〈建設グラフ2000年7月号〉

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寄稿特集

岡山河川工事事務所の概要

建設省中国地方建設局 岡山河川工事事務所長 古川 博一 氏

古川博一 ふるかわ・ひろかず
昭和29年9月15日、大阪市生まれ
大阪大学大学院修士課程修了
昭和54年4月建設省入省(滋賀県勤務)
昭和56年4月中部地方建設局沼津工事事務所
昭和58年4月土木研究所河川部
昭和60年4月近畿地方建設局琵琶湖工事事務所
昭和61年9月関東地方建設局企画部
昭和62年2月外務省在イラン日本国大使館
平成 2年4月建設省河川局防災課長補佐
平成 4年4月近畿地方建設局大戸川ダム工事事務所長
平成 7年7月 (財)リバーフロント整備センター研究第一部長
平成10年4月岡山河川工事事務所長
はじめに
岡山河川工事事務所は岡山県の県庁所在地である岡山市に事務所を置き、一級河川吉井川、旭川、高梁川の河川管理と改修を担当している事務所です。岡山県内の3大河川の河川改修を通じて、活力ある地域社会と安全で快適な生活環境の実現を目指して、各種事業を推進してきました。
事業の概要
現在、岡山河川工事事務所では一級河川吉井川、旭川及び高梁川の河川管理と直轄河川改修、吉井川にある坂根堰(治水・特定かんがい・都市用水の共同施設)の管理、高梁川総合開発(柳井原堰)の建設を行つています。主な事業は次のようになっています。
《図-1 流域図》
(1)吉井川
吉井川は岡山県東部を流れ、津山盆地を経て岡山市西大寺で児島湾に注ぐ、流域面積2,110kuの一級河川です。昭和21年より改修に着手しました。現在、河口から32.8qと支川金剛川の3.8qを直轄管理区間として管理し、改修事業を継続しています。また17q付近には治水・特定かんがい・都市用水の供給を目的として昭和54年度に完成した多目的堰である坂根堰を管理操作しています。更に吉井川上流部では平成16年度の完成を目指して苫田ダムの建設が苫田ダム工事事務所の手により進められています。
直轄区間の中上流部において堤防整備は進んできましたが、下流部においては依然として無堤部や弱小堤が多く残っています。無堤部対策として左岸下流部の乙子地区の築堤、また弱小堤対策として左岸西幸西地区の耐震対策、右岸九婚地区の耐震対策を継続して実施しています。特に乙子地区では、現在永江川を締切る樋門の建設を進めています。
《写真‐1 吉井川下流乙子地区》
また支川金剛川では特定構造物改築事業を中心として1.6q区間を「水辺の楽校」に指定して地域の住民と話合いながら河道整備を進めてきましたが、本年度開校をむかえるはこびとなりました。

2)旭川
旭川は岡山県中央部を流れ、岡山市で児島湾に注ぐ流域面積1,810kuの一級河川です。かつては岡山城の濠として利用されたため城の周りでは河道が大きく屈曲しており、その対岸の中州には本年築庭300年を迎えた後楽園があります。城下を水害から守るため、貞享元年(1686年)には百聞川が建設されています。大正15年に改修に着手しました。現在、河口から17.5qと百聞川12.9qを直轄管理区間として管理し、河川改修事業を継続しています。

《写真-2 旭川と岡山城、後楽園》
旭川の放水路である百聞川の本格的工事に昭和49年から着手しました。改修では百関川沿川の洪水被害軽減を最優先に事業を進めています。昭和58年度には第1段階目標である戦後最大流量(800F/sec)対応の河道が、また平成8年には築堤が完成しています。
更に本年には倉安川排水機場が完成するなど百聞川沿川の洪水軽減対策は着実に前進しています。現在、百聞川の背水の影響を受ける砂川で河川法2条7項による改修に取り組んでおり、河積を阻害していた一の堰、二の堰の撤去するとともに砂川橋の架け替えに着手しました。
砂川堤防の嵩上げを行うことで当面必要な百聞川沿川の洪水被害軽減対策は修了します。次なるステップとしては岡山市の中心部の洪水被害の軽減を目指して、より多くの洪水流量をより安全に百聞川に流すため分流部や河口水門の整備に焦点が移っていきます。
《写真-3 砂川》 《写真-4 百聞川河口水門》
旭川本川では、下流左岸の三蟠、平井地区での耐震対策を継続しているほか、中島地区の大きな島付近が流下能力の阻害となっており、市街地の再開発と併せた整備が求められています。

(3)高梁川
高梁川は岡山県西部と広島県の一部を流域として倉敷市で水島灘に注ぐ流域面積2,670kuの中国地方で二番目に大きな一級河川です。明治25、26年の洪水を契機として明治40年から大正14年まで第1期の改修が行われました。
第1期改修では下流部で東西二つの流れに分れていた河道を西派川中心に一つにまとめ、廃川にされた東派川は倉敷市の市街地として開発が行われました。昭和42年に一級河川に指定され、現在河口から26.5q、支川小田川の7.9q、派川(柳井原貯水池)2.0qを直轄管理し、河川改修を進めています。

《写真‐5 高梁川第1期改修の概要》
高梁川は大正時代に1次改修が終わっていますが、支川小田川は本川の背水の影響を受けて洪水時の水位が高く内水被害が多発していました。順次下流から河床掘削や障害となる堰や橋梁の改修により治水安全度の向上を図っています。
平成8年度から流下能力の障害となっていた八高堰、八高橋を統合して改築する事業を進め、本年完成されるとともに既設橋梁、堰の撤去に取りかかります。
《写真-6 八高橋周辺》
高梁川総合開発事業では、小田川の抜本的対策として小田川の高梁川への合流点を柳井原貯水池を利用して4.6q現況より下流に付け替えます。高梁川にとっても狭窄部を流れる流量を軽減されることができ治水安全度向上につながります。
また、本川合流点付近に可動堰を設置し、流水の正常な機能の維持、都市用水の供給に利用します。この事業は、昭和47年度に実施計画調査に着手し、平成9年度から建設事業として予算付けされ、環境影響評価法による環境アセスメントを実施しているところです。
おわりに
岡山の3つの川には、治水事業や利水事業あるいは舟運などに関わる歴史的な施設や遺構が残つており、また豊かな自然環境と接することもできます。平成9年に河川法が改正され、川の365日を意識した川づくりに取り組むようになりました。
地域の皆さんと意見交換しながら、安全でうるおいのある豊かな河川環境の創出に取り組み、地域の自然、環境、風土、歴史、文化など個性を活かした地域の川づくりに向けて、事業推進に努めてまいります。

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