<建設グラフ96年7月号>

《寄稿》 7月10日は北海道漁港の日

20年後の漁港を見据えて

北海道開発局 農林水産部水産課長  長野 章 氏

長野 章 ながの・あきら
昭和21年11月愛媛県生まれ
昭和45年北海道大学大学院工学研究科修士課程1年修了
昭和47年農業土木試験場水産土木部
昭和53年水産庁振興部開発課水産土木専門官
昭和60年長崎県水産部漁港計画課長
平成 2年(財)漁港漁村建設技術研究所調査研究部長
平成 5年7月現職
1.はじめに
水産業とそれをとりまく環境はどのように変化していくのか?
漁港漁村の整備はこうした変化を見極めながら、長期的なビジョンが必要不可欠です。水産資源、国際環境、消費動向などは刻々と変化し、漁業者はむろん地域人口の減少と高齢化も深刻となってきています。さらに、漁港漁村をとりまく地域経済社会の変化も著しいものがあります。一方、増養殖・水産加工技術の発展による新たな水産業の形態や漁港整備への要請も高くなってきております。そこで、北海道がわが国の水産食糧生産基地としての役割を果たし、豊かな北海道の漁村生活を描き、そのための漁港漁村整備のあり方を示しました。長期的展望は漁業関係者はもちろんのこと、地域の人々や一般社会のコンセンサスを得ながら進める必要があります。「北海道マリンビジョン21」は、このような状況の元で、関係者の協力を得ながら北海道の漁業と漁港漁村の20年後の姿を舞いたものです。
2.マリンビジョン21の実現方策
このビジョンを現実にしていくためには、北海道の中とはいえそれぞれ漁業及び社会経済条件が異なる個々の漁港漁村で、どのように実現していくかを具体的に示されなければなりません。このため、北海道開発庁では幾つかの構想をモデル的にオーソライズし、先導的に「北海道マリンビジョン21」のあるべき姿を具体化しようと平成8年1月に「北海道マリンビジョン21推進モデル構想策定事業」を創設しました。今回この事業に基づき、6地区の漁港について市町村が構想を作成し申請がありました。この構想策定の経過においては、地域での多くの関係者はもちろん北海道を代表する有識者の方々からなる「北海道マリンビジョン21懇話会」の指導助言をへて北海道開発庁へ提出されております。今後、漁港整備においては、この基本計画に沿って積極的な整備促進を図るなどして構想実現に向けての支援を行うこととしています。
3.地区構想の概要
表に6地区の概要を示めすと共に、構想完成予想図を載せました。青苗地区をはじめとする6地区はどれもそれぞれ特徴をもち北海道を代表する漁港です。各市町村は、地域の将来像を漁業と漁港漁村の整備にかけ、それらを核として新しい産業分野への展開を描いており、地域の個性と知恵が生きたものとなっています。個々に描かれた地域の姿が早く実現するよう漁港漁村整備を図ることはもちろんですが、漁港の周辺基盤整備およびそのほかの行政施策を図るべく関係行政機関にも支援を要請していかなければなりません。また、今後はこのような個性豊かなモデル漁港を北海道全体に広げてゆく必要があると考えております。

注)「北海道マリンビジョン21」の策定経緯
平成7年度に、北海道開発審議会の農業水産小委員会の報告として「北海道水産業を支える基盤整備の新たな展開」が出されました.この審議過程において,北海道の水産業や漁港漁村が将来目指すべき方向として示されたのが「北海道マリンビジョン21」です。

青苗地区 福島地区 追直地区
キャッチフレーズ 災害に備え,日本海の資源と漁業を拓く島の復興 水産物の新たな街道と資源豊かな増養殖基地の形成 さかな活き活き 市民が集う ふれあいmランドづくり
概要 @栽培漁業の推進と機動的出荷体制の確立
A災害復興のモデル漁港漁村整備
B島の良さと災害の経験を活かした観光・交流の推進
C日本海の海洋観測基地
@水産物集出荷拠点基地化と広域的交流の展開
A大規模海中牧場の形成
B地元・外来船の地元陸揚増大と水産加工業との連携強化
@Mランド整備による多角的増養殖事業の展開
A都市立地型水産物集出荷拠点,市民に開かれた漁港整備
B国際海洋研究・情報センター等の誘致

羅臼地区 宇登呂地区 サロマ湖地区
キャッチフレーズ 知床・国後の産業振興・交流拠点となる「さかな城下町」の育成 知床の自然と調和した、豊かで潤いのある漁港漁村の形成 サロマ湖の環境保全、安定的漁業生産・高い漁業所得の継続と地域資源に相応しい人間社会への貢献
概要 @「さかな城下町」の育成
A知床の自然や国後島との近接性を活かした交流拠点の形成
B生活環境・就労環境の向上と防災対策
@知床国立公園を背景とした交流拠点の整備
A高級魚種の増殖と主要魚種の価格対策
B冬期間の観光振興と地揚水産物の活用
@サロマ湖の環境保全
A弛まぬ技術革新と系統組織活動の充実
B体験学習等交流事業の推進と交流人口の活用

HOME