建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2002年5月号〉

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【特集:日本の空港整備】

新時代の静岡を拓く空港整備 ─静岡空港─

2006年春の開港を目指して

静岡県空港建設局

▲完成イメージ図
静岡県は、島田市と榛原町の境、牧之原台地から大井川に沿って東西に伸びる丘陵地に、静岡空港の建設を進めている。
同県は、新幹線や高速道路などの開設により目覚ましい発展を遂げてきたが、全国で高速交通網が整備される中、その優位性は相対的に低下してきた。そこで、新空港は、「陸・海・空」の交通ネットワークを確立し、21世紀における県の優位性を高め、県勢の一層の発展を図っていくうえで必要不可欠なものとして位置づけられている。
建設候補地については、昭和62年5月に設置された「静岡県空港建設検討専門委員会」で、県内全域を対象にした建設候補地の調査を7,200箇所で実施。以降、5回にわたる審議を経て、最終的には知事が現候補地を選定した。
国際交流に期待
静岡県には、現在、空港はないが、年間で県民の3人に1人が航空機を利用している(平成3年度で113万人が利用)。こうした実績から、静岡空港の需要は北海道、九州、沖縄など国内7路線で178万人が見込まれ、将来的には、東北、北陸など新たな路線の確保が期待されている。
また、人や企業の国際交流が盛んになる中、静岡県の海外渡航者数は、全国9位にランクされる43万人(平成12年度の実績)。また県内に本社を置く企業のうち365社が、東南アジアを中心に1,080の海外事業所を設置している。
こうした国際化の時代の到来に伴い、全国的に地方空港の国際化が進んでおり、岡山、冨山などの21の地方空港で国際定期便が就航。全国の国際線乗降客数に占める割合は約18%にも上る。県民の台湾、韓国、香港などへの出国者数は、現状でも国際定期便の就航が可能となる旅客数を充分上回っており、海外の航空会社からも意欲的な見解が示されていることからも、開港後は国際定期路線の就航も期待されるところだ。
空港と新幹線駅が直結
空港ターミナル直下には、東海道新幹線の第一高尾山トンネルが通る。ここに新幹線の駅が設置されれば、各地から空港までの所要時間が短縮され、交通費用も軽減。空港の利用圏域が県外にも広がり、利用者の飛躍的な増加が見込まれ、就航路線や便数も増加、首都圏空港の機能を補完する役割も担える。
空港と新幹線という高速交通機関相互の連結は全国に例がないが、新駅の設置は技術的には可能。現在、県では、国土交通省やjr東海に対して、設置を強く働きかけている。
経済効果
一方、空港建設による経済効果はどうか。空港建設に対する投資は、その建設期間を通じ、県の経済成長率を年間0.13%押し上げる(県内総生産、平成10年度約14兆6,616億円、建設期間を10年で算定)。建設期間を通じた県税収入は約50億円、市町村税収入は約70億円となり、合計で約120億円の県内税収入が見込める。建設事業に着工後の平成9年から平成18年までの10年間を建設期間とみると、年間約2,600人の雇用創出効果も期待できる。
また空港関連産業、空港利用者及び観光業等に発生する供用効果は、空港関連の付加価値でみると、年間0.45%。開港後の県内の税収入(県税+市町村税)は、年間約60億円、開港後の雇用への効果は、年間約9,500人と推定されている。
自然保護にも配慮
空港建設にあたっては、自然破壊の懸念も指摘されるところだが、県では郷土樹種による森林復元、貴重動植物の保全、荒廃した里山の復元に向けた森林環境のエコアップなど、他空港では見られない先進的な環境対策を、民間の専門家の意見を取り入れながら行っている。
また、下流河川の整備、空港建設に伴い失われる茶園やミカン畑に代わる農地開発など、空港周辺の環境整備も同時に進めている。
総事業費は1,900億円
全体事業費の総額は約1,900億円だが、うち本体部の工事費は約500億円。昨年度の事業費は155億円で、開港まで毎年ほぼ同規模が議会審議を経て執行される。
滑走路は2,500m滑走路1本が設けられ、大型ジェット機の就航も可能。2006年春の開港を目指す。
●静岡空港位置図

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