建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2003年10月号〉

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特集・わが国の文教施設整備最前線

磁器質タイルを用いて歴史感のある外観に

東京大学 医学部総合研究棟(U期)

医学部総合研究棟の設計コンセプトは、東大本郷キャンパスの絶好の学術的環境を継承しつつも、高密度・高機能の要請にこたえる施設を創出することで、施設用途は医学系研究実験施設となる。
配置計画と動線計画は、キャンパス全体を南北に貫く広大な主要緑地軸側を建物の正面として捉え、好適な外部環境と共演するファサードとアクセス動線を計画。医学部1号館は、本研究棟と一体的に利用することにより、全学的な共同利用スペースなどを有する総合研究棟として積極的に有効活用を図る。隣接する既存医学部1号館との一体利用のため、1階と2階で室内の渡り廊下で接続する。
医学部1号館との延焼の恐れのある箇所ができることを避けるため、建築基準法上一棟扱いとなるよう計画する。
オープンスペースのネットワークを形成
高密化・高層化が進むキャンパスで、コロネードや屋上テラスなどを積極的に活用する。コロネード沿いは低木の植栽帯を配置し、構内の緑の景観づくりとオープンペースの快適性の向上に配慮する。
メインエントランスは、東側道路に面した敷地中央に設け、分かりやすく、使いやすい動線計画とする。また、休憩・交流スペースとして待合いロビーを配置する。
サ一ビス動線は、計画建物の南北妻面に設置した搬入口からとし、構内道路からアクセス可能な構造にする。各階廊下の突き当たりには、搬入用の窓を設け、エレベーター規格外の大型物搬入用サービス動線とする。
平面計画は、各室の配置計画の考え方として、建物の中央及び両端にバランスよく避難階段、エレベーターを配置し、認知しやすい避難経路を計画する。実験室、研究室をゾーニングして配置し、フレキシビリティのある実験・研究環境とし、研究室ゾーンは大部屋対応とする。
13階の食堂・ラウンジは、吹き抜けと内部階段を計画し、14階の大会議室との連続性をつくり、相互の有機的活用を促進する。
設備室、パイプシャフトなどについては、熱源機械室、消火ボンブ室を地下1階に、電気室を1階に配置。隣接する共同溝よりインフラを引き込む。
RI階の機械室は、地下1、2階及び1階に配置し、専用のダクトを屋上まで建ち上げる。実験用ダクトは安全性、更新性に配慮し、東西に設けられたバルコニーのシャフトに分散配置する。屋上にはドラフトチャンバー用の排気ファンを設置する。
完成後の維持管理においては、空間や設備をモジュール化・ユニット化し、メカニカルボイドなどの設計手法を用いることで、フレキシビリティが高く、更新やリニューアルに配慮する。
バリアフリー対策としては、建物出入口、内部廊下の床に段差を設けず、1階には身障者用便所を設置する。
立面、断面計画については、パラペット高さを72.1mで揃え、スカイラインを整える。階高は、1皆は電気室の必要天井高さ及び2重ピットを考慮し、階高を6.45mに設定。実験室は、設備配管、配線、ダクトの設置を考慮した天井懐を確保し、天井高3m、階高を4.5mと設定。地階は、熱源機械室、ri機械室の必要高さを確保するため、階高を地下1階は6.15m、地下2階は5.8mに設定。廊下、便所などの共用部の天井高は2.4mとする。
共通スペースは、全学的視点から施設の効果的・効率的利用を促進。学部ごとの整備から学部を越えた全学共用の整備ヘ、施設の固定的利用から弾力的利用への転換を図る。
設置規模は、各階に3,651m2、RI関連は1,592m2、共用実験室2fに391m2、13fに626m2、p2/p3施設に1.042m2。この他、各階evホールに面し、共用のリフレッシュコーナーを設置する。
この総合研究棟の利用は、主に教育研究の優れた研究室、先端的独創的研究のプロジェクトチーム、学部学生・大学院学生の萌芽的研究、新研究領域などの学内組織などを想定している。
外装デザインは、キャンパス内の歴史的建築物のデザイン様式を意識して、三層に分節化したデザインとし、下層部の高さは保存建物のスカイラインと呼応させる。中高層部は、周辺建物に圧迫感を与えないよう、水平ラインを基調とした軽やかなデザインとする。外装仕上は、磁器質タイルとし、低層部は保存建物との連続性を持たせた色調、中高層部は軽快感を演出する色調を選定する。建物の正面中央部分は、ガラスカーテンウォール仕上とし、周辺景観を映し込ませる。
省エネ対策としては、自然エネルギーの積極活用に努めている。自然採光に配慮する他、共用部の自然排煙を導入して自然通風を確保。また、外部からの負荷を低減するため、コンパクトで外壁の少ない建物形状を計画している。そのほか、屋上緑化スペースやバルコニーの設置などにより、建物への日射を遮蔽したり、共用部の人感知センサーの設置によってエネルギーの無駄を解消する。
建設コスト縮減に向けては、スパン及び階高をモジュール化することで、建設部材の標準化、エ業化に配慮。建物の各部のディテールは出来るだけ既製品が利用できる標準のものを採用。合成デッキプレートの採用による工期短縮と、ライフサイクルコストを総合的に低減可能な施設として計画。耐久性、耐侯性がありシーリングを多用しない外装材など、メンテナンスの頻度が少なく、清掃がしやすいものを選定した。
設計概要
◆建物規模
 構造:鉄骨鉄筋コンクリート増
 面積:T期 約16,000m2、U期 約18,200m2 計 約34,200m2

 階数:地上14階、地下2階
◆法的規制
 都市計画:都市計画区域
 地域・地区:第1種中高層住居専用地域、準防火地域
第1種文教地区、第3種高度地区
 日影規制:日影規制(二)
 形態規制:建築ぺい率60%、容積率300%
◆諸室の数及び規模
 (I期)分子生物学実験室、電気生理学実験室、P2実験室、培養室、分子遺伝実験室、飼育室、セミナー室、教授室、大会議室他
 (U期)中央実験室、低温室、RI機械室、共同実験室、標本作成室、電子顕微鏡室、P3実験室、研究室、食堂他
◆スパン
 ・東側実験室ゾーン:間口寸法6.4m×奥行き寸法:10.170m
 ・西側実験室ゾーン:間口寸法6.4m×奥行き寸法:9.5m
 ・西側研究室ゾーン:間口寸法6.4m×奥行き寸法:9.5m



【医学部総合研究棟(U期)】
●建築工事/大成・戸田・辻特定jv

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●電気設備工事

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●機械設備工事/新日空・須賀・竹村特定JV

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三井第二別館
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TEL. 03-5688-8100



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