建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2004年3月号〉

ZOOM UP

特集・わが国の文教施設整備最前線

医療と人間性が調和し、世界に向けた先進・独創的な教育研究の場を形成

岐阜大学医学部の大規模移転が進捗中

岐阜大学医学部

岐阜地域の中核医療機関として医療の発展を支えてきた岐阜大学医学部の移転が着々と進んでいる。同学部のこれまでのあゆみと、移転に向けての取り組みについて特集する。
▲医学部本館・医学部附属病院は今年6月の使用開始を予定
岐阜地域の中核医療機関として医療の発展を支えてきた岐阜大学医学部の移転が着々と進んでいる。同学部のこれまでのあゆみと、移転に向けての取り組みについて特集する。
岐阜大学医学部附属病院は、明治8年の岐阜県公立病院、同附属医学校開設以降、130年余りにわたって地域の医学教育の場として、地域の先進医療の発展を支えてきた中核病院である。
また世界に向けた先進研究の場としても、再生医科学の分野において世界的に注目される研究成果を挙げるなど、我が国を代表する研究教育機関として期待を集めている。
▲医学部本館
医学部附属病院の沿革
岐阜大学医学部附属病院のルーツは明治8年8月の岐阜県厚見郡今泉村本願寺出張所(現岐阜市西野町西本願寺別院)に岐阜県公立病院・附属医学校が開設されたことに遡る。その翌年には現在地である司町に移転。
その後、幾多の変遷を経て、現在の直接の母胎となったのは昭和19年に開設された岐阜県立女子医学専門学校で、これにより岐阜県病院は岐阜県立女子医学専門学校附属病院となる。
昭和39年には岐阜県立医科大学が国立岐阜大学に移管し、岐阜大学医学部となって現在に至っている。
医学部附属病院の研究・教育体制
同学部の理念は地域性、独創性、活力、倫理性を軸とした「医療と人間性の調和を目指した医学教育の場の形成」「世界に向けた先進・独創的な研究の場の形成」である。
同大学ではこれを実現すべく、岐阜市北部への大規模移転を計画。平成14年度に学部・研究科の革新的な組織替えを実行した。
これにより、医学部医学科は現在5大講座34分野となり、大学院医学研究科はひとつの一般専攻系と、ひとつの独立専攻系に再編。医療の高度化・多様化に対応できる組織体制と、研究教育体制の充実を図った。
さらに医学部の理念を具現化するものとして
(1)既存講座にとらわれない学部及び大学院教育
(2)問題解決能力の育成、総合的かつ実践的知識の取得、自己学習及び生涯学習の慣習、対人的関係の向上などを図るための少人数・問題解決型の能動的教育法であるテュトーリアル教育のさらなる発展
(3)模擬患者参加型臨床医学教育による医療の質的向上
(4)クリニカルクラークシップ型臨床実習による医学・医療全般に通じる幅広い知識と倫理性を持った医師の養成
(5)学部内、学内、国内外の研究施設及び企業との共同研究体制の確立
などを掲げ、国境・時代・専門を越えて活躍する人材の育成を目指している。
▲病棟4床室モデルルーム
新キャンパスの施設計画
新キャンパスの施設構成は病院ゾーンと医学部ゾーンに分けられ、それぞれの利用者に分かりやすい計画となっている。
病院ゾーンには病院本館のほか、看護職員宿舎、エネルギーセンターを配置。医学部附属病院は、診療部門、外来部分を3階までのフロアーに集約配置し、その上に病棟を積み上げる複合型を採用している。少ない階層移動で受付から診療・会計まで行えるよう、利用者の動線を極めて単純化・短縮化した。
医学部ゾーンでは医学部本館、生命科学棟、将来構想建物である医学部教育・福利棟を配置。校舎・管理棟及び動物・ri施設などの専門性の高い教育・研究施設をまとめることにより、施設利用の向上を図っている。
さらにコミュニティ空間としてホスピタルパーク、アカデミックパークを一体的に計画することにより、快適な空間を創出した。これらの空間は医学部のみならず看護学科、既存キャンパスから利用できる屋外交流空間として闊達な交流を促す。
医学部校舎については、大部屋方式とし、高度化・多様化する教育・研究に迅速に対応できる設計とした。学生の利用が主体となる講義室は、閑静な屋外交流空間に面して設け、勉学に集中できる環境となっている。
平成13年度には全国の各機関・大学とのネットワークによる情報交換によって新しい医学教育の創造を発信し、連携を図る施設として医学教育開発研究センター(medc)が設置された。

▲ホスピタルパーク外観パース
医学部各施設へは移動しやすいようにデッキ状の連絡通路を設け、臨床エリアはできる限り病棟に近接させることにより迅速な移動を可能とした。
両ゾーンを繋ぐ動線は、医学部附属病院の動線軸である「ホスピタルストリート」からの連続性を大切にし、医学部ゾーンにおいてもそれと連続する動線軸「インテリジェントモール」を設ける。
この「インテリジェントモール」の機能・目的としては、
(1)ホスピタルストリートとの連続性の確保による医学部各施設との有機的連携と利便性の確保(医学部の一体感)
(2)施設整備(増築)が行いやすい施設整備の軸としての機能(永続性の高い医学部の発展軸)
(3)「専門性の高い研究・教育ゾーン」と「共用性の高い教育・研究ゾーン」を明確に分離することによる使いやすさと施設管理の確保
を掲げており、学生・教員・研究者・事務職員それぞれの垣根を越えた交流を促す計画としている。
建物は既に病棟・診療棟が昨年12月に竣工。医学部本館についても今年1月に竣工している。現在は生命科学棟(16年12月竣工予定)の整備が進められているところだ。
新病院の取り組み
新病院では、重点課題である「intelligent hospital構想」の一環として、電子カルテ、フィルムレス、ペーパーレスシステムの構築に取り組んでいる。このシステムは地域医療との連携にも貢献するものであり、県立岐阜病院、岐阜市民病院などとも共同して開発を進めている。
また、平成15年度には附属病院に栄養管理と感染制御による全人的サポートを行う「生体支援センター」並びに患者や家族の経済的・心理的な悩みに対して相談を行う総合医療相談室、地域医療機関との病診連携強化を推進する2つの機能を有する「医療福祉支援センター」を設置している。
今後の移転計画
移転先は岐阜市柳戸1番1で、今後の移転計画としては、今年6月1日に医学部附属病院の開院、医学部の授業開始を予定。医学部基礎・臨床関連分野などについても同じ時期に移転を予定している。

▲外観パース(南西面より)
施設概要
・医学部附属病院
構造:鉄骨鉄筋コンクリート造 (免震工法) 地上9階建
敷地面積:124,337m2
・臨床研究棟(医学部本館)
構造・規模:SR8 延べ面積:15,310m2
・ 総合研究棟(医学部本館)
構造・規模:SR8  延べ面積:14,580m2
・ 総合研究実験棟(生命科学棟)
構造・規模:R5 延べ面積:5,680m2
岐阜大学医学部臨床研究棟新営工事 岐阜大学(柳戸)医系総合研究棟新営工事 岐阜大学(柳戸)総合研究実験棟新営その他工事
HOME