〈建設グラフ1997年8月号〉

寄稿

8月10日は「道の日」

−北海道における道路整備とは…−

北海道開発局建設部道路計画課長 竹田俊明 氏

竹田 俊明 たけだ・としあき
昭和23年1月29日生まれ、北海道大院修
昭和50年釧建釧路道路工事課第1建設係長
昭和53年土試構造研究室副室長
昭和56年環境庁大気保全局特殊郊外課長補佐
昭和58年樽建道路課長
昭和59年札建道路調査課長
昭和61年局道路計画課長補佐
昭和63年局道路計画課道路企画官
平成 2年室建次長
平成 5年局情報管理室長
平成 6年建設省関東地方建設局道路部道路企画官
平成 8年7月現職

▼'96道路フェスティバル

道路は、昔から人が歩き、そこで情報やものを交換するといった生活の一部を担い、文化を生み出し、運ぶといった役割を果たしてきました。いつの時代であれ、私たちの行動は道路の利用から始まるといっても過言ではないほど、重要な基盤施設としての役割を担ってきました。また、道路は人や車のための空間はもとより、ガスや上下水道、地下鉄、情報通信施設を通す公共空間として、多様な機能を有しています。
このように、道路は国民の生活を支え、暮らしを維持するため欠くことのできないものですが、あまりに身近な存在であるために、その重要性が見過ごされがちとなっています。
一方、多様化する国民のニーズに応え、豊かでゆとりのある社会の実現のための基盤施設としての道路整備の推進・道路管理の充実は、これまでにも増して重要なものとなっています。
このためには、国民の理解と協力が不可欠であり、今後一層、道路の意義並びに重要性を強調し、快適な生活空間と付加価値の高い道路づくりを推進していく必要があります。
そこで、改めて道路の意義・重要性に対する国民の関心と道路愛護の精神を高めるために、建設省では、昭和61年度から8月10日を「道の日」と制定しました。これは、わが国で最初の道路整備についての長期計画である、第一次道路改良計画がスタートした大正9年8月10日にちなんだものであり、全国各地で様々な催しが開催されています。
また、この制定を受けて北海道でも、昭和62年度に北海道開発局、北海道、札幌市、日本道路公団北海道支社の4機関で道路フェスティバル実行委員会を組織し、各機関の協力のもと、毎年北海道全域で「道の日」(8月10日)及び「道路を守る月間」(8月1日〜8月31日)の広報活動を展開、今年も第11回「'97道路フェスティバル」を開催することとしています。

◇     ◇     ◇

さて、平成9年度は、現在進めている第11次道路整備五ヵ年計画の最終年であるとともに「新たな道路計画」を策定する大事な年度でありますが、他方、わが国の6つの改革のうちでも行政改革と財政構造改革への対応が焦眉の急となっています。
今年6月3日に閣議決定された財政構造改革の方針では、公共投資基本計画の3年間延伸、公共投資予算については、集中改革期間中において、各年度その水準の引き下げを図ること、98年度予算は対9年度比7%マイナスの額を上回らないこと、9年度末に計画期間が終了する道路整備対策については、財政構造改革五原則を踏まえ、公共投資基本計画の実質的な縮減に留意しつつ、適正な改訂計画を策定すること、また、道路特定財源については、危機的な財政状況、受益者負担制度の基本などを踏まえ、自動車重量税の国分の8割相当額に係る歳出面での運用について、公共投資予算全体が抑制される中、引き続き国民に適切な税負担をお願いしつつ、受益者負担の観点にたった道路関係社会資本への活用、集中改革期間における従来の取り扱いなどの見直しについて総合的な観点から検討することなどが打ち出されています。

◇     ◇     ◇

我が国の道路整備を着実に進めるための制度の二本住が、受益者負担・損傷者負担の原則に基づく揮発油税、自動車重量税等からなる道路特定財源制度と財政投融資を活用した有料道路制度ですが、その根幹をなす制度の見直しは、国民から強いニーズのある道路整備に多大の影響を及ぼすものです。
また、特に、高速道路の採算性の議論や投資効果論、受益と負担の議論の中では、都市部から北海道を含めた地方の道路整備に対する批判も強くでています。

