建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2003年11月号〉

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特集・港湾新時代〜世界の港湾立国へ〜

外貿貨物取扱量は21年連続トップ

愛知万博を機に世界に開かれた国際港として飛躍

国土交通省 中部地方整備局 名古屋港湾・空港整備事務所

日本列島の太平洋岸のほぼ中央に位置する名古屋港は、名古屋市、東海市、知多市、弥富町、飛島村に囲まれた広大な港で、海と陸を合わせると名古屋市のほぼ1/3の大きさ(約120km2にもなる。中部地方の玄関口として人・物・情報の流れをサポートし、名古屋港を通じて供給される貨物は、国民の生活や地域の産業に密接に関係している。2002年には、取扱貨物量がおよそ1億6千万トン以上に上った。
名古屋港の占める地位
名古屋港の港湾区域面積は、約83km2でナゴヤドームの約1,700倍に相当し、臨港地区面積は約41km2で、約820倍にも相当する。
背後圏の経済規模を見ると、中部圏の圏内総生産の合計は、約7,400億米ドルで、ブラジルやカナダのgdpに匹敵する。また、人口は、約2,100万人で、マレーシアやサウジアラビアとほぼ同数という集積度の高さだ。
圏内総生産は、製造品出荷額ベースで、我が国の1/3を占める工業の中枢である地域性によるもので、中でも輸送用機械や一般機械の生産量が多く、国内をはじめとして世界各国に製品が輸出されている。
そうした経済力を背景とする名古屋港がもたらす、経済効果は約24兆円にも及び、県内だけでなく、中部圏域の重要な経済・生活基盤となっている。また、名古屋港の稼働によって誘発される雇用数は、約66万人にも達する。
外国貿易貨物は五大港(東京港、横浜港、名古屋港、大阪港、神戸港)の中でも21年連続トップで、総取扱貨物量は約1億5800万トンを記録した。総取扱貨物量は横ばいだが、外貿取扱貨物量については、わずかながら増加している。
名古屋港に入港した船舶の総トン数の累計は、約2億トンに上り、五大港の中で2番目だが、コンテナ貨物量は、約3,300万トン(約179万teu)で、トップクラスだ。
このコンテナ取扱量は、1995年の阪神大震災の影響で急激に増加した後、数年は横ばいで推移していたが、1998年以降、輸入貨物が急激に増加し、2000年には輸出量を超えることになった。
▲名港トリトン(伊勢湾岸自動車道)
▲名古屋港水族館新館
大深度化と中部国際空港との連携を目指す
こうした不動の実力を誇る名古屋港の将来像と、整備上の課題は何か。資源の乏しいわが国において、海外との交易は重要だ。中部の沿岸はわが国でも有数の航行船舶の多い海域で、大小さまざまな船舶が航行している。地域の人々が安心して暮らすためには、安定した海上輸送を確保することが必要であるため、名古屋港湾空港整備事務所は、地域のニーズに対応した港湾機能の充実や航行船舶の安全確保に全力を挙げている。
また、近年では名古屋港に寄港するコンテナ船の大型化が進展していることから、コンテナターミナルの高規格化、大水深化が必要となってきた。このため、飛島ふ頭南地区には水深16mの大水深国際海上コンテナターミナル(耐震強化岸壁)の整備を進めている。
一方、中部国際空港も、国際ハブ空港として2005年の開港をめどに、着々と整備が進められており、成田空港や関西国際空港と互いに連携をとり、日本のゲートウエイとして航空旅客はもとより、物流貨物の容量拡大を目指している。
国際競争や市場動向に対応した迅速な物流サービス実現のため、また、国際航空輸送・国際海上輸送を自由に選択できるような複合的な物流体系を構築するためにも、中部国際空港との連携を推進する。
多様な産業を守るための安全度向上へ
グローバル化やアジア経済の急成長により、わが国の産業構造は大きく変化していることから、港を含む臨海部は、時代のニーズに対応した機能の再編・強化が課題となっている。
のみならず、中部地域のものづくりを通して発展してきた名古屋港は、産業や暮らしを支える機能が高度に集積しており、既存産業の再編や、従来の臨海部には見られなかった大型商業施設など、時代に対応した産業立地も始まっている。そのため、大規模地震時における緊急輸送などの確保も課題だ。
とりわけ、中部地域は従来から大規模な地震が発生し、大きな被害を受けてきた。近年では、東海地震や東南海地震などの発生も懸念されている。そうした大地震が発生しても、海上輸送は確実な支援手段であり、震災後の緊急輸送に活用することが可能で、この特性を活かし、地震に強い港湾づくりを進めることが必要だ。
そこで期待されるのが、浮体式防災基地である。これは、耐震強化岸壁を補完することを目的とした浮体式構造物で、地震災害などの緊急時には被災地に曳航し、主に伊勢湾内の港湾を拠点とした海上支援活動によって、被災地の救援に役立てるもの。
一方、高潮などの海からの脅威の回避も大切だ。わが国は台風の通り道にあり、とりわけ中部地域では、これまで伊勢湾台風にともなう高潮により、甚大な被害を被ってきた。伊勢湾、三河湾沿岸では、それを契機に高潮の被害から地域を守るため海岸保全施設の整備が進められた。
しかし、築後40年以上が経過し、老朽化も進んでいるため、これらの施設の改修を進めることが急務だ。そうして安全性を高めると同時に、被災した場合の危険箇所を想定したハザードマップの作成や、防潮施設の遠隔制御、地域住民への迅速な情報伝達を目的とした津波・高潮防災ステーションの整備など、ソフト面の施策も推進しなければならない。
▲名古屋港の全景
地域の暮らしを支える輸送・交流 機能の確保
名古屋港は人・モノ・情報の交流拠点として個性的な発展を目指すと同時に、物流だけでなく、フェリーや旅客船が就航する観光地及び大規模商業施設や、親水空間を備えたまちの一部として、沿線地域のまちづくりの促進を図るため、臨港鉄道西名古屋港線の複線化、電化、高架化によって、旅客鉄道として、2004年に供用する。
個性ある「みなとまちづくり」の推進
港まちという言葉どおり、港もまちの一部で、港のあるまちには大きな可能性があり、古くから港とともに大きく成長したまちが、日本には数多くある。名古屋港においても、まちづくりと連携した取り組みを進め、地域の資源を生かした個性的で活力ある地域づくりを行っている。
金城ふ頭においては、国際交流拠点の形成、商業・娯楽拠点の形成が進められている。また、ポートアイランドは船舶の大型化に伴い、航路の拡幅・増深と大型岸壁の整備に伴って発生する浚渫土砂を受け入れるために造られている。

