にあって、東京と大阪を結ぶ東海道新幹線や東名高速道路など陸上交通の要衝である地理的優位性を背景に目覚ましい発展を遂げてきた。だが、全国的に交通体系の整備が進む中で、「人・もの・情報」の流れが本格化し、地域間競争が激化する中で、その相対的優位性は失われつつある。そこで県政の基本理念である「富国有徳」の魅力ある地域づくりと、将来にわたる持続的な発展を目指し、「陸・海・空」の総合交通ネットワークの確立に向けて新空港を建設するものだ。
飛行場施設は、管理面積約190ha、滑走路の長さ2,500m、幅60m、着陸帯の長さ2,620m、幅300m、標点の高さ132mで、北海道や九州などの国内はもとより上海、ソウル、台北などのほか、シンガポール、バンコクなどの中・近距離の国際線の就航が可能となる。
良好なアクセス環境
空港候補地は昭和62年5月に設置された「静岡空港建設検討専門委員会」で県内陸上部全域を約1km四方で約7,200メッシュに区切り調査を行い、以降5回に渡る審議を経て、現建設地を決定した。
新空港は静岡県のほぼ中央に位置し、県民の約9割にあたる330万人が約90分以内にアクセス出来る立地である。広域的には東京と名古屋の中間で、東京から直線距離で約170km、東名高速道路吉田インターチェンジ、相良牧之原インターチェンジ、整備中の第二東名自動車道(仮称)金谷インターチェンジに近接。静岡市から自動車で40分、県西部の浜松市から約50分でのアクセスが可能だ。
また、静岡空港ターミナルの真下には新駅となる新幹線空港駅を設置する構想がある。新駅が実現すれば各地から空港までの所要時間が短縮され、空港の利用圏域が県外にも広がり、利用者の飛躍的な増加が見込まれるとともに、首都圏空港機能を補完する役割も担うことも可能になる。
▲アクセス道路(榛原・吉田ICルート) ▲榛原と島田を結ぶ空港横断道路
▲次第に姿を現す飛行場
国内・国際交流拠点「静岡空港」
静岡県と国内遠隔地との交流は、県内に空港がない現在でも年間230万人に上り、航空需要は年々高まりつつある。こうした実績から国内線の利用見込みは北海道、九州、沖縄など国内4路線で106万人を見込んでおり、これに加えて、小型ジェット機を使用したリージョナル航空による北陸、四国などの路線就航も期待されている。
また、静岡県の海外渡航者数は年間約40万人に上るほか、県内に本社を置く企業のうちの341社がアジアを中心に1,074の海外事業所を設置しているなど、海外との幅広い交流があり、海外の航空会社も意欲的な見解を示していることから、開港後は国際定期路線の就航も大きく期待されるところだ。
空港は平成9年の準備工を皮切りに工事が進められ、予算上の進捗率は今年度まで79.1%となっている。造成工事の土工量は今年度末で約1,850万Fであり、進捗率は約71%となる。建設工事にあたっては、空港建設地の降雨を安全に流下させるための調節池や下流河川整備も併せて実施している。また、空港建設に伴って約120haの茶園やミカン畑が失われるため、営農継続のための代替農地の確保と、地域の主産業である農業の振興を目的として農地開発を実施している。
▲昆尾地区農地開発(榛原町) ▲乗用型摘採機の導入 ▲周辺の河川整備
▲赤坂池下のビオトープ ▲千頭ヶ谷池の棚田整備
▲のり面への植栽 ▲森林環境のエコアップ
新しい千年紀に向け
静岡空港では新しい千年紀を見据え、民間の専門家の意見を取り入れながら、他空港では見られない先進的な環境対策を実施している。
平成13年3月からは空港本体部完成法面への郷土種の苗木の植栽を行う、「空港の森ルネッサンス作戦」に着手。貴重動植物が生育できる里山環境づくりを積極的に進めている。さらに周囲に緩衝緑地として300haを保全するとともに、建設工事箇所にある貴重動植物は、周囲部で生育環境に適した場所や整備したビオトープに移植して保全を図っている。
県では「緑あふれる空港づくり」事業と題し、空港現地見学と空港周辺を歩く「静岡空港ふれあいウォーク」や、地元小学生と空港周辺の森で遊ぶネイチャークラフトづくりなど空港を身近に感じられるさまざまなイベントも開催している。
新空港の開業は2008年度中を予定している。
▲富士山を背景に建設が進む静岡空港
平成16年度静岡空港整備工事
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