建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2004年10月号〉

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生徒の情緒にはたらきかける空間づくり

神奈川県 県立川崎高等学校

(株)田辺洋建築設計事務所
川崎高等学校は、社会の変化や生徒の多様化、少子化の進行など、県立高校をめぐるさまざまな課題に対応し、21世紀の新たな県立高校をめざす目的で策定された「神奈川県の県立高校改革推進計画」に基づき整備されている。
平成12年度からおおむね10か年にわたり推進される改革の中で、同校は、一人ひとりの学習ペースや生活スタイルにあわせて学習計画を立てて学習するという新しいタイプの高校、いわゆるフレキシブルスクールとして設置されるものだ。
新校の設置目的「多様性ある教育環境づくり」にふさわしい空間を提供することをコンセプトに、ソフト面においては、従来型の画一的な教育とは異なり、生徒一人ひとりの個性を受け入れた多様な教育活動を展開することとしている。そこでハード面においても従来型のいわゆる「標準設計」のような画一的なものでなく、多様なシチュエーションを提供することにより、記憶に残る空間づくりに向けて、三つの「施設整備基本方針」を挙げて、具体的な施設整備計画・設計を進めた。
環境へ配慮した学校づくり−多様な視点の受け入れ
これまでは経済性や効率優先でとかく欠落しがちだった環境に配慮する視点から、屋上緑化の採用により建物温度の上昇を抑制しつつ都市の温熱環境の緩和を図った。校舎中央へのモール空間の配置により自然換気及び自然採光を確保。日除けデッキによる日射遮蔽、南側オープンスペースの設置及び高木を列状に配した校舎などによる地域環境に貢献する工法を採用している。
さらに建築の長寿命化を図るため、構造躯体の耐久設計基準を採用するなどして、長期的な地球環境の負荷軽減にも配慮している。
その他、化学物質の含有に対して配慮した建材の採用や、工事中の近隣環境への影響や建設廃棄物に配慮した杭工法の採用など、環境面への配慮は多岐にわたる。
フレキシビリティの高い学校づくり−多様なカリキュラムの許容−
従来の標準設計で一般的だった耐力壁を取りやめ、純ラーメン構造を採用し、大梁の一部ヘプレストレストコンクリート構造を採用し、大空間とすることによって、将来のカリキュラム変更に対する模様替えやニーズの変化に対してフレキシビリティを高めた構造形式にした。
工事概要
建築場所 神奈川県川崎市川崎区渡田山王町22-6
建築面積 7,348.61m2
延床面積 15,397.64m2
構造規模 鉄筋コンクリート造・地上4階
工   期 平成15年10月14目〜平成17年2月28目
特色ある空間づくり−多様性の評価
平面だけでなく空間構成にも特色を特たせている。特に吹き抜け空間を建物各所へ配した立体的な構成とすることで、変化に富んだ空間を提供する。
また従来の画一的な教室・廊下間のパーティションを「ガラス、コンクリート、木製パネル、金属パネル」が緩やかに連続する、空間の多様性を演出。
さらに外部空間についても、大きなボリュームになりがちな校舎建築から、食堂・視聴覚室などを、低層の分棟として切り離し、かつボールト屋根や扇型平面など特色ある形態とする外部空間とし、生徒の情緒面において、良き思い出として残るよう工夫している。
神奈川県立川崎高等学校新築工事
●建築工事/小川・大山・野州特定建設工事共同企業体
株式会社小川組
本社/神奈川県川崎市川崎区榎町
3-1-307
TEL. 044-244-5661


株式会社大山組
本社/神奈川県川崎市中原区新丸子東
1-827
TEL. 044-411-3708


野州工業株式会社
本社/神奈川県川崎市川崎区桜本
1-12-1
TEL. 044-266-7000


●電気設備工事/東京・光陽特定建設工事共同企業体 ●空調設備工事
東京電機株式会社
本社/神奈川県川崎市川崎区池田2-2-3
TEL. 044-322-5311


株式会社光陽電業社
本社/神奈川県川崎市中原区新丸子東
2-905-2
TEL. 044-434-2811

明和工業株式会社
本社/神奈川県川崎市幸区紺屋町40-4
TEL. 044-541-1315


●衛生設備工事
大同産業株式会社
本社/神奈川県川崎市幸区古市場2-78
TEL. 044-544-5185



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