建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2004年10月号〉

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首都圏の鉄道ネットワークを担い東京のさらなる魅力を創出

「東京を走らせる力」の理念に基づき鉄道事業を中心とした事業展開を図る

東京地下鉄株式会社 地下鉄13号線

首都・東京の都市活動を支えてきた帝都高速度交通営団が、平成16年4月1日から「東京地下鉄株式会社」(東京メトロ)として新たな一歩を踏みだした。今後は、現在建設中の13号線を最後に、ネットワークの整備という使命を終え、「東京を走らせる力」という理念に基づき、鉄道経営を中心とした事業展開を図る。
東京メトログループの誕生
東京メトログループは、東京都区部を中心に8路線(平成19年度からは9路線)からなる地下鉄ネットワークを保有する、まさに首都圏の鉄道ネットワークの中核を担う企業グループである。とりわけ、都心3区(千代田、港、中央)、及びその周辺地区である新宿、渋谷といったエリアにおいては、他社の追随を許さない稠密なコアネットワークを形成しており、東京の社会活動を輸送面から支えている。
さらに、郊外から都心へのアクセスにおいても、民鉄各社との相互直通運転によりシームレスな輸送サービスを実現。パスネットの普及と相まって利便性の向上を図っている。
また、創立以来培ってきたサービスと技術の蓄積を背景に、最先端の技術を採り入れることで、極めて安全で安定した高密度の運行と、鉄道事業との相乗効果をもたらす関連事業を展開している。
関連事業の積極的な推進
東京メトログループでは、多くの人が集まる駅空間を最大の経営資源として、関連事業を収益基盤のひとつとして位置づけ、鉄道事業との相乗効果をもたらす事業を今後積極的に展開する。
主な事業として、ステーションサービス事業では、「地下鉄の駅を便利に楽しく変える『ekibin』プロジェクト」を推進し、利用者のニーズの高いコンビニエンスストアやatmなど、駅の特性を考慮した積極的な開発を行い、利用者の生活シーンをサポートするサービスを提供する。表参道駅を「モデルステーション」とした、鉄道と商業施設が融合した利便性の高い魅力ある駅づくりを進める。
ビル事業では、建物一括賃貸方式によるホテル事業や住宅事業等を展開する。営業中の物件については適切なリニューアルによる競争力の強化、運営コストの削減を図る。
広告事業では、クライアントニーズにマッチしたインパクトの大きい商品(大型ボード、柱巻広告、ドア横ポスター、ホーム壁面大型広告)の設置を推進する。
メディア事業では、他社の光ファイバーケーブルとの相互アクセスによる商品価値の向上、他事業への活用及び新規賃貸先顧客の開拓による事業拡大、駅を活用したit事業の開発を行う。
地下鉄13号線の概要
平成19年度の開業に向け、現在「地下鉄13号線」の建設が進んでいる。これは池袋・渋谷間を結ぶ延長8.9キロの路線であり、これまでの地下鉄建設の集大成として技術力を結集して「人と地球に優しい地下鉄」を目指し、一部区間を除き明治通り下に建設されるものである。
地下鉄13号線は、高速鉄道13号線の未整備区間である延長8.9キロの路線であり、池袋(既設の有楽町線(新線)の池袋駅)、雑司ケ谷、西早稲田、新宿七丁目、新宿三丁目、新千駄ケ谷、明治神宮前、渋谷の8駅(駅名は全て仮称)を結ぶ。
高速鉄道13号線は、昭和60年の運輸政策審議会答申第7号において、志木から和光市、成増、小竹向原、池袋、束池袋、高田馬場、西早稲田、新宿、代々木、神宮前を経て渋谷に至る路線として策定された。このうち、志木・和光市間は東武東上線として、和光市・池袋間は東京メトロ有楽町線としてすでに開業している。また、平成12年の運輸政策審議会答申第18号において、渋谷駅における東急東横線との相互直通運転が追加された。
平成11年1月、当時の営団地下鉄が運輸大臣より池袋・渋谷間の事業免許を取得し、地下鉄13号線として手続き・設計を進め、平成13年6月に着工した。
計画では池袋西口の起点から池袋駅の直下を通り、都道435号線(通称グリーン大通り)より都市計画道路環状第5の1号線沿いに方向を転じ、千登世橋(目白通りとの交差部)から明治通り沿いに南下、新宿を経由し渋谷に至る路線である。
