建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2002年5月号〉

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津軽半島の新シンボル、全天候型多目的ドームが竣工

半島活性化の切り札に

青森県・つがる克雪ドーム

青森県が五所川原市に建設を進めていた全天候型多目的ドーム「つがる克雪ドーム」がこの3月に竣工した。
つがる克雪ドームは、津軽半島の振興を目的として建設されたもので、青森県では初めての開閉式ドーム。天候の良い日には屋根を開放、四季を通じ、スポーツやイベントなどを親しめる施設となっている。
津軽半島振興策の一環として
青森県、津軽半島地域は、県内でも豪雪・寒冷地帯として知られ、特に冬期間は「地吹雪」と呼ばれる強い季節風が吹き荒れる。それゆえ、冬場の屋外活動に大きな制約を強いられており、また同地域では、人口の減少や若者の流出が続いていることから、定住・雇用の促進や地域産業の振興のため、より積極的な施策の展開が求められている。
このような中、津軽半島地域で、冬期間においても多目的な活用が可能なドーム型施設の建設要望が出され、平成7年度の「半島振興計画」、平成8年度の「新青森県長期総合プラン」「新津軽地域開発基本構想」において、半島振興対策の重要施策の一つとして克雪ドームの整備が位置づけられた。
コンペにより決定
ドーム建設の具体化に当たっては、津軽半島の自然特性も踏まえ、高度な技術と最新の英知を結集した画期的な提案を広く求めることとし、青森県としては初めてのコンペ(設計・技術提案競技)を行った。
競技には、国内から7つの共同体が応募。それぞれから創意に満ちた、優れた機能や斬新なデザインを備えた素晴らしい提案がなされ、このうち、最優秀作品には、四季を通じて多様な利用が可能な開閉型ドームを提案した佐藤総合計画・三菱重工業共同企業体が選ばれた。
この案は、固定した屋根を持つドームとは異なり、自然を享受できることで雪国の冬から春を迎える地域住民の期待感や希望を表現。開放した場合は、グランドを拡張して使用できるシステムを取り入れ、開閉の形態も極めてユニークなもの。雪対策や地熱利用の省エネルギー対策など、細部に対する配慮がなされている点も評価された。
地域の新しいシンボルに
以上のような経緯を経て、青森県は、克雪ドームを「半島地域中核拠点施設」として、地域の要望等を踏まえ津軽半島の中心都市である五所川原市に整備することとし、県がドーム本体を建設、五所川原市が用地取得や外溝整備などを行ってきた。
津軽半島には、秀峰・岩木山がそびえ、広大な津軽平野や中世のロマンを秘めた湖・十三湖、美しい海岸線を持つ豊かな日本海が広がる、自然に恵まれた地域。建築的にも景観的にも地域の自然にマッチした克雪ドームは、まさに地域の新しいシンボル。年間を通じて利用可能なスポーツ・レクリエーション施設として、また、産業振興の観点からも大きな期待が寄せられる。
■1階平面図
▲ドーム内部より岩木山を見るイメージパース

克雪ドームのコンセプト
つつむ 津軽の大地と人々を包み込む柔らかな形態。
ひらく 幕構造の屋根は、地中外周のレールに沿って旋回スライドし、野球のフェアグランド全て開放され、他には類を見ない開閉ドーム。
めぐる 閉まっている時にはドーム内を巡る通路があり、開く時には屋根と共に移動する通路により、施設内から直接公園へと巡る道が生まれる。

▲屋根を閉じた状態

▲屋根を開いた状態

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