〈建設グラフ2000年3月号〉

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滝沢ダム

水資源開発公団

荒川水系最大のダムを建設

埼玉県大滝村で整備が進められている滝沢ダムは、貯水量が6,300万m3で荒川水系では最大のダムとなる。
荒川流域は地下水が豊富で、古くから利用されてきたが、近年の急激な都市化に伴い人口の増加と生活水準の向上によって、水道用水の需要が増大。のみならず、産業の発展に伴う工業用水の需要も飛躍的に増加した。このため、地下水の過剰な汲み上げによって地盤沈下を引き起こす事態となったことから、ダム貯水による用水確保を行うことになった。
すでに荒川水系では、浦山ダム、合角ダム、有間ダムのほか第一貯水池などが整備され、稼働している。しかし現段階では、河川の流量が十分の時にしか利用できず、渇水時の取水制限は不可避の状況にある。このため、渇水時の水需要に応えられる大型ダムの必要性が高まっていた。そこで計画されたのが滝沢ダムである。

水道用水としての新規利水は、埼玉県の水道用水として最大毎秒3.68m3、皆野・長瀞水道企業団水道用水として最大毎秒0.06m3、東京都の水道用水として最大毎秒0.86m3の取水が可能となる。また、ダムからの放流水を利用して埼玉県が最大出力3,400kwの発電を行う。
既得取水の安定化・河川環境保全においては、荒川沿岸の既得用水の安定化と河川環境保全に必要な流量を確保する。水質保全のためには、放流水質の冷水・濁水や富栄養化による影響を下流に及ぼさないため、選択取水設備が設置される。動植物の保護のためには、自然環境への影響を極力抑えるため手を加える範囲を少なくするとともに、改変地については地域本来の自然植生の復元に努める。貴重種については、移植などの有効策を講ずる。この他、周辺の小動物などが貯水池の水辺に安全に移動できるよう回廊などを設置する。また、ダム建設中及び建設後においても継続的に影響調査を行う。
景観対策としては、宅地や畑として利用されてきた滝の沢地区や土捨場などの跡地は、貯水池を含め、新たに出現する環境と併せて、ダムを訪れる人々に親しまれるよう環境を整備するとともに、周辺の自然と調和した環境を創造するための整備を行う。
また、貯水池やダム、周辺施設は、設計段階から景観に配慮したものにする。道路周辺のコンクリート壁や盛土面・切土面の景観対策として、植生を導入するための基礎資料を得る植生実験を行う。

洪水調節に関しては、ダム地点の計画高水流量が毎秒1,850m3のうち、1,550m3の洪水調節を行う。この1,850m3という計画高水流量は、100年に1度の割合で発生することが予想される規模の洪水流量だ。洪水時にはダムに流入してくる水量が増え、毎秒100m3を越えると洪水調節を始める。放流量は100m3から300m3で、残りは貯留することになる。
ダム本体の構造については、提体やその基礎地盤が予想される荷重(自重、水圧、地震など)に十分耐えられる設計となっている。特に、提体がずれたり、転倒することなく、また提体内部が破壊しないことを設計の基本条件としている。
完成は、平成19年度の予定。


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