建設グラフインターネットダイジェスト
〈建設グラフ2002年2月号〉
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総合交通体系の基盤は地下鉄の整備
第8号線・井高野〜今里間の建設に着手、平成18年度の開業を目指す
大阪市交通局・地下鉄整備事業
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新旧の車両〜左は昭和51年に御堂筋線に導入された10系車両。 右は平成2年に長堀鶴見緑地線に導入されたリニアモーター使用の70系車両。 |
- 大阪市の地下鉄
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大阪市は、明治36年9月12日、路面電車の営業を築港〜花園橋間で開始。昭和2年2月26日にはバス(阿倍野橋〜平野間)、昭和8年5月20日には公営で初めての地下鉄(梅田〜心斎橋間)を順次開業した。また、昭和28年にはトロリーバス路線を設置するなど、大阪市は、市自ら市内交通機関の一元的管理・運営を行い、安定した交通網の整備に努め、市民生活に大きな便益を提供してきた。
しかし、昭和30年代後半以降、自動車利用者の激増により、路面交通は定時性の喪失、運行速度の低下等により、利用者は激減。そのため、路面電車は昭和44年に、トロリーバスも昭和45年に廃止を余儀なくされた。
そこで、大阪市は、これらの路面交通に代わる交通機関として、大量輸送性・高速性・安全性・定時性に優れた地下鉄網の整備・拡充に力を注いできた。路面電車等の廃止に先立ち、昭和41年3月には緊急整備計画を策定して地下鉄の建設を推進。日本万国博覧会開催の昭和45年には、都心部を格子状に結ぶ6路線64.2kmの路線網が完成した。その後も整備・拡充に努め、平成9年8月には第7号線・大正〜心斎橋間2.8km及び鶴見緑地〜門真南間1.3kmが開通し、現在では7路線115.6kmの路線網となっている。
こうして、今日では地下鉄の利用者数も大幅に増加し、市内交通の根幹として、大きな役割を果たすようになったのである。
- 整備計画
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大阪市では、総合交通体系の確立を目指しており、当然、その基盤となるのは地下鉄の整備である。市の計画では、全体計画9路線・150kmの路線網を整備するとしているが、平成元年5月の運輸政策審議会答申第10号に出された路線のうち、森小路大和川線、敷津長吉線、長堀鶴見緑地線延伸、千日前線延伸の4路線が市の「交通事業の設置等に関する条例」(平成元年11月改定)の計画路線に組み込まれた。
このうち、森小路大和川線(井高野〜湯里六丁目間)を地下鉄第8号線として早急に整備することとし、同線の井高野〜今里間については、軌道法に基づき平成i1年6月に特許、同年i2月に工事施行認可を受け、都市計画法に基づき平成11年12月に都市計画決定・告示され、平成12年3月に工事に着手した。
- 地下鉄第8号線
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建設中の8号線は、既成市街地で人口が高度に集積する大阪市東部地域において、都心に対して放射状に整備されている既設地下鉄(谷町線・長堀鶴見緑地線・中央線・千日前線)、JRや京阪等の鉄道と連絡することにより、放射状路線の混雑緩和や東部地域の移動を円滑にし、同地域のまちづくりを促進し、地域の活性化に寄与する路線として期待されている。
同線はリニアモータ駆動方式(※)の中量規模の地下鉄を採用。これは、長堀鶴見緑地線(第7号線)でも採用されているが、車両が小さく、トンネルの大きさも在来地下鉄の約60%まで小さくできるため掘削土量が少なくなり、建設費は安く、経営採算上も有利。また、トンネル断面が小さく、狭い道路でも建設でき、地下空間の有効利用が図れる、などのメリットがある。
工事方法は、原則として、駅部及び車庫については、地上から掘削する開削工法を、駅間の線路部については、地中を横へ掘削するシールド工法を採用。平成18年度の開業を目指す。
※超高速鉄道に使われる磁気浮上式ではなく、鉄の車輪で車体を支えて、リニアモータの駆動力で走行するシステム
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[開削工法] 開削工法は、地表面から工事に必要な深さまで掘り下げ、構築物を完成させた後再び土砂で埋め戻す工法で、主に駅部や特殊なトンネル部で用いられている。 |
[シールド工法] シールド工法は、開削工法によって造られた立坑から、掘削機を用いて地中深く横穴を掘っていき、その中にセグメントと呼ぶブロックを組み立てていく工法で、路面などへの影響をほとんど与えないため、現在ではトンネル部の一般的な工法となっている。 |
<はみ出しコラム>
「スルッとKANSAI」は便利!
関西圏では、キャッシュレス時代に対応し、プリペイドカードを自動改札機またはバス料金収納機に直接投入すると、乗車区間に見合った料金が自動的に引き落とされる新システム「スルッとKANSAI」が導入されている。
同種のシステムには首都圏の「パスネット」があるが、「スルッとKANSAI」はそれに先駆け、平成8年3月から運用を開始。平成13年10月までに、京都、大阪、奈良、兵庫、和歌山の5府県、計31社局でカードの共通利用ができるネットワークが構築された。
例えば神戸・三宮駅から和歌山市内まで、三宮(阪神)梅田(大阪市交通局・地下鉄御堂筋線)なんば(南海)和歌山市(和歌山バス)和歌山市内、と乗り継ぐ場合でも、乗り換える毎にいちいち切符を買う必要はなく、一枚のカードでOK。これはとても便利だ。
昔から“独立自尊”の精神でやってきた関西圏の公共交通機関各社だが、今やお互いに手を取り合う時代になった?
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