建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2003年11月号〉

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特集・港湾新時代〜世界の港湾立国へ〜

恵まれた自然環境と、産業・技術の集積した物的生産基地として国土中枢の一翼を担う

海上交通の要衝・中山水道をさらに安全性の高い航行路に整備

国土交通省中部地方整備局 三河港湾事務所

▲三河湾
首都圏と近畿圏を結ぶ国土軸の中央にある伊勢湾、三河湾は、貿易立国を支え、実績を誇る産業・技術の集積と、恵まれた自然環境などの資質を背景とする物的生産基地として国土中枢の一翼を担う地域である。特に伊勢湾・三河湾は開発余力が大きく、世界に向けた表玄関としての役割を担っている。この両湾をいかに有効利用するかは、単に中部圏の問題であるばかりでなく、21世紀の多極分散型国土を形成する上でも重要な課題となっている。
三河港湾事務所(当時:衣浦港工事事務所)は、昭和34年9月の伊勢湾台風によって未曾有の大被害を受けた衣浦港を台風・高波などによる災害から守るとともに、重要港湾としての整備拡充を図るため設置された。
知多半島東側から渥美半島にわたって三河港及び衣浦港において、多目的国際ターミナルや臨港道路など、重要な港湾施設を管轄し、物流の効率化を図っている。
三河湾の概要
三河湾は面積約600km2で、伊勢湾の約1/4、東京湾、大阪湾の約1/2の大きさである。平均水深9.2mの浅い内湾で、中山水道と師崎水道を通じて伊勢湾と繋がり、中山水道の南にある伊良湖水道を経て太平洋に面している。
沿岸地域では古くから移動手段として船が使われ、海と人々が密接に関わり合いながら、特有の歴史的風土・文化を創り上げてきた。
内湾として特色ある海岸地形には美しい自然が数多く残っており、プレジャーボートや潮干狩り、釣りなどのレジャー、「日本の水浴場88選」にも選定されている海水浴場など、一年を通して人々の暮らしに豊かさと潤いを与えている。
また、「日本の重要湿地500」にも選定されている沿岸域には、渡り鳥などの鳥類や貝類、植物、周辺海域には世界最小のイルカであるスナメリをはじめとする貴重な生物が生息している。かつて三河湾内の砂浜でウミガメが産卵していたこともあり、武豊町には「浦島伝説」が伝わっている。
▲蔵の街並み(半田市) ▲潮干狩り ▲スナメリ ▲渡り鳥・野鳥(渥美町・伊川津)
周辺地域の一次産業
三河湾周辺は広大な農業地域が広がっており、全国第5位の農業産出額を誇る愛知県の約71.6%を占めている。これは東京湾や大阪湾にはない大きな特色となっている。とりわけ、明治用水が通る安城市周辺や、豊川用水が通る渥美半島周辺は農業(耕種)が盛んな地域であり、産出額で愛知県全体の5割を占めている。畜産は渥美半島周辺で盛んに行われており、産出額で愛知県全体の約4割を占める。
漁場環境としては内湾であるため、天然の栄養が行き届き、古くから多くの人が漁業に携わっている。特にあなご類、あさり類、板のり、うなぎなどは全国的に見ても上位の生産高を誇っている。
▲あさり ▲あなご
三河湾における干潟・浅場の変遷
1951年時の干潟〜浅場
埋め立て等によって失われた干潟〜浅場(1999年)
海域環境の悪化
三河湾は奥行きに対して間口の狭い「閉鎖水域」で、外海との海水交換が少ない水域である。これにより多くの汚濁物質が滞留、水質・底質が悪化しやすく、人々の経済活動が進展する一方で、豊かだった自然が減少している。三河湾は閉鎖的な水域であるというだけではなく、季節によって潮流や風が要因となり海水交換性が低下しやすいという地理的特徴を持っている。
平成5年8月に海域の全窒素及び全リンの環境基準及び排水基準が設定されたことに基づいて、愛知県においても、三河湾の全窒素及び全リンに関わる環境基準の水域累計指定を行った。平成10年度調査結果cod(化学的酸素要求量)では衣浦港及び渥美湾では環境基準を満たしていない水質汚濁の状況であることがわかった。
三河湾でも湾口部の一部を除いて有機汚濁が広範囲にわたって堆積し、この状態では底泥から溶出する栄養塩類も増大して海域の富栄養化をさらに促進し、結果的に有機汚泥の体積を助長するという悪循環を引き起こす原因となり、その過程で赤潮や貧酸素水塊が発生することになる。
一方、三河湾奥部(豊橋市6漁協)のアサリの漁獲高は1966年には約14千トンだったが、1971年には約2千トンと減少。この減少量(約12千トン)は平成11年度の愛知県におけるアサリ漁獲高(約10千トン)に相当する量で、今後のアサリ漁業の衰退と、水質浄化能力の低下が危惧され、アサリの生息に適した干潟・浅場の復元が望まれている。
三河湾では、埋め立てや干拓などで1978年から1992年までに176haの干潟が消滅し、1992年時点で残存している干潟は、一色干潟(矢作古川河口付近)、六条干潟(神野新田など)、汐川干潟、伊川津干潟(福江干潟)など1,549haと言われている。
▲六条干潟
干潟は水生生物の生息・生育や水鳥などの生息地として重要であるとともに、流入する有機物や栄養塩類を物理的作用や生物的作用によって除去し、海水を浄化する機能を持っており、特にアサリなど二枚貝類の取り込みによる浄化能力が大きい。三河湾の干潟の減少、また沿岸域の開発に伴った自然海岸の減少によって浄化能力が低下し、様々な環境問題が起きている。

