寄稿(95/10)

地方分権の推進について

東田 親司 ひがしだ・しんじ
昭和20年生まれ、小樽出身、小樽千秋高、北海道大学法学部卒
昭和43年4月行政管理庁(総務庁の前身)入庁
昭和54年在英国大使館一等書記官
昭和57年行政管理庁長官秘書官
昭和61年総務庁行政監察局監察官
平成元年総務庁行政管理局管理官
平成 3年総務庁行政監察局企画調整課長
平成 4年総務庁長官官房総務課長
平成 6年総務庁長官官房審議官
平成 7年総理府地方分権推進委員会事務局長
●はじめに
平成7年5月15日、村山政権の重要政策課題である地方分権を総合的・計画的に推進することを内容とする「地方分権推進法」が成立した。
以来約3ヶ月、この間7人の委員の人選、委員人事の国会同意手続き、初会合の準備などを行い、平成7年7月3日に、委員の任命と初会合が行われ、正式の事務局が発足し、そしてこれまでに第4回会合までを終えたところである。ここでは、当委員会の基盤となる地方分権法のポイントを紹介すると共に、当委員会の活動に関する当面のスケジュールを説明する。
地方分権推進法
地方分権の推進については、第三次行革審をはじめ、各方面から熱心な提言がなされてきている。これらを受けて、政府が昨年末(平成6年12月25日)に閣議決定した「地方分権の推進に関する大網方針」は今回の地方分権推進法の原型となったものであり、この大網方針を閣議決定した時点で、地方分権推進に関する政府の姿勢が実質的に固まったと見ることができるが、ここでは、法律のポイントとなる次の二点を特に紹介したい。
第一は、法第4条で、国と地方公共団体との役割分担についての基本的な考え方を明らかにしている点である。
同条では、「地方分権の推進は、国においては国際社会における国家としての存立にかかわる事務、全国的に統一して定めることが望ましい国民の諸活動若しくは地方自治に関する基本的な準則に関する事務又は全国的な規模で若しくは全国的な視点に立って行わなければならない施策及び事業の実施を、その他の国が本来果たすべき役割を重点的に担い、地方公共団体においては住民に身近な行政は住民に身近な地方公共団体において処理するとの観点から地域における行政の自主的かつ総合的な実施の役割を広く担うべきことを旨として、行われるものとする。」と規定している。法律で国と地方の役割分担の骨格が示されたのはおそらく初めてであろう。
ここで重点的に担うこととされた国の行政、そして地域における行政の自主的・総合的な実施の役割を広く担うこととされた地方公共団体の行政が、それぞれ具体的・個別的に何であるかを肉付けしていくのが地方分権推進委員会の基本的かつ最大の任務であるのは言うまでもない。
第二のポイントは、法第五条〜第七条にかけて、地方分権の推進に関する国の施策などが明記されている。国は、上述した役割分担に即して権限委譲を推進するとともに、関与・必置規制・機関委任事務・補助金などの整理合理化などに努めることとされているほか、国と地方公共団体との役割分担に応じた地方税財源の充実確保を図ること、地方公共団体は、行財政改革の推進とともに行政の公正の確保と透明性の向上及び住民参加の充実のための措置などによって、地方分権の推進に応じた行政体制の整備及び確率を図ることとされている。 地方分権推進委員会の任務は、政府がこれらの行財政上の措置を内容とする地方分権推進計画を樹立する際の「指針を勧告」することと、計画がその通りに実施されるかを「監視」することの二点である。
地方分権推進委員会
国会同意を得て7月3日に総理から任命された7人の委員は、委員長 ・諸井虔(日経連副会長)、委員長代理・堀江湛(慶応大学教授)、桑原敬一(福岡市長)、長洲一二(前神奈川県知事)、西尾勝(東大教授)、樋口恵子(評論家)、山本壮一郎(元宮城県知事)の7氏である。
今後、9月に入って論点を整理の上、2つの部会(地域づくり部会と暮らしづくり部会=仮称)を設置し、来年3月末に中間報告、来年中に方針の勧告を行いたいというのが目下のところ7委員の意見の一致しているところである。諸井委員長は、初会合の後の談話で「国と地方との行政内部の権限配分の見直しのレベルにとどまってはならず、地方分権の推進により、住民がゆとりと豊かさを実感できる社会を実現する観点からの見直し」を強調されている。
現在の役割分担には、具体的にどんな問題があるのが、地方行政の自主的・総合的な実施の観点からみてどんな隘路があるのか、・・・・・実証的な審議がすすめられ、実効性のある「指針の勧告」となるよう重大な使命を持った委員会の運営の補佐に全力を尽くしたいと考えている。

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