建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2004年12月号〉

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12月1日、羽田空港・第2旅客ターミナルビルがオープン

「絶対安全の確立」を前提に、利便性・機能性・快適性を備えた国内最大級のターミナルビルが誕生

日本空港ビルデング株式会社 東京国際空港(羽田)第2旅客ターミナルビル

年間6,300万人が利用する首都圏の空の玄関口・羽田空港の第2旅客ターミナルビルが12月1日、オープンする。日本の基幹空港にふさわしい利便性・快適性・機能性を備えた国内最大級のターミナルビルとなる。
「絶対安全の確立」をベースに利便性と快適性を実現
第2旅客ターミナルは既設の第1旅客ターミナル正面に建設されており、東京湾に面している。延床面積は約18万m2で、第1ターミナルビルの約29万m2と併せると約47万m2のゆったりとした空間となる。
設計の基本コンセプトは「絶対安全の確立を前提とした、お客様本意の利便性・快適性・機能性の向上」。第2旅客ターミナルビルには、航空機に直接乗降できる15の固定スポットを増設する。第1旅客ターミナルビルと併せたスポット数は39となり、現在6割程度である、ターミナルビルからの直接搭乗率が9割台に向上し、乗降利便性の向上が図られる。
バリアフリー対策としては、ゲート内ラウンジの水平移動に対して車椅子と人が並べる、有効幅1,400mmの「動く歩道」を配置。通路には段差を設けず、車椅子が転回できる幅を確保した。傾斜路には勾配を12分の1以下とし、高低差750mmごとに踊り場を配置する。館内各所には移動をスムーズにするためのエレベーターやエスカレーターを効果的に配置し、エレベーターは電動車椅子2台が並んで利用出来る大きさとした。
▲出発チェックインロビー
▲到着ロビー
▲中央の吹抜け大空間
▲到着コンコースと固定搭乗橋
(出発と到着の動線を完全分離)
授乳室や多目的トイレについては館内の随所に配置し、快適性の向上を図った。喫煙コーナーは個室化して完全分煙を図り、クリーンな環境を実現する。さらにガラス面を多様し、自然光をできるだけ利用して照明エネルギーの低減を図った。
セキュリティ対策としては、出発客と到着客の動線を完全分離する。出発の利用者は2階出発コンコースから機内へ、到着の利用者は機内から1.5階到着コンコースへと、それぞれ別のスロープで動線を完全に分離し、ハイジャック防止を徹底する。また、そのほかのエリアについても万全のセキュリティを施し、安全性を高めている。
機能的なアクセスを構築
アクセス鉄道は、現在東京モノレールと京浜急行電鉄が空港と連絡しているが、東京モノレールについては、現在第1旅客ターミナルビルの「羽田空港駅」から延伸され、第2旅客ターミナルビルに新たに「羽田空港第1ビル駅」を設置する。現在の羽田空港駅は「羽田空港第2ビル駅」に改称される。
京浜急行電鉄については、現在の「羽田空港駅」に第2旅客ターミナルビルと直結する新しい乗降口を設置する。
アクセス道路としては、第2旅客ターミナルビルの1階(到着階)、及び2階(出発階)と接続する。また、新たに第2旅客ターミナルビル前面に2,460台収容のp3駐車場が開業する。
第1・第2ターミナル間の連絡については、地上に加えて、地下にターミナル連絡地下通路(動く歩道あり)を設置する。さらに現在第1旅客ターミナルビルと国際線旅客ターミナルビルを結んでいるターミナル無料循環バス(120本/日)の経路内に第2旅客ターミナルビルを追加する。
デザイン面での特徴
設計は米国の著名建築家であるシーザー・ペリも参画したmhs・nttファシリティーズ・シーザーペリ共同企業体が担当した。第2旅客ターミナルビルは東京湾側に面していることから、基本モチーフは「海」としている。特に中央の吹き抜け大空間は全体がガラス張りで、海の透明感と明るさを連想させ、第2旅客ターミナルビルのデザインコンセプトをシンボリックに表現している。
チェックインロビーの大屋根はプロペラがモチーフで、ねじれながら緩やかに傾斜し、天井のガラスのスリットからは自然光が差し込み、伸びやかな開放感を演出する。また、カーブ再度のキャノピー(庇)は波形で海辺のさざ波をイメージしている。
出発ゲートラウンジはエアサイド側が全面ガラス張りの明るい空間とした。到着コンコースはガラスの回廊で、夜間には約800mにもおよぶ光のチューブとなり、エアサイドからの印象的な景観を創出する。加えて、利用者が航空機搭乗までの時間を快適に過ごせるよう、ゲートラウンジの中にもガラス張りの吹き抜け空間を配置。また、中央の吹き抜け大空間をはじめとするターミナルビル内には世界を舞台に活躍している日本画家である千住博氏のアートを配置し、文化・芸術的な空間を構築する。
さらに、5階の展望デッキからは航空機のダイナミックな離着陸を間近に眺めるだけではなく、東京湾を行き交う船や湾岸エリアの大パノラマを楽しむことができるベイサイドウオッチングなどのプレイスポットとして旅の途中のひとときを過ごすことができる。
商業施設をバラエティ豊かに配置
商業施設は館内の随所にバラエティ豊かに配置し、短時間であっても十分に楽しめる魅力あふれる空間を表現し、様々なライフスタイルやニーズに対応した高質で都会的な個性と魅力づくりを図る。
飲食、物販、サービスなどの商業施設は全体で約8,100m2、中央吹き抜け大空間の商業施設「マーケットプレイス」を中心に地下1階から地上5階まで93店舗が立ち並ぶ。
飲食店舗は「東京玄関“舌騒がせ”名店飲食店街」をコンセプトに、新たな東京の顔にふさわしい“根っこ”のある新老舗、新業態専門店などを導入する。
物販店舗では「東京玄関“高満足度”専門店集積」をコンセプトとし、東京の空の玄関にふさわしいクオリティと味を有した銘店などをラインナップする。
サービス店舗については、旅行の疲れを癒すリラクゼーションルームを導入するなど、幅広いニーズに対応する店舗を揃える。
▲エアポートホテルを併設
ターミナルビルと一体化したエアポートホテル
客室数387のホテルをターミナルビルと一体化して設置する。早朝の出発や深夜の到着など、空港利用の際のチェックインロビーへのダイレクトなアクセスが可能となる。また、羽田空港からの豊富な交通手段もあり、都心への移動もしやすい。
第1旅客ターミナルビルのリニューアル改修
日本空港ビルデング鰍ナは、今回の第2旅客ターミナルの供用開始にともない、第1旅客ターミナルビルの改修を進めている。
現在供用中の第1旅客ターミナルビルは平成5年9月の供用開始から10年余りが経過している。改修は両ターミナルのサービスレベルの均質化を図るとともに、利便性・快適性・安全性を向上させるものだ。
工事は今年6月から行われ、来年3月頃の完了を予定している。
▲展望デッキ
東京国際空港(羽田)東旅客ターミナル新築工事
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