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これらを踏まえ、北海道の交通をみてみますと、地域交通は道路網と鉄道網の両輪で支えられてきました。しかし、片輪である鉄道は国鉄再建法に基づく地方交通線の転換政策により、北海道では、昭和58年の白糠線を皮切りに24線についてバスヘの転換が進められ、一昨年も深川〜名寄問の深名線がバス転換となっています。
全国46線、約2,000kmの転換対象のうち、約半数に当たる24線、約1,300kmが北海道での路線であり、これは北海道全鉄路の約3割に及ぶものでした。このため、特に道南、道北圏の日本海側やオホーツク圏の海岸沿いの市町村では、通学や通院など日々の交通手段が道路交通のみに依存せざるを得ない状況となり、このように道路交通のみに依存する市町村は約半数にものぼっています。
また、全交通機関に占める自動車の分担率を見ると、全国の73%に比較して北海道では約9割が自動車交通に依存しており、超車社会となっています。まさに「道路交通が地域の生命線」、「道路の利活用がまちづくりの鍵」といっても過言ではありません。
しかし、北海道の道路整備については、高規格幹線道路である高速道路、一般国道の自動車専用道路ともに全国に立ち後れた状況にあり、また、一般国道においても、不通区間や隘路の解消、防災対策、都市の円滑な交通を確保する環状道路、バイパスの整備や渋滞対策など都市交通環境の改善などの整備が求められています。
また、北海道における重要な課題として、冬期間の走行速度の低下、通行止め、冬型の交通事故の発生などの冬の問題があり、一年を通じて安全確実な道路交通の確保が求められています。
さらに、主要プロジェクト支援や空港、港湾などの交通拠点と関連する道路整備、観光リゾート地域のアクセス道路や休日の交通混雑の解消を目指した道路整備など多様なニーズに応えて行く必要があります。
一方、北海道の道路整備を進めるに当たっては、財政構造改革の方針で示された公共投資予算の抑制策を踏まえ、事業の重点化・効率化を図るとともに、建設コストの縮減に向け諸施策を早急に実施することが求められています。
また、これらの背景を踏まえ、北海道の道路整備を着実に進めるとともに地域の発展基盤を支えるためにも北海道の道路整備の必要性を強く訴えるとともに、現行の道路特定財源を堅持する必要がありますので皆様のご理解とご協力をお願いいたします。
特に、平成9年度は既述のように「新たな道路計画」や「新しい北海道総合開発計画」の策定など、新たな時代への計画策定の年であり、また、北海道の地域づくりを担う道路整備のビジョンや具体的な道路整備計画を作成する予定ですので、合わせて皆様のご理解とご協力をお願いいたします。

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▼一般国道236号 上臼杵道路

さて、平成9年度道路事業については、第11次道路整備五ヵ年計画(平成5年度〜平成9年度)の最終年として、北海道地域版「ぬくもりと豊かさを育む北の道」をガイドラインとして、生活者を重視することを基本とし、特に、力強い地域をつくり、生活を基本から支える高規格幹線道路等の根幹的な交流基盤や、交通安全の確保、交通環境整備などの生活者に身近な施設に重点を置いて道路整備を進めます。
平成9年度に供用を予定している事業を紹介しますと、高規格幹線道路のうち、日高自動車道「苫東道路」、深川留萌自動車道「深川沼田道路(一部)」の供用を予定しているほか、一般国道40号「名寄バイパス」の一部供用を図ります。

▼深川留萌自動車道「深川沼田道路」

一般道路事業については地域間交流の円滑化、地域産業の振興、地域における定住基盤の充実などを図るため、不通区間の解消をはじめとした一般国道の整備を推進し、一般国道236号「上杵臼道路」の完成・供用を図るほか、交通混雑の緩和、物流の効率化のための放射・環状道路を整備し、230号「川沿交差点」の完成供用を図ります。
また、落石や自然災害に強い、安全で信頼性の高い道路環境を整備し、特に229号「豊浜トンネル」における岩盤崩落事故を踏まえ緊急に防災対策を推進するため、平成8年度防災点検に基づく要対策箇所について、防災事業を重点的に実施します。
冬季対策については、冬季における堆雪スペースの確保や各種防雪対策、線形改良など、冬季交通対策を推進します。また、活力ある北国の生活文化の創造を目指し、雪に強い生活環境づくりを進める「ふゆトピア」事業等を推進します。さらに、交通安全対策事業の推進を図ることにしています。

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最後になりますが、国民のあらゆる場面に密接に関わりを持つ道路は、特に、北海道において、社会・経済活動を支える最も根幹的な基盤施設ということができます。
一方、北海道の道路整備にあたっては、今年6月3日に閣議決定された財政構造改革の方針を踏まえ、より重点的、効率的に事業を進めることが求められています。
「道の日」が、深く生活に関わり、日常的に我々の活動を支えている道路の意義や役割を道路利用者の皆様があらためて考えるきっかけとなれば幸いです。


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