<建設グラフ96年9月号>

《寄稿》北海道の都市公園・下水道事業

その現状と課題について

北海道住宅都市部 公園下水道課長 寺田廣幸 氏

寺田廣幸 てらだ・ひろゆき
昭和17年生まれ、歌登町出身、札幌工業高、北海短大土木科卒
昭和40年入庁
昭和55年札幌土現石狩川流域下水道事務所施設係長
昭和57年同土現道路建設課主査
昭和59年日本下水道事業団北海道総合事務所工事第四課長
昭和62年帯広土現十勝川流域下水道事務所長
平成 2年住宅都市部公園下水道課主任技師
平成 4年釧路土現企画調整室長
平成 5年稚内土現技術部長
平成 6年稚内土現事業部長
平成 7年現職
はじめに
平成8年度は、私たちにとっては記念すべき年となりました。というのも去る6月5日、皇太子殿下・同妃殿下をお迎えし「第7回みどりの愛護のつどい」が札幌市の国営滝野すずらん丘陵公園で全国からの関係者の方1,300人以上が出席し盛大に開催されました。また7月11〜12日には、第14回全国町村下水道推進協議会の全国大会が札幌市を舞台に開催され、全国から550人以上の町村長さん方をお招きすることができました。これらの全国大会を契機として益々北海道の公園事業、下水道事業が促進されるものと期待しております。
北海道立野幌総合運動公園
1.都市公園
1)現  状
北海道の都市公園は、明治6年、札幌市に階楽園が設置されたのが最初で、天然の泉と樹林のある景勝地は、現在の北大植物園の周辺にその面影を残しています。その後、戦前までに整備された公園は、函館公園他15箇所程度でした。
戦後になって、市町村の公園要望は盛んとなり、緑豊かで安全・快適な都市環境の形成と人々に安らぎと潤いを与える生活の場が求められるなか、現在まで、公園緑地の整備に積極的に努めてきました。
平成8年度末現在、都市計画法適用都市103都市のうち、都市公園設置都市数は、32市65町、箇所数5,822箇所、面積8,871ha、都市計画区域内人口1人当たり公園面積は17.91uとなっており、全国一の整備水準となっています。 一方、都市計画法適用外都市では、特定地区公園実施可能都市109都市のうち、10町が整備済み、3町が整備中となっています。
また、第6次五箇年計画(平成8年度〜平成12年度)において、整備指標として、これまでの一人当たり公園面積に加え、身近で解りやすい指標として、「歩いていける範囲の公園の整備率」が国より示されましたが、これによると、全道平均は82.6%となっており、全国平均52.9%を上まわっています。
しかしながら、各都市間で整備水準に格差があることや大規模な都市基幹公園の整備が急がれたため、最も身近な利用の対象となる住区基幹公園が市街地に十分に充足されていない都市が多い状況にあります。

