建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2004年7月号〉

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2007年、2本目の滑走路供用開始に向け、2期造成工事が佳境を迎える

国際ハブ空港への布石〜1期を越える例を見ない大規模造成工事

関西国際空港用地造成株式会社 関西国際空港2期用地造成事業

近年の国際間の交流・グローバル化を背景に、近隣アジア諸国では、複数の滑走路を持った大規模な基幹国際空港が整備され、利用が急伸している。
こうした状況の中、わが国初の24時間空港として平成6年に開港した関西国際空港では、基幹国際空港としてさらなる役割を果たしていくため、2本目の滑走路を備える2期空港島の建設工事を進めている。
これは、現在の空港における航空機の離着陸の集中するピーク時の発着枠は、現在でもほぼ満杯の状況であり、旅客や航空会社からニーズの高い時間帯における増便の受入のために2本目の滑走路が必要となっていたためで、2期空港島の建設は平成11年から進められている。
全体構想としては現在の空港島の沖合に新たにB、Cの滑走路2本と関係施設等を整備する。
今回の2期事業ではこのうちのB滑走路と関連施設の整備を行う。

2期事業の規模

2期空港計画(案)イメージ図
A 旅客ターミナルビル(2期本館)
B b滑走路(4,000m)
C 進入灯
D 連絡誘導路
E ポートターミナル
F 空港連絡橋
G 旅客ターミナルビル(1期)
H 鉄道駅
I A滑走路(3,500m)
J オイルタンカーバス

関西国際空港1期事業は、航空機騒音の影響が陸域に及ばないよう、滑走路の位置は泉州沖約5kmの地点に建設され、このため大水深で軟弱な海底地盤を埋め立てる、かつて例をみない大規模な用地造成工事を短期間で行うという難しい事業となった。この課題を様々な施工上の工夫や技術開発などで克服し、現在の空港島が完成した。 
2期工事は1期空港島のさらに沖合の水深約20mの海域で行われ、埋立面積545ha、護岸延長13km、埋立土量は2.5億Fにも及び、いずれの数値も1期を上回る規模となっている。
しかも、2期事業は1期に比べ、より深い海域での埋立となり、建設費が高額となることから、投資の回収期間も長くなるため、事業の健全な経営と円滑な実施を図る必要がある。そこで、空港用地(下物)の整備主体と空港施設(上物)の整備主体を分離した事業手法である(上下主体分離方式)が、新たに導入されたことが注目される。

用地造成の流れ

(1)地盤改良
▲砂撒船による敷砂 ▲揚土船(舷側スプレッダー)
▲波除堤築造工事 ▲サンドドレーン船
▲二次揚土工事 ▲サンドコンパクションパイル船

2期空港島の建設海域は、1期に比べて水深が深く、海底面下にはより厚い軟弱な粘土が横たわるため、埋立による沈下量は1期に比べて大きくなると予測されている。このため、約1,800Fにも及ぶ海砂を砂撒船によって敷砂。その後、日本中の大型サンドドレーン船8隻によって120万本に及ぶ砂杭を一定間隔で打ち込む。これにより埋立土砂の重みで粘土層の水分が押し出されて砂杭を通り、海中に排出され、強固な地盤となる。
(2)護岸築造
護岸の総延長は13kmに及ぶが、土砂の濁りの拡散を防ぐため、埋立に先立って護岸を築造する。護岸の約90%以上を環境に優しい緩傾斜石積護岸とし、その他の部分を直立ケーソン護岸や鋼製セル護岸としている。緩傾斜護岸の波あたりが強い護岸や波除堤には消波ブロックを前面に据え付けている。

(3)埋立造成
埋立工事は、土運船による直投によって埋立地を薄層均一に仕上げていく。直投によって浅くなった場所は空港島内側から揚土船によって土砂を投入して埋め立て、陸地を形成(一次揚土)。最終的には護岸の外から揚土船によって土砂を供給(二次揚土)し、空港用地を仕上げる。

先進技術を活用し、高精度・高効率な工事を実現
重量数百tの飛行機が離着陸し、走行する2期空港島の地盤には、その重量を支え、高潮や地震などの自然災害に耐える強固さと地盤高さが求められる。2期工事ではgpsや超音波を用いた最新の計測技術を活用して綿密な計測を行い、作業中も施工状態を確認できるようにしている。
こうして現場で集められた情報は、コンピュータを使って一元的に管理。層厚や施工履歴などの各種データはオンラインで結ばれた端末から迅速に検索できるようになっている。施工関係者同士の情報の共有化も可能となり、施工計画の検討などもスムーズに行うことができる。
さらに地盤改良にあたっては1期を越える厳しい条件をクリアするため、一度に12本もの砂杭を打ち込める大型のサンドドレーン船や3,000F(10tダンプカー500台分)積みの土運船によって、作業のスピードアップを図っている。

施工にあたっての取り組み

▲水質調査船

施工にあたっては、海中に投入する大量の土砂が周辺海域の環境に悪影響を与えないよう、汚濁防止幕の設置や潮流により投入位置を考慮するなど、環境に配慮した対策を行っている。またこれに加え、水質、底質、海域生物など環境に関する多くの項目で調査・監視活動を行っている。工事に起因すると思われるような問題が発生した場合には、施工にフィードバックし、速やかに対策を講じることとしている。
また、沖合では一般の船舶、漁船などが航行していることから、安全で円滑な航行に配慮しつつ、作業船の安全運行を確保するための航行安全対策を講じている。

事進捗状況
工事は順調に進捗しており、先行して進めている滑走路や誘導路を建設するエリアでは、用地造成の最終段階となる二次揚土工事が進んでいる。また、北東エリアでは一次揚土を進め、着々と陸地が広がりつつある。さらに南側開口部の締め切りや波除堤築造などの工事も同時進行しており、工事はまさに佳境を迎えている状況だ。
この事業が完了すると、関西国際空港はわが国を代表する国際ハブ空港の布石として大きな一歩を踏み出すこととなる。
▲日本を代表する24時間空港「関西国際空港」
関西国際空港2期建設協力会
●2期空港島埋立工事(揚土その5)
鴻池・東亜・竹中土木・大日本・関門港湾・淺川
●2期空港島埋立工事(2次揚土その1)
前田・東洋・大成・三井住友・福田特定建設工事共同企業体
●2期空港島埋立工事(2次揚土その2)
東亜・清水・大林・錢高・淺川特定建設工事共同企業体
●2期空港島埋立工事(2次揚土その3)
五洋・西松・鴻池・飛島・大旺・梅林特定建設工事共同企業体
●2期空港島埋立工事(2次揚土その4)
鹿島・佐伯・竹中土木・戸田・淺沼特定建設工事共同企業体
●2期空港島護岸築造工事(その7)
若築・テトラ・りんかい日産・淺沼・関門港湾特定建設工事共同企業体
●2期空港島護岸築造工事(その8)
みらい・国土総合・日本海工・吉田特定建設工事共同企業体

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