建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2002年10月号〉

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次世代エネルギー資源「メタンハイドレート」の国際的研究拠点に大きく進化

大学における“ランドマーク”的存在に

北見工業大学 総合研究棟、ベンチャー・ビジネス・ラボラトリー

北見工業大学は、大学院の教育研究を主とした実験室・研究室や、共同利用の実験室からなる「総合研究棟」と、未利用エネルギーの開発研究を行う研究センターをはじめ、高齢化社会に対応する在宅支援技術開発を目指した「ベンチャー・ビジネス・ラボラトリー」との複合型施設を整備しており、これにより施設の共同利用と有効活用を一層図ることができるものと注目を集めている。
建設地は、北海道北見市公園町165番地の北見工業大学公園町団地構内。敷地面積181,170平方メートル、建築面積787平方メートル。構造・規模は、鉄骨鉄筋コンクリート造地上7階建、延床面積5,439平方メートルとなる。
今回の建設にあたっては、特に、平成13年4月に組織された「未利用エネルギー研究センター」が現存の建物(1号館)内に研究実験室1室、教授・助教授の教官研究室2室を確保していたが、狭隘な実験室と他学科の低温室を借用しながら行っていた教育・研究の環境改善を図る目的があり、今回新設する総合研究棟に新たな実験室・低温室を設置し、自然エネルギー「メタンハイドレート」などの“未利用エネルギーの研究・開発”の環境を整えることで、一層の研究成果に大いに弾みを付けるものとして期待されている。

「メタンハイドレート」は、寒地エネルギーの中でも未利用資源と言われるオホーツク海沿岸に埋蔵されている次世代エネルギー源のことで、これを活かす“未利用エネルギー資源の国際的研究拠点”を目指すための研究施設としても整備を図るものである。
また、「ベンチャー・ビジネス・ラボラトリー」は、インテリジェントソフトウェア技術を利用した福祉社会システム構築に関する“基盤技術の開発”が基本テーマとなっており、(1)「環境適応型ソフトウェア技術の開発」、(2)自動除雪ロボットや融雪機の開発などの「ロボット関連技術の開発」、(3)「在宅支援関連技術の開発」などの主な3分野が連携して、大学院生あるいは若手研究者にベンチャーマインドを持って社会で活躍できる人材教育・研究成果が挙げられるものと期待されている。

施設の主な計画としては、特に「共用利用スペース」を建物全体の約20%程度確保する計画であることから、共用実験室を設置し学術的・先端的なプロジェクト研究、共同研究、狭隘で大学院生を多く抱える研究実験室等からの申請により許可された者を、優先的に利用させ、整備された環境の中での教育研究の成果を期待している。
「実験室」は標準化を図り、幅広い研究テーマの変化に対応するため、性能の加算システムを採用し、研究テーマの変遷に応じたタイムリーなコストプランニングを実現し、イニシャルコストの低減を図る。また、間仕切り壁には、「グローバリゼーションの時代」に対応し、ガラスパーテーション、ローパーテーションを多用した中に軽量鉄骨壁も取り入れ、数年単位の様々な実験研究プロジェクトの変更にも対応可能な間仕切りとしている。特に、ガラスの多用は、視覚的・空間的にオープンな実験室を目指し、研究者のコラボレーションを誘引する。
このほか、「大スパン架構の採用」として、SRC造の外部構造と内部のs造の梁による架構で9m×11m、9m×8mの大きな空間構成とし、大実験室はもとより小割の実験室にも対応した空間のフレキシビリティーを確保する。
将来的には設備の変更に備え、十分な幹線ルートも建物の両サイドにそれぞれ確保する計画である。

学生の講義に使用する「多目的講義室」は、卒論発表、研究者発表、公開講座、シンポジウム、学会、会議等多目的に使用する部屋でもあり、ネットワーク対応の設備を有し、車いす使用者の利用にも配慮した120席固定のスロープ床教室とする。
また、学内全体を見ると学生の休憩・談話等のゆとりのスペースが不足していたため、総合研究棟においては3階と6階にそれぞれ約60平方メートルと90平方メートルのまとまったリフレッシュルームを設定した。
「地域性を生かした施設づくり」として、北見地方の高い日照率の利点を生かし、高さ29mの集熱シャフトを設け日照によるプレヒートを行い、各フロアヘの給気と実験機器の排気補償の給気に利用する。屋上は、空調室外機置場のほか、太陽エネルギー研究のソーラーパネルの設置及び来訪者の施設・学内案内のために歩行用の仕上げ、手すり等の設置に配慮している。
平面計画としては、平成12年度に実施の「施設の点検・評価」の結果を踏まえて、工学部6学科のうち次の3学科(機械システム工学科、電気電子工学科、土木開発工学科)については、現有建物内における大学院関連施設(研究・実験・ゼミ室)が他学科に比較すると特に狭隘であったため総合研究棟に配分を行っている。


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