建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2004年4月号〉

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歴史的建造物保存地区に洗練された住宅

高齢者世帯と若年世帯とのソーシャルミックスを図り、良好なコミュニティを形成

北海道建設部住宅課 函館市道営住宅弥生町団地

北海道建設部住宅課は函館市道営住宅・弥生町団地の建替事業を進めている。
函館市弥生町は歴史的建造物や坂道街路などの観光資源の多い西部地区に位置し、市の都市景観形成地域にも指定されている地区。弥生町団地はこれらの観光ゾーンから少し外れた静かで落ち着いた佇まいの街並みに位置している。
既存の建物は昭和43年に建設されたが、経年により老朽化しており、耐震診断の結果、耐震性に問題ありと判定。また、現敷地は函館市都市景観条例によって建築物の高さが13m以下に規制され、現有戸数の確保は困難であることから、平成13年度に政策空き家に指定されていた。この移転の受け皿として、東坂団地のほか、的場町団地や既設道営住宅への移転計画を図るとともに、昨年12月から建替事業に着手していた。

整備にあたっては、坂の町・函館の中でも主要な坂道街路である弥生坂や、都市景観形成建築物に指定されている弥生小学校、通りに建ち並ぶ歴史的な和風・洋風建築などと連続性を保ち、静かな佇まいの環境を最大限に活かした計画とした。
住棟計画については、再入居世帯の8割は高齢者世帯であることから、高齢者が居住する住宅の設計に係る指針の推奨レベル(住宅性能表示5相当)にできる限り対応し将来的なユニバーサルデザインを目指した設計とする。
具体的には、(1)出入口建具のガラスは、桟付建具として1枚あたりのガラス面を小さくする。(2)開き戸をレバーハンドルとし、玄関錠はロータリーシリンダー錠など、ピッキング被害を受けにくいものとする。(3)押入襖は汚損による張り替え負担を軽減するため、フラッシュ戸とする。(4)スイッチ・コンセントは大型ワイドハンドル式とする。(5)共用廊下の幅は1,400mm以上確保するとともに、車椅子とのすれ違いを可能にするため1,800mm以上の幅員を有する部分を設ける。(6)共用廊下に面する各戸の玄関扉の廊下側にはアルコーブを設ける。(7)階段には照明を複数設置し、踏面に影ができないようにするとともに、三路スイッチを設ける。(8)共用廊下、階段仕上げは、滑りにくい仕上げとし、誰もが住みやすい設計とした。

また、将来的な若年世代とのソーシャルミックスが図れるよう、花畑や野菜作りなどが楽しめる共用花壇と、それらの道具を収納する共用物置を整備。各階には立ち話ができる「ポケットコーナー」を配置した。
さらに地域住民を含めて交流の場となる眺めの良い屋上テラスと、テラスに面してコモンスペースを整備して良好なコミュニティが形成できる計画となっている。

住戸個室内からは、海への眺望を生かすため、2〜3階の共用廊下を開放型とするほか、温かい日射しと函館山への眺望を生かすため、敷地南側を開放。各階廊下の手摺下部は吹き込んだ雪を簡単に掃き出せるよう、安全性を考慮した範囲で外部に開放した構造としている。
構造・階数は鉄筋コンクリート造・3階建て。外部階段室や南東側スロープは鉄骨造とし、コスト縮減を図った。工法は門型ラーメン工法を採用。構造躯体(スケルトン)と内装、設備等(インフィル)を分離することによって住宅の長寿命化を図っている。完成は平成16年10月を予定している。

函館市道営住宅新築工事(弥生町団地)

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TEL. 0138-45-3111
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TEL. 0138-46-1516
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TEL. 0138-42-8045
株式会社川股設備工業
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函館市宇賀浦町16番3号
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