2)課題と取組
スポーツ・文化・コミュニティなどの住民の多様な活動空間の形成と、特に高齢化社会、福祉社会に対応して行動範囲の限定された高齢者、身障者などに配慮した生活環境の形成のため、生活に密着した最も身近な利用の対象となる住区基幹公園の整備を推進し、歩いていける範囲の公園のネットワークを図ることが必要となっています。
このため、市街地にある旧国鉄敷地や工場、事務所等の移転後の遊休地、未了地などを有効活用するとともに、区画整理事業等の面的整備を推進し用地の確保を図り、市街地内の住区基幹公園の充足率を高めるよう努めています。
また、公園の冬期利用を促進するため、冬期利用に配慮した公園整備についてですが、北海道は積雪寒冷地という地域性から、一年の半分近くを占める冬期間にあって、公園の利用率が2割程度にとどまっています。
一方、従来のゲレンデスキー、スケートに加え歩くスキー、カーリング、雪像づくりなど冬期レクリエーション活動の場として、日常生活圏において身近に利用できる冬期レクリエーション施設の要望が高まっています。
このため、公園の冬期利用を推進するにあたって、北海道独自の冬期間の利用に配慮した公園整備を進める必要があります。具体的には、スキーの築山、歩くスキーコースのほか、冬でも木のぬくもりとふれあえるようにするため、遊具をはじめとした公園整備に木材をふんだんに利用したウッディパーク、スケートや歩くスキーを気持ちよく楽しむために、採暖施設を取り入れた休憩所を配置した公園、冬期でも手軽に健康運動を楽しめる屋内運動施設を備えた健康運動公園等の整備を推進しています。
今年度は、「第6次都市公園等整備五箇年計画」の初年度にあたり、北海道においては、量的な整備水準の向上に加え、高度化、多様化する地域住民のニーズにあうよう、地域特性の生かされた質的整備水準の向上に配慮した整備の推進を図っていきます。
北海道子どもの国
2.下水道
1)現状の姿
北海道の下水道は、他府県同様に大都市の札幌市が大正15年に第一期下水道構造5ヶ年計画に着手したのが最初です。昭和16年には戦争のため一時中断したものの、戦後、函館市を始め岩見沢市、苫小牧市などの地方都市に広がり、都市人口の増加に伴う都市基盤の整備や公共用水域の水質汚濁の進行に伴い積極的に事業の推進に努めてきました。
平成8年度末で全道212市町村のうち公共下水道が91市町、特定環境保全公共下水道が62町村、合わせて全道の72%にあたる152市町村で下水道の事業を実施しています。また、類似の事業の農業集落排水事業も21町村で実施しています。したがって、本道は173市町村で下水道等の事業に着手しているわけで、未着手都市は39町村となっています。この外、サブ集落で漁業集落排水事業を4町で実施しています。
未着手部をみると地域的には、日本海沿岸地域である留萌地方、後志地方、函館周辺を除く渡島半島地方、離島などにおいて未着手町村が多く分布しており、これらのほとんどは過疎化が著しく、財政的にも脆弱です。
下水道供用都市の状況は平成7年度末で116市町村で処理を開始し、下水道普及率は平成6年度末で全国の51%に対し72%と全国第3位の高い普及率となっています。ただし、市部の86%と高い状況に比べ町村部ではいまだ32%の低い状況で、さらに、全道の3分の2を占める1万人以下の町村に限ってみると15%という状況にあります。

2)課題と取組
未着手町村に対する普及啓発では、いかに自治体の方々、住民の方々に下水道の理解を得ることができるか、キャラバンを組んで直接首長さんに説明したり、パネル展、小学校などへのパンフレット提供等、種々の方法でprしましたが、下水道はお金がかかるという漠然としたイメージのためかなかなか着手には踏み込んで頂けませんでした。
このため、昭和63年度から「下水道整備構想エリアマップ」を作成し、下水道として整備すべき区域とその概算事業費を北海道が作成し、直接町村の首長さんに説明しました。この結果、下水道の必要性は徐々に道内未着手町村に理解が得られるようになりました。
また、道としての湖沼や観光地に関連する道費補助制度の実施や、国の補助制度の拡充が着手に大きく作用しており、とくに、基本計画策定費補助、代行制度が好評です。
道としては、この過疎下水道代行事業が、本道の180町村のうち140町村が過疎町村に該当することから、この制度を最大限に活用しつつ未着手町村の解消に努めていきたいと考えています。現況では、平成8年度までに20町村において代行事業が実施されています。
したがって、今後ともこの過疎下水道代行事業を活用しながら、町村部の普及促進を図っていきたいと考え、国に対し更なる補助制度の充実と、過疎代行対象町村の緩和を要望しているところです。
現在、北海道では道内の全ての地域について、その事業手法と整備スケジュールを明らかにするため、下水道等に関する都道府県構想「全道みな下水道構想」の策定を行っています。
北海道立オホーツク公園(オートキャンプ場)
おわりに
北海道の恵まれた自然環境を保全し、全道各地域の均衡ある発展と、全ての道民が豊かで快適な素晴らしい生活環境を享受できるよう、今後とも生活重視の事業の推進に取り組んでいきたいと考えております。

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