建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2002年6月号〉

ZOOM UP

特集:首都高速道路公団東京建設局

急がれる中央環状線の整備

都心部に集中する交通を分散

◆中央環状線の建設状況
首都高速中央環状線(以下中央環状線)は、首都圏の広域幹線道路ネットワークの一つであり、環状道路として整備の急がれる路線である。現在、東京都内を日中走る自動車の平均速度は時速18kmと言われており、その速度低下が及ぼす経済損失は莫大なものとなっている。これは、放射道路に比べ環状道路の整備が遅れているため、放射道路を利用して都心部に集中する交通を適切に迂回分散できないことによると思われる。
そのため、中央環状線を含む放射環状型のバランスのとれた道路ネットワークを整備することにより交通渋滞を緩和し、交通環境を改善することが望まれている。
以下に中央環状王子線(以下、王子線)と中央環状新宿線(以下、新宿線)、また事業化に向け諸手続き中の中央環状品川線(以下、品川線)について紹介する。


14年度中の完成を目指す王子線

新宿線、西新宿シールドトンネルの掘削完了

◆王子線の建設状況
王子線は、中央環状線の北側部分を構成し、板橋区板橋の高速5号池袋線を起点に、国道17号(中山道)及び明治通り上を高架構造で進み、飛鳥山公園、JR王子駅付近をトンネル構造で通過。石神井川、隅田川に沿って高架構造で進み、江北橋の上流付近のニールセンアーチ橋で荒川を横断して、足立区江北原高速川口線を終点とする延長約7.1kmの路線である。延長7.1 kmのうち90%以上の区間は既に構造物の建設が終わり、舗装や付属施設の工事を順次実施している。
主な高速本体の残工事は三つあり、一つは、明治通り沿いの高架構造からトンネル構造への移行区間で、高速道路ができることにより現状交差点が使用不可能となる。そのため、エレベーター付き横断歩道橋を設け、機能回復を図るための工事を現在進めているところである。今年5月には歩行者交通を歩道橋に切り替え、交差点を廃止し高速道路工事に入る予定である。  
もう一つは、JR東日本に委託しているJR京浜東北線下のトンネル工事で、鋼管を使った仮設部が完了し、3月から本格的にトンネルを掘り始め完成に向けて工事を進めているところである。
残りの一つは石神井川沿いで、下部工事を終え、半地下工事及び上部工事を施工中である。合わせて河川改修工事と換気所工事を精力的に実施している。
本路線は、平成14年度完成に向けて現在、鋭意工事を進めているところである。
▲溝田橋下流から荒川方向全景及び遮音壁工事 ▲溝田橋付近高架橋及び石神井川付け替え工事全景
▲滝野川五丁目付近裏面吸音板及び遮音板設置工事 ▲滝野川二丁目付近高架橋、半地下、トンネル工事
◆新宿線の建設状況
新宿線は、中央環状線の西側部分を構成し、目黒区青葉台を起点とし、板橋区熊野町を終点とする延長約11.0qの路線で、その9割が地下構造である。また、地下の工事に合わせて環状6号線(山手通り)も拡幅整備される。
高度に利用されている市街地の地下に構造物を造る工法として、周辺へ与える影響の少ないシールド工法をトンネル区間の7割、約7qで採用している。シールドトンネル区間は8区間に分けられ、その中の西新宿シールドトンネルの掘削が完了している。残る区間も立坑工事の完了後、順次掘進を開始する。また、換気所がある区間(9個所)や地表面からの深さが浅い区間では開削工法を採用し、環状6号線の将来の幅員40m全部を使って大規模な山留め壁を構築し、掘削及び躯体の工事を行っている。開削工法による工事は、山手通りにもこれに交差する幹線道路にも、地下鉄をはじめとする多種多様の地下構造物が多数あること、山留め壁工事に伴って重交通を度々切り回すこと、山手通り拡幅の為の用地取得に合わせて施工手順を調整することなど、都市土木特有の難しい面を持っている。
今後さらに、出入口部分の工事、5号線接続部の高架区間の工事、3号線・4号線とのジャンクションの工事を引続き実施していく。コスト縮減・高度な品質・工事の安全を追求しながら平成18年度完成に向けて工事の着実な進捗を図っていく。
▲神山町換気所開削工事 ▲掘削が完了した西新宿シールドトンネル ▲東中野換気所開削工事
◆品川線の状況
品川線は、中央環状線の南西部分に当たり、品川区八潮を起点とし目黒区青葉台を終点とする海岸線と新宿線を結ぶ延長約9.4kmの路線で、中央環状線の中で唯一未着工である。
計画では、周辺地域の環境に与える影響を出来るだけ低くおさえるように公共の空間を活用し、環状6号線と目黒川の地下にトンネル構造で建設される。都市計画素案の説明会及び環境影響評価方法書の公告・縦覧を昨年8月に行い、都市計画決定に向けて手続きを進めている。
◆大宮線の建設状況
大宮線は、5号池袋線と東京外環自動車道が交差する美女木ジャンクションから新大宮バイパスを高架構造で北上し、さいたま市円阿弥で与野ジャンクションを形成した後、与野大宮大通線を地下構造で東進。JR東北新幹線、「さいたま新都心」地区(旧国鉄大宮操車場跡地)をトンネル構造で通過した後、見沼田圃で再び高架構造となり、浦和市三浦で第二産業道路に接続する延長13.8qの路線である。
このうち、美女木ジャンクションから与野までの新大宮バイパス区間(南北線)約8qは平成10年5月18日に、また与野ジャンクション(新都心西出入り口)については、「さいたま新都心」の街びらきにさきがけ、平成12年4月17日には、新都心西出入り口までを開通させた。この開通により新大宮バイパスの走行性が向上し、東西方向に直行する幹線街路の渋滞緩和にも大きく貢献するとともに、東京からさいたま新都心へのアクセスが更に向上した。
残る5.8q区間のうち、さいたま新都心内約1.1qは、立体道路制度を活用してトンネル構造の上にさいたまスーパーアリーナやけやき広場、複合交通センター等の施設が計画されたため、トンネル工事は既に完了している。
◆大宮線(東西線)の建設状況
現在、66mに拡幅された与野大宮大通線(さいたま市円阿弥からさいたま市上落合)の中央部で、全面的にトンネル工事を進めている。
また、JR新幹線横断部は、新幹線の橋脚の間を地下二層構造のトンネルが横断するため、JRに工事を委託している。現在ケーソンの沈設(1号から6号)は終了し、ケーソン函体間の接続工事を施工中である。
新都心東地区より第二産業道路までの区間は、平成16年度の完成を目指し工事促進を図っていく予定である。
▲新都心地区東側 施工状況 ▲上落合七丁目付近トンネル工事 ▲上落合交差点付近トンネル工事

HOME