開業による効果
地下鉄13号線は、多路線との接続や相互直通運転を実施し、鉄道ネットワークをさらに充実させ、ターミナル駅・既設路線の混雑緩和を目的としている。
現在は、乗り換え時などの混雑が絶えない状況となっており、13号線の開業により、特に池袋・渋谷間を並行して走るjr山手線・jr埼京線の混雑緩和と、池袋、新宿、渋谷など、日本有数のターミナル駅の混雑緩和が期待される。
鉄道ネットワークという点では、池袋駅において東京メトロ丸ノ内線・東京メトロ有楽町線・jr山手線・jr埼京線・東武東上線・西武池袋線と、新宿七丁目駅において都営大江戸線と、新宿三丁目駅において東京メトロ丸ノ内線・都営新宿線と、明治神宮前駅で東京メトロ千代田線と、渋谷駅において東京メトロ銀座線・東京メトロ半蔵門線・東急東横線・東急田園都市線・jr山手線・jr埼京線・京王井の頭線と接続することで、利便性の向上を図る。
また、開業後は池袋以西において東武東上線、西武有楽町線・西武池袋線と相互直通運転を行う予定で、さらに平成24年度を目途に渋谷駅において東急東横線とも相互直通運転を行う予定だ。一方、みなとみらい線とも相互乗り入れすることになる。
これにより、埼玉県西南部方面から都心を経由し、横浜方面に至る広域的な鉄道ネットワークが完成する。
なお、地下鉄13号線では急行運転を予定しており、池袋・渋谷間の所要時間は、急行でjr埼京線と、各駅停車でjr山手線と同等となる計画である。
また、東京圏における1日あたりの自動車走行台キロが23,000台キロ減少するなど、道路混雑の緩和も見込まれている。
以上のように同社では、地下鉄13号線の建設により、混雑の緩和に加え、沿線からのアクセスをよくすることで、利便性向上に貢献し、業務地や商業地として発展し続ける池袋、新宿、渋谷の3副都心のさらなる発展、新駅周辺の活性化を目指す。
各駅の概要
現在、工事が本格化している明治通りは、交通量の多い主要幹線であり、また都内でも有数の繁華街を抱えている。交通量が多いことに加え、この通りの地下には、電気・下水道など大規模なライフラインが多数埋設されており、過去に行った地下鉄建設の中でも最も難しい工事といえる。
また、急行運転のために新宿七丁目駅には追越し施設を設け、東急東横線との相互直通運転に備え、渋谷駅には2面4線の大きな駅を建設するなど、地下鉄13号線ならではの特徴的な工事となっている。各駅の工事進捗状況は以下のとおり(駅名は全て仮称)となっている。
▲雑司ヶ谷 ▲雑司ヶ谷作業帯
▲西早稲田 ▲西早稲田作業帯
▲新宿七丁目 ▲新宿七丁目作業帯
▲新宿三丁目 ▲新宿三丁目作業帯
▲新千駄ヶ谷 ▲新千駄ヶ谷作業帯
▲渋谷 ▲渋谷作業帯
■雑司ケ谷駅
都電荒川線及び都市計画道路環状第5の1号線直下に建設される駅であり、周辺は文化財保護法に基づき遺跡調査を行う必要があり現在引続き継続中である。工事は調査が完了した区画から着手となり、土留壁及び路面覆工の施工中である。当駅では、土留壁に鋼製地下連続壁を採用し将来、本体構築として使用するなど工程促進を図っている。なお、駅シールド工法で建設される。
■西早稲田駅
雑司ケ谷駅と同じく駅シールド工法で建設される駅であり、一部土留壁にエコウォール工法を試験施工し、発生土の循環利用を図ると共に建設汚泥の発生を極力少なくするなどの環境負荷低減に努めている。床版スラブを先行打設する逆巻工法を採用。現在、上床スラブ打設が完了し、上床下の掘削を行っている。
■新宿七丁目駅
13号線で行われる急行運転の追越しのため、2層式の2面4線となり都営大江戸線との連絡通路を設け、利便性の向上に貢献する。土留壁の施工について、沿道には中低層の住居・飲食店が多く、低騒音・低振動の施工方法が必要なこと、並びに約41mを超える杭長になり路上作業時間が超過してしまう恐れがあり、crm工法を採用することとした。現在、埋設物吊防護並びに掘削を行っている。
■新宿三丁目駅
折り返し設備を設け延長787mと長大な駅であり、靖国通り、新宿通り、甲州街道など主要道路をまたぐ形で建設される。当駅では、13号線ホームと直結される東京メトロ丸ノ内線並びに都営新宿線とも乗換え可能となる。当該地区には、全線にわたり埋設物が錯綜している。特に交差点部には以下にあげる大型埋設物がある。東京電力、ntt、水道等のシールド、丸ノ内線、新宿御苑共同溝並びに都営新宿線シールドある。交通量も非常に多く、路上での作業を極力減少させるため、交差点部においては、2段土留工法の採用となった。現在、最盛期を迎えた掘削、坑内における杭打ち、丸ノ内線・新宿御苑共同溝の下受を行っている。また、一部区間では中床スラブが完成している。
