〈建設グラフ2001年4月号〉

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21世紀に羽ばたく教育者・研究者を養成する先進的な「教育研究施設」に再整

大学院に重点を置き、大講座制の再編成にも配慮

東京大学医学部研究実験棟

貴重な建築校舎の保存と、新たな再整備化計画の融合を具現化
東京大学は、21世紀を見据えた先進的な施設にするため、これまで医学教育・研究の重要な拠点として使われてきた「医学部研究実験棟」の再整備を順調に進めている。
建設地は、東京都文京区本郷7-3-1の東京大学構内。敷地面積55万1,335m2。構造・規模はsrc造地下1階地上14階建。延床面積は、第1期1万4,800m2に対して、全体は3万3,000m2となっている。
この研究実験棟は、過去にも再整備が行われてきており、昭和6年に1号館、11年に2号館、36年に総合中央館(図書館)、そして、41年に3号館、動物実験施設、58年に3号館別館が整備されたのを最後に、それ以降はまったく未着手の状態だった。このため、施設の老朽化、狭隘化が進み、現状では教育・研究に対応しきれなくなっていた。
そこで、今日の医学においては教育・研究の国際化、精密化、高度化が求められてきていることから、同大学としても今後、国際的、歴史的に高い評価を得る教育者や研究者を輩出すべく、先進的な教育研究機能の比重を大学院に移す方針として今回着手したものだ。
このため、大講座制を再編成することを大学院の重点政策としており、これに合わせて、研究実験棟の整備を進めている。
同大学の校舎は、関東大震災後の大正末期から昭和初期にかけて、ネオゴシック風スクラッチタイル貼りで建築された歴史的にも重要な建造物が多いことから、老朽化と狭隘化への対応が急務となっており、また同時に、教育・研究体制の面でも国際化・精密化・高度化への早急な整備も求められていた。
これらの問題に対処するため、キャンパスの歴史やその重要性を評価しながらも、長期的な視野に立った施設、教育・研究体制の更新、拡充を行うことにより順次、再整備化計画を進めてきた。
また、本郷地区キャンパス全体を一体的にとらえ、建築的に優れている建物外壁を“保存建物”や“保存外壁”として残し、また空き地についても“保存空き地”と“整備空き地”に指定区分して、それぞれにふさわしい形状や環境を整備し、本来の価値や周辺環境までを損なわないよう十分に配慮することにしている。

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