▲シートレインランド ▲金城ふ頭駅完成予想図(整備イメージ) ▲海づり公園
まちづくりと一体となった親氷空間の形成 交流・海洋性レクリエーション空間の形成
中部国際空港の開港や「愛・地球博」の開催を契機に、愛知は世界に開かれた地域へと飛躍することが期待されている。その飛躍を支えるとともに、継続的な交流を実現するため、港に海の魅力を活かした交流空間や海洋性レクリエーション空間が形成されつつある。
一方、高度成長を続けてきたわが国は、経済的な発展を追求したため、多くの歴史的価値の高い建築物や自然環境を失ってきた。しかし、これからは世界との関わりの中で地域の独自性を発揮し、地域の自立した取り組みが求められることから、名古屋港に残る歴史的、文化的価値の高い施設を保全するとともに、教育の場や景観、観光資源として活用していく方針だ。
自然再生の推進
地域に暮らす人々が誇りを持てる美しい環境を、次世代へと伝えることは、現在そこに暮らす者の使命でもある。伊勢湾は波の静かな内海で、多種多様な生物の生息の地となっているが、その一方では、高度経済成長期における臨海工業地帯の整備により、多様な生物の生息地である干潟・藻場や、人々が海に親しむ自然海浜などの多くが失われた。
また、閉鎖性の強い水域である伊勢湾は、活発な産業活動による工場排水や都市への人口集中による生活排水などで水質も悪化した。
そこで、伊勢湾沿岸の良好な環境を保全するため、名古屋港と周辺海域におけるゴミや油回収などによる海洋汚染防止や、干潟や藻場の造成など、新たな沿岸環境の再生を進めている。
循環型社会構築への貢献
近年は、身近な環境問題だけでなく、地球規模での環境問題が大きな課題となっている。地球温暖化の原因になっている二酸化炭素の削減や将来的な石油工ネルギー源の枯渇に対応する省エネルギー化、新エネルギーの開発、さらには大量生産・大量消費・大量廃棄型の経済システムから脱却した循環型経済社会の構築が求められている。
これに対応して、名古屋港では独自の対策を図っている。臨海部の特性や既存ストックを活用したリサイクル拠点の構築、環境負荷の少ない海運の活用など、地球に優しい輸送システム(グリーンロジスティクス)の実現を通じて、循環型社会構築へ貢献する。
▲清龍丸 ▲白龍 ▲過去名古屋港へ入港した
最大のコンテナ船

名古屋港第三ポートアイランド等建設工事安全連絡協議会
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