〈建設グラフ2000年1月号〉

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21世紀の財産「奥三面ダム」完成間近

新潟県三面川開発事務所長 福嶋英雄 氏

福嶋英雄 ふくしま・ひでお
昭和18年2月2日生まれ、新潟県出身、新潟大学農学部林学科(砂防)卒業
昭和41年新潟土木事務所技師
昭和55年河川開発課主任
昭和57年安塚土木事務所治水係長
平成元年砂防課副参事
平成 3年上越土木事務所治水課長
平成 5年技術管理課土木工事検査監
平成 6年糸魚川土木事務所次長
平成10年現職
1.事業概要等
奥三面ダムは二級河川三面川の上流、岩船郡朝日村三面地内で建設している治水・発電・河川の正常な機能の維持を目的とする堤高116m、堤頂長244m、堤体積25万7,000m3、総貯水容量1億2,550万m3、有効貯水容量1億800万m3の新潟県で初めて施行するアーチ式コンクリートダムである。またダム本体工事の他、貯水池により水没する道路の代換えとして、2つのトンネルと大小合わせ14の橋梁を含む約10qの村道と11qの林道の付替工事を実施している。
2.事業計画の経緯
昭和42年8月28日羽越地方はかつてない集中豪雨に見舞われ、被害は死者行方不明136人、全壊流失家屋1,119戸に及んだ。いわゆる「羽越災害」である。
幸いにして、三面川には昭和28年に三面ダムが完成しており、人的被害は免れたものの、この集中豪雨による出水は三面ダムの洪水調節能力を大きく上回り、下流域の1,716戸の建物と1,929haの農地に被害をもたらした。この水害を契機に三面川の治水計画が見直され、既設の三面ダムや河川改修と合わせ、新規に奥三面ダムを建設し、予想される洪水被害から下流河川沿岸を守ることとなった。更に三面川流域は朝日連峰に囲まれた日本有数の多雨豪雪地帯であり、豊富な水資源の存在から、県企業局により三面ダムヘの発電参加、支川猿田川の発電専用猿田ダム建設など水力発電の開発が進められてきており、地球温暖化が叫ばれる近年、クリーンエネルギーの重要性に鑑み本ダムにも最大出力3万4,500kwの水力発電が参加することになった。
3.工事経過等
当ダムは昭和44年度予備調査、46年度実施調査、55年度建設に着手以来、昭和60年42戸の三面集落の移転完了と工事用道路、仮排水トンネルの完了に伴い、平成3年に本体工事に着手した。以後本体掘削の完了した平成6年9月には本体コンクリートの打設を開始、翌年8月に定礎式を行い、平成10年7月には本体コンクリートの打設を完了した。平成13年度の事業完了を目差し、平成11年10月には二次転流も終わり、平成12年10月の試験湛水に向け着実に工事は進捗している。
またダムの完成は、単に治水効果のみならず、ダム建設地を含め、その上流域は磐梯朝日国立公園に指定されており、周辺は大朝日山系を巡るブナ林など、白神山地に匹敵する豊かな自然に恵まれ、ダムを核に広域的な観光と地域の活性化に大きな役割を果たすものと期待されている。

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