建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2004年4月号〉

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特集・わが国の文教施設整備最前線

「農業・食品・環境」の3分野を柱とした北陸で唯一の生物資源環境系単科大学が誕生

平成17年4月の開学を目指し施設建設工事が進む

石川県立大学(仮称)

グローバル経済化で、日本の産業競争力の低下が懸念されて久しい。このため、我が国においては、「環境」、「it」、「バイオ」、「ナノテク」の4分野での産業発掘戦略による産業競争力の再構築と経済の活性化が指向されている。
石川県においても、デフレ経済による県産業の活力維持が懸念され、世界的な大競争時代に通用する県産業の確立が緊急の課題となっている。このため、県としては、これまで、北陸先端科学技術大学院大学大学、金沢大学、県・民間の研究機関などを中心に「ナノテク」、「it」分野の研究開発を振興・支援してきた。
また一方、石川県は、白山連峰から能登半島まで森林・耕地が県土の約80%を占め、日本海にも面することから、豊かで多様な「自然と風土」を有している。このため、県としては、生物資源をベースにした新産業の創出と有為な人材の育成等によって、農村地域の産業振興・活性化を図り、県土の均衡ある発展を目指すこととし、「バイオ」・「環境」に関する教育・研究開発の拠点として、「石川県立大学(仮称)」を設置することとした。
設立にあたっては、昭和46年に設置された石川県農業短期大学を、生物資源の開発・利用を主体とした学術を教育研究するための4年制大学に再編整備する。4つの教育研究目標を掲げて、有為な人材を育成すると共に、地域社会・産業の持続的発展に貢献することとしている。
施設は、全学共同利用が可能な共通施設棟と、3つの学科棟を併せた大学本校舎、既存校舎を改修した校舎別館、道路を挟んだ敷地北側に配置された生物資源工学研究所(仮称)によって構成される。
共通施設棟
管理部門、図書・情報センター、共通講義部門、福利厚生部門で構成され、プラザ、パティオ、ラウンジの交流空間を動線の要として、各部門を配置。管理部門はプラザの西側で、アプローチから近く、外来者などへ配慮した施設とした。
図書・情報センターはアプローチ正面に配置し、開かれた大学をアピール。共通講義部門はプラザの東側で南北に配置し、他部門や学科棟から往来しやすい計画となっている。特に大講義室はプラザとエントランスホール吹き抜けの双方に面し、大学の核として位置づけた。
食堂などの福利厚生部門はプラザの南側に配置し、白山連峰への眺望が広がる良好な環境を確保した。
▲図書・情報センター ▲学生食堂
学科棟(生産科学科棟、食品科学科棟、環境科学科棟)
学科ごとに独立した棟として計画した。1階には主に講義用実験室などの共用施設を配置。2,3階は専門の研究室、教員用実験室などを配置した研究実験ゾーンとした。
研究実験ゾーンでは、教員用実験室、教員研究室、専攻生室を1つのユニットとして計画。恒温室など特殊な実験室は共通機器室として各フロア1ヶ所にまとめ、研究・実験活動の効率化を追求している。
校舎別館棟
既存棟を改修し、小講義室など共通講義棟として利用する。改修にあたっては、内部階段、エレベーターを増築し、バリアフリーに配慮。1階および2階の渡り廊下により共通施設棟と連結する計画とした。
生物資源工学研究所(仮称)
既存研究所の現在の動線を活かしながら北側に増築する計画とした。配置計画にあたっては、中庭を囲んだ回遊動線を持つ既存研究所の平面を活かし、北側に廊下を延長して新設の研究室、実験室などを設置した。
1階は現研究所の規模拡張として計画し、2階は新設のdna分析技術教育センターとして計画した。また、中庭に面してラウンジを設け、研究環境の向上に配慮している。
共通施設棟、学科棟は平成16年8月末竣工予定で、現農業短期大学校舎より移転した後、既存校舎本館解体工事を行い、校舎別館増築・改修工事、プロムナード整備などを行う。
生物資源工学研究所(仮称)は、現附属農業資源研究所に対する増築工事を行い、平成16年10月の利用開始を予定している。
将来的には大学院の設置も予定しており、より総合的かつ実践的な教育・研究の場として県内の産業発展に貢献し、地域社会に根ざした活動によって広く県民に親しまれる大学となることを目指す。
開学は平成17年4月を予定している。
教育研究目標
(1) 自ら課題を探求し、解決する知識と行動力を備えた人間性豊かな人材の育成
(2) 農業・食品・環境の3分野を柱とし、バイオテクノロジー等先端科学技術を用いた教育研究
(3) 実効ある産学官の連携を図り、共同研究や研究成果の提供など地域産業への貢献
(4) 生涯学習や多様な学習機会の提供や国際社会への貢献を通じて世界や地域に開かれた大学の設立
校舎設計の理念
(1) 施設の配置構成により「連携と交流」を表現し、動線の交わる位置にパティオ・ラウンジ等の交流空間を設け、創造性豊かな発想を生み出せるゆとりある建築空間
(2) 研究室と実験室の繋がりを考えたユニットにより学科棟を構成し、将来の総合研究の場となる大学院棟の増設を想定した高効率な実験・研究空間
(3) 風力発電・太陽光発電など、自然エネルギーの利用や、パティオによる自然換気・通風の促進、リサイクル製品の活用など、地球環境保全に配慮したエコ・スクール
建築概要
共通施設棟: RC造一部SRC造、地上3階、延床面積8,613.81m2
学科棟: RC造、地上3階、延床面積11,295.63m2
校舎別館: RC造一部s造、地上4階、延床面積1,820.64m2
生物資源研究所(仮称): S造、地上2階、延床面積3,347.12m2
バイオ・環境技術の最先端へ―石川県立大学(仮称)
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