建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2002年9月号〉

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南部坂地区道営防災ダム事業(上磯町)

農用地・農作物・農業用施設に甚大な被害を受ける

北海道渡島支庁・南部坂ダム

農地防災ダムである「南部坂ダム」が建設されている上磯町は、町の面積の約80%を占める森林と目の前に広がる海の豊かな恵みを生かした農林水産業と、町内で産出する石灰岩を利用したセメント工業などで発展してきたまちです。現在、町の活力となる基幹産業のさらなる育成のために『ふれあいで創る田園工業都市』のスローガンを掲げ、バランスのとれた地域の発展を目指しています。

人 口: 37,173人(平成14年1月末現在)
世 帯: 14,114世帯(平成13年1月末現在)
面 積: 262.43平方キロメートル
地 勢: 上磯町は、北海道の南西部に位置しています。南東部は道南の中心都市函館市、西部は木古内町に接し北部は大野町・七飯町と桧山支庁管内厚沢部町、南部は函館湾に面しています。
気 候: 道南にあるため、上磯町の気候は比較的しのぎやすく、春秋は温暖な日が多く、冬は割合季節風は強いものの積雪は少なく、住みやすいまちです。年間平均気温は3.4度、年間降水量は761mm(平成11年)で、農作物の栽培に適しています。

南部坂ダムの受益区域は、上磯町内を流下する普通河川の宗山川を中心に広がる水田・畑地帯です。宗山川は、蛇行の多い原始河川であるため、度重なる洪水によって農用地・農作物・農業用施設などが甚大な被害を受けてきました。このため宗山川上流に洪水調節用のダムを建設して、農業経営の安定化を図ることを目的としています。建設地は、上磯郡上磯町宗山川の中流部に位置しています。
宗山川上流は標高300m程度の急峻な山地ですが、ダムサイト付近の中流域は標高100〜200mで緩く傾斜する山地となっています。
ダムサイトの地形は、河床幅70〜80m、標高75m前後で、斜面の傾斜は左岸側で20度〜40度、右岸側で20度〜30度。ダムサイトの基礎地盤は、新第三紀鮮新世の富川層で砂質岩を主体とし、泥質岩、礫質岩を挟在しています。

南部坂地域の由来と南部坂ダムの名称

南部坂ダムの名称は、堤体下流約1.5kmの所にあった南部坂駅に由来しています。明治37年当時は、現太平洋セメントの峩朗鉱山と工場の間に軌道が敷かれ、台車5〜6輛を馬に曳かせたトロッコ運搬を行っていましたが、大正11年には電気鉄道に切り替えられました。
中間の南部坂駅(停車場)には、電源を供給する南部坂変電所が設置され、ここで上り下りがタブレット(単線鉄道の列車通行票)を交換して交差していました。6t鉱車10輛を牽引して、4台の16t電気機関車によるピストン輸送が始められ、近年まで行われていました。
こうした歴史ある南部坂駅の記憶を残すべく、南部坂ダムとされました。

■断面図

■ダ ム
形式ゾーン型ロックフィル
堤高 26.1m
堤頂長 299.0m
堤頂幅 7.0m
堤体積 314,000立方メートル
 
■貯水池
集水面積 9.5立方キロメートル
満水面積 0.1立方キロメートル
最低水位 EL=84.92m
サーチャージ水位 EL=93.07m
設計洪水位 EL=94.54m
計画堆砂位 EL=84.92m
総貯水量 965,000立方メートル
堆砂量 285,000立方メートル
洪水調節量 680,000立方メートル

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