■新千駄ケ谷駅
通り沿いにマンションやオフィスビルが建ち並ぶ当駅は、2層2径間と基本的な構造となる。現在、13号線建設工事において、最も進捗している駅でもある。現在、地下2階までが完成している。
■明治神宮前駅
若者を対象としたファッション店舗が林立し、非常に歩行者の多い地域での工事のため、土留壁には、親杭路下工法を採用し、路上作業を低減した。現在、掘削を進め坑内における杭打ちを行い、一部中床スラブを先行打設するため鉄筋の組立ても併せて行っている。なお、東京メトロ千代田線と連絡される。
■渋谷駅
平成24年度をめどに東急東横線との相互直通運転を開始する予定であり、シームレスな輸送サービス実現のため四層五径間の大規模な駅になる。また、東京メトロ半蔵門線・東急田園都市線との連絡を行う。建設工事に当たり、幅約30mに及ぶ半蔵門線・銀座線の下受、一部高層ビル下の掘削が発生し、これらに影響を与えることなく工事を進めなくてはならない。現在、掘削工事が本格化してきている。
コスト縮減への取り組み
同社ではこれまで、設計や工事計画の見直し、様々な技術開発によって、建設コストの縮減に取り組んできた。
地下鉄13号線の建設は、最後の新線建設となることから、丸ノ内線建設以来蓄積してきた駅やトンネル建設技術の集大成として、各種技術開発に取り組み、大幅な建設コスト縮減を目指している。
1つ目は、トンネル部のセグメントを、鉄道トンネルとして過去最大幅となる大型化に成功したことである。製品価格を抑えることに加え、工程の短縮を図り、結果としてコスト縮減に大きく貢献する。また、一部シールド区間においてそれらのセグメントを人件費等の安い海外において製作するなど、さらなるコスト縮減につなげる。
2つ目は、駅と駅を結ぶ複線トンネルについて、従来採用してきた円形の断面に比べ、断面形状を最適化した複合円形断面のトンネルを一部の区間で採用することである。これにより、工事で発生する掘削土砂を抑制し、コスト縮減はもとより、環境対策にも大いに貢献する。セグメントの継手についても、山手地域の硬質地盤に適した新型継手を開発することにより、従来の継手に比べて大幅なコストの縮減を実現する。
環境負荷低減への取り組み
▲酸化触媒装置車(左)CNG車(右) ▲電動化建設機械
(ハイブリットバックホー)
東京メトロ建設部は、平成11年に地下鉄事業者の建設部門として、また公共事業の発注団体(自治体を除く)として、国内で初めて環境マネジメントシステムの国際規格「ISO14001」の認証を取得した。そのため、建設工事では環境負荷低減への取り組みに力を注いでいる。
工事においては、既に杭打ち工事から発生する建設汚泥の発生量抑制、再利用工法の開発を実施し、駅部の掘削土砂の他工事への有効活用、駅間トンネル工事の掘削土砂を駅部の埋戻し材料としてリサイクルするなど、環境負荷低減のための様々な方策を施行している。
また、平成14年度から駅部の工事で使用する工事用車両について、CNG(圧縮天然ガス)車や粒子状物質減少装置を装着した新型車を導入している。
さらに昨年6月には、掘削土砂運搬に使用するダンプトラックに粒子状物質減少装置を装着した。これらの車両は昨年10月より施行された東京都環境確保条例ディーゼル自動車排出ガス規制をクリアすることはもちろん、平成17年に強化される2次規制基準もクリアするものとなる。
一方、土を掘削する建設機械についても、従来のディーゼル駆動方式に代え、一部機械に電気駆動方式を採用した。これは、窒素酸化物(NOX)や粒子状物質(PM)の排出がゼロになり、かつ騒音が大幅に低減されるもので、国内の地下鉄工事で初めての使用である。
沿道との協調
▲地下鉄13号線展示室
地下鉄13号線は、鉄道ネットワークの充実や混雑緩和のみならず、新駅周辺地域の活性化にも貢献する。建設にあたっては、周辺住民とのコンセンサスを重視し、地域密着型の建設を目指している。