▲苦潮(貧酸素水塊) ▲赤潮 ▲田原地区
 シーブルー事業の一環として
 中山水道浚渫土砂をまいて
 作られた干潟
シーブルー計画
これらの環境問題を改善するため、同事務所では、中山水道航路の浚渫で発生する良質な砂を利用した覆砂(良質な砂を海に撒き、砂でヘドロの表面を覆う)によって汚染物質の海中への溶出を抑制し、水質の改善を図るシーブルー計画を進めている。
また、このプロジェクトでは海辺に良質な砂を使い、干潟を形成したり、海底を浅くして植物などの自然浄化作用を高める工夫も進め、当該海域の水質や底室の改善を図るとともに、貝類などの底生生物の回復による海水浄化機能をも期待出来る海域環境創造事業を実施している。
▲中山水道航路
▲浚渫
中山水道航路整備
中山水道は、三河湾の湾口部に位置し、三河諸港へ出入港する海上交通の要衝であるが、浅瀬や暗礁が点在するため、大型船舶の運航が制限されている。また、付近は渥美湾、衣浦湾、伊勢湾に出入りする船舶が合流・分流する地点であり、船舶が複雑に航行する海域であるとともに、伊勢湾内屈指の好漁場であることから、数多くの漁船の操業場でもあり、海難事故の危険性の高い海域とされている。
そのため、三河港湾事務所では、安全でスムーズな通航ができるよう、平成11年から中山水道航路の整備に着手している。
三河湾では平成10年11月には既設の神野埠頭7号岸壁を改造したコンテナターミナルもオープンし、さらに新設中の8号岸壁では、コンテナ貨物を取り扱うことを念頭に置いた多目的埠頭の整備も着々と進められており、中山水道航路の早期整備が望まれている。
事業は平成元年に開発保全航路に指定され、それ以降、各種の調査を実施するとともに、漁業補償交渉などを経て平成9年に漁業補償契約が調印。平成11年度から本格着工となった。
中山水道航路付近を大型船舶がスムーズに運航するためには、暗礁を取り除き浅瀬を掘り下げる必要があり、3万トン級の大型船舶が通行する為には水深14mが必要となる。
施工にあたっては、グラブ式浚渫船で海底の土砂をグラブバケットで土運船に積み込み、積み込まれた土砂を押船により覆砂地点まで運搬。浚渫土砂は覆砂、干潟や浅場の造成のために運搬してきた土砂を投入する。
この中山水道の航路整備により、大型船舶が喫水調整をすることなく三河湾に直接入港することができるようになり、輸送費を抑えることが可能になる。また、立ち寄り港への運航経路が改善され、効果的なスケジュールを立てられるようになるとともに、船底を損傷するといった不安が無くなり、安全な航行を実現することが可能となる。
平成13年度には航路北側400mについて掘り下げを完了しており、全体の完成は平成16年度を予定している。

中部地域のネットワークを支える
三河港湾の整備に貢献



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