寄稿 (1995/12)

首都機能移転をめぐる動き

国土庁大都市圏整備局首都機能移転企画課長 大堀一平氏

大堀 一平 おおほり・いっぺい
昭和24年6月1日生、神戸市出身
昭和47年東京大学法学部卒
昭和47年4月建設省採用
昭和53年5月大臣官房文書課審査係長
昭和55年4月山形県企画課長
昭和60年7月住宅局住宅政策課長補佐
昭和61年5月日本道路公団総務課長
平成元年7月道路局道路利用調整官
平成 3年6月大臣官房広報室長
平成 4年5月東北地方建設局総務部長
平成 6年7月道路局道路交通管理課長
平成 7年6月現職
1.はじめに
首都機能移転については、現在、国会等移転調査会において、その実現に向け検討が進められていることろである。本調査会は、平成5年4月の第一回会合以来、調査審議を重ね、これまで平成6年6月10日、本年6月6日と2度にわたり中間報告を取りまとめている。本稿では本年6月の第二次中間報告の概要を紹介し、あわせて首都機能移転をめぐる最近の動きについて述べることとしたい。
2.国会等移転調査会第二次中間報告の概要
この第二次中間報告においては、移転の対象の範囲、移転のプログラムや新首都像や制度などについて取りまとめられている。以下、その概要について述べる。
(1)移転の対象の範囲
まず、新首都にあるべき機能について述べると、新首都は、21世紀のわが国のあり方にふさわしい機能を果たせるよう創られるべきである。それには、第1に、新首都の政治・行政機能は、従来のそれとは異なった新しく生まれ変わる政治・行政システムにふさわしい機能となることが必要である。第2に、新首都は、国際交流が活発に行われ、世界と日本をつなぐ役割が十分果たせる機能を備える必要がある。第3に、新首都には、日本の歴史や伝統を体現するとともに、21世紀に生きる国民が未来に託する夢をはぐくみ、わが国のアイデンティティを世界に伝えてゆく機能が求められると考える。
首都機能は、新しい政治・行政システムとして新首都に形成され、「簡素で効率的な政府」の実現をめざし、政経分離により新首都に新たな集中を生じさせない配慮に立った必要最小限の機能とすべきである。

(2)移転のプログラム
次に、新首都への移転の手順について述べると、新首都は、災害に強い国土づくりの基本的対応策の面からも、また、地方分権・規制緩和等の国政全般の改革の契機となり得るという面からもその早期実現が望ましい。
また、首都機能移転は、長期間を要する大規模プロジェクトであるため、その移転は、段階的に行われるべきである。国会の率先移転を最優先とし、国会の移転をもって首都機能移転の「第一段階」とする。

(3)新首都のビジョン
新首都づくりの基本理念としては、「日本の進路を象徴する都市」については、「平和・文化・環境」とし、「新しい政治・行政都市」については、「透明な政治・効率的な行政」とし、「本格的国際政治都市」については、「国際貢献・交流の新しい拠点」とし、「開かれた」、「親しみ」、「ゆとり」、「美しさ」を新首都のイメージの基調とする。
新首都の建設は段階的に行うとともに国会の早期移転を最優先とし、建設開始から約10年を目途に新首都で国会を開催することを目標とする。この段階での規模は、人口約10万人程度、面積約2,000ヘクタール程度を想定する。あわせて国際線の航空機が就航できる空港の整備など東京との主要なアクセスルートとなる交通施設の整備を完了し、首都機能が円滑に機能するよう連絡システムの整備を実現させる。また、情報のバックアップ体制を確立するため、新首都において情報センターの機能を早急に整備すべきである。 さらに、成熟段階における新首都の規模については、人口最大60万人程度、面積おおむね9,000ヘクタール程度を想定し、新首都の都市の形態は、国会と中央官庁が集中的に立地している「国会都市」を中心に、人口3万〜10万人程度の小都市が自然環境の豊かな数百平方キロメートルの圏域に配置されることを想定する。

(4)新首都づくりの制度・手法
新首都を実際に建設する際には、公的主体が土地の所有権を保有したまま賃貸借契約を通じて利用形態などをコントロールする手法の導入や、土地投機が発生することを未然に防止するための制度の整備など思い切った制度・手法を導入することが望ましい。
また、国自身が第一義的な責任を持って都市建設を行う強力な体制として、新首都建設に責任を持つ特別の国家機関、面的開発事業や関連公共公益施設整備を一元的に行う事業主体を設立することが望ましい。
さらに、都市づくりのプロセスは、開かれた手続きで進める必要があると考える。
また、集中的な公共投資による事業の迅速な実施に対応し、国民共有の資産として質の高いストック形成が行われるように、所要の財源の確保が必要である。
3.最近の首都機能の移転をめぐる動き
本年5月26日の首都移転への早急な取組みを求める経済団体連合会の決議や6月12日の2年以内に移転先地の選定を求める新首都推進懇談会(超党派の国会議員で構成)の決議等にみられるように、首都機能の移転については、各方面からその早期実現が強く求められている状況にある。
国会等移転調査会においても、首都機能の移転の緊急性やこれらの動きを踏まえながら、年内に調査会としての取りまとめを行うべく、「移転の時期の目標」、「移転先の選定基準」及び「東京の整備のあり方」について、鋭意、調査審議を進めているところである。

HOME