東京メトロ建設部では、東京メトロ・施工業者・沿道町会で構成する協議会を駅ごとに設置し、工事内容や進捗状況を説明し、情報交換を行っている。発注者自らがこのような情報交換を行うことは、独自のシステムといえる。
また、工事への理解を深めてもらうため、広報紙「ちかみち13(サーティーン)」を定期的に発行し、分かりやすい工事情報を発信している。
さらに、「地下鉄13号線展示室」を設置し、13号線の概要や地下鉄の建設工法を詳しく説明している。ここでは、建設機械の模型や建設計画が一目でわかるジオラマ、実物のシールドセグメントや軌道で造ったモニュメントなどが展示されており、親しみやすい地下鉄を目指している。
建設事業は昨年度中に駅間部(駅シールドを含む)のシールド工事を全て発注した。困難な状況を技術的に克服するだけでなく、地球環境や周辺環境へも配慮し、理想的な都市土木の姿を模索している。
都市高速鉄道第13号線 シールド工事
【早稲田工事事務所】
●南池袋A線工区/
  大林・東亜・大日本建設工事共同企業体
●南池袋B線工区/
  前田・戸田・五洋建設工事共同企業体
株式会社大林組
東亜建設工業株式会社
大日本土木株式会社
前田建設工業株式会社
戸田建設株式会社
五洋建設株式会社
●高田A線工区/
  熊谷・錢高・松村建設工事共同企業体
●高田B線工区/
  奥村・竹中土木・りんかい日産建設工事共同企業体
株式会社熊谷組
株式会社錢高組
株式会社松村組
株式会社奥村組
株式会社竹中土木
りんかい日産建設株式会社
●西早稲田工区/
  佐藤・日本国土・大本建設工事共同企業体
●戸山工区/
  西松・西武・みらい建設工事共同企業体
佐藤工業株式会社
日本国土開発株式会社
株式会社大本組
西松建設株式会社
西武建設株式会社
みらい建設工業株式会社
【新宿工事事務所】
●新宿工区/
  清水・三井住友・淺沼建設工事共同企業体
●新宿御苑工区/
  大成・間・鉄建建設工事共同企業体
清水建設株式会社
三井住友建設株式会社
株式会社淺沼組
大成建設株式会社
株式会社間組
鉄建建設株式会社
【渋谷工事事務所】
●千駄ケ谷工区/
  飛島・フジタ・白石建設工事共同企業体
●神宮前工区/
  鹿島・大豊・東急建設工事共同企業体
飛島建設株式会社
株式会社フジタ
株式会社白石
鹿島建設株式会社
大豊建設株式会社
東急建設株式会社

都市高速鉄道第13号線 開削工事
【早稲田工事事務所】
●雑司ヶ谷一工区/
  五洋・森本建設工事共同企業体
●雑司ヶ谷二工区/
  大日本・株木建設工事共同企業体
五洋建設株式会社
株式会社森本組
大日本土木株式会社
株木建設株式会社
●西早稲田一工区/
  竹中土木・東洋・松村建設工事共同企業体
●西早稲田二工区/
  戸田・不動建設工事共同企業体
株式会社竹中土木
東洋建設株式会社
株式会社松村組
戸田建設株式会社
不動建設株式会社
●新宿七丁目一工区/
  鴻池・青木あすなろ・白石建設工事共同企業体
●新宿七丁目二工区/
  大成・三井住友・西武建設工事共同企業体
株式会社鴻池組
青木あすなろ建設株式会社
株式会社白石
大成建設株式会社
三井住友建設株式会社
西武建設株式会社
【新宿工事事務所】
●新宿三丁目一工区/
  清水・小田急建設工事共同企業体
●新宿三丁目二工区/
  大林・日本国土建設工事共同企業体
清水建設株式会社
小田急建設株式会社
株式会社大林組
日本国土開発株式会社
●新宿三丁目三工区/
  佐藤・浅沼建設工事共同企業体
●新千駄ケ谷一工区/
  フジタ・大本建設工事共同企業体
佐藤工業株式会社
株式会社淺沼組
株式会社フジタ
株式会社大本組
●新千駄ケ谷二工区/
  間・大豊建設工事共同企業体
株式会社間組
大豊建設株式会社
【渋谷工事事務所】
●明治神宮前一工区/
  鉄建・りんかい日産・地崎建設工事共同企業体
●明治神宮前二工区/
  三井住友・福田・大木建設工事共同企業体
鉄建建設株式会社
りんかい日産建設株式会社
株式会社地崎工業
三井住友建設株式会社
株式会社福田組
大木建設株式会社
●渋谷一工区/
  東急・東鉄建設工事共同企業体
●渋谷二工区/
  鹿島・アイサワ・三菱建設工事共同企業体
東急建設株式会社
東鉄工業株式会社
鹿島建設株式会社
アイサワ工業株式会社
株式会社ピーエス三菱

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