〈建設グラフ1999年2月号〉

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東京大学施設整備事業

『三極構造構想』のもと、既存キャンパスの再開発と新キャンパス整備などで総合的な整備を推進
駒場U地区に「生産技術研究所」、柏新地区に「物性研究所」

構想の具体化に向け、駒場Aキャンパスに『生産技術研究所』、柏キャンパスに『物性研究所』の建設事業を進めているところである。
東京大学は、平成4年6月に三極構造構想を内容とする「東京大学キャンパス計画の概要」を策定した。
同構想は、@老朽・狭隘化の顕著な教育・研究環境を改善する「本郷・駒場地区等の既存キャンパスの再開発」を行うとともに、A学術の発展・高度化に対応する21世紀に向けた“アカデミックプラン”実現のため新たに千葉県柏市に新キャンパスを取得し、本郷・駒場、柏地区の3地区を軸とし、検見川地区なども加えた関連キャンパスの総合的な整備充実を図ろうとするもの。また、東京大学の教育研究の将来構想をキャンパス面に投影するとともに、政府機関の一極集中の是正という社会的要請に配慮しつつ、各キャンパスで展開される活動の有機的関連を確保するため、日常的往来の可能な位置に主要キャンパスを配慮しようとするものだ。


<本郷地区キャンパス>
三極構造の重心的キャンパスとして、伝統的な教育研究の型(ディシプリン追求型)を基礎としつつ、学部後期課程から大学院に及ぶ教育と研究並びに高度医療の研究を行う。

<駒場地区キャンパス>
全学の学部前期課程教育を受け持つほか、異なるディシプリンの相互作用や社会との交流を基本として、学際的な教育と研究を行う。

<柏地区キャンパス>
教育研究の新たな展開の場となる新キャンパスを建設する。ここでは、成熟度の異なるディシプリンを配置し、多様性と融合により知的冒険を試み、新しい学問領域の創造を目指す。

生産技術研究所
現在整備が進められている施設のうち、『生産技術研究所』は、六本木キャンパスから駒場Aキャンパスへの移転に伴うもので、建物全体計画のうち第@期が整備された。
建設地は、東京都目黒区駒場4-6-1で、鉄骨鉄筋コンクリート造地上8階地下1階建、延べ面積11,500m2である。
研究室などのオフィス的用途の「高層棟」と、実験室を配置した「中層棟」で構成され、棟の間を吹き抜けのアトリウム「研究モール」とした特徴的な空間を創りだしている。また、中層棟の地階と1階を一体となった大空間として、様々な大型実験に対応できるようにしている。
T期では、大型風洞・無響室などの音響関連の実験施設を設けた。外観は、開かれた大学のイメージを意図として、アルミパネルなどの金属材を基調とした現代的な表層としている。

物性研究所研究棟
『物性研究所研究棟』は、物質の性質を電子や原子レベルで解明する物性物理学の研究施設で、新たな新キャンパスとなる千葉県柏市の柏地区キャンパスに新設される。
建設地は、千葉県柏市柏の葉5-1-5で、鉄骨鉄筋コンクリート造地上6階地下1階建、延べ面積24,500m2
駒場Uキャンパスの「生産技術研究所」と同様、建物の1階部分は開放的でリズミカルなピロティに計画され、その奥にガラス屋根を持つ巨大な吹き抜け空間のアトリウムが広がる。両施設とも、研究者や大学院生はもとより、市民・社会との連携を試みる場となる新時代のキャンパス理念を象徴している。
現在、柏新キャンパスでは、同大学がすでに取得した@期分11.6haの用地において、既存キャンパスからの研究所移転・整備を着々と進めているところである。

将来構想として、今後も新たな大学院研究科や共同利用施設などを新設・整備し、「学融合」という理念に基づいて成熟度の異なる学問を融合させることで、未来に向けた学問の創造をめざす。
このため、同大学用地に予定されている残り約25haの早期取得を積極的に推進していく方